この2018年4月から改正や施行・実施される、法律や規則、制度等(特許や品種登録関連の実務上、影響しそうなもの)を、まとめてみました。 (備忘用のメモです)。
TPPの発効を前提とした、TPP関連の特許法等の改正法が、米国のTPPへの事実上の不参加表明(現時点で)のため、棚上げになっていますので、特許法関連では、この4月には大きな改正はありません。とはいえ、小さな(?)変更等はありますので下記で確認しておきたいと思います。
(先日、東京も開化宣言がありソメイヨシノが咲き始めました、2018.3.24撮影)
(1) 特許法関連
(i) 特許法施行規則等の一部改正
→ 特許料について減免申請する場合の手続が一部、簡素化される。
具体的には、第4年分から第10年分までの特許料を別に納付する場合は、その都度、減免の申請書を作成しなければならなかったところが、改正により、一度減免が認められた者については、以後減免の申請がなくとも第10年分までの特許料については自動的に減免を行うことができるようになる。
<特許法施行規則等の一部を改正する省令について> (2018.3.28追記)
https://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohou_300326.htm
<特許料の減免申請手続の改正(平成30年4月1日施行)に関するお知らせ>
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/genmen_kaisei.htm
<「特許法施行規則等の一部を改正する命令案」に対する意見募集について>
https://www.jpo.go.jp/iken/171113_houkaisei.htm
(出典:特許庁HP)
(ii) 中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした審査請求料・特許料の軽減措置(1/3に軽減)が平成30年(2018年)3月31日で終了。
平成30年4月1日以降に特許の審査請求をした場合は、上記軽減措置は受けられなくなる。
ただし、特許法、産業技術力強化法等の他の法律に基づく軽減措置の軽減の要件を満たす者であれば、「審査請求料」、「特許料(1~10年分)」が1/2となりうる。また、平成26年4月1日から平成30年3月31日までに特許の審査請求を行った案件については、特許料の納付が平成30年4月1日以降であっても、軽減の要件を満たす者の場合は「特許料(1~10年分)」を1/3とする軽減措置を利用することができる。
中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした審査請求料・特許料の軽減措置について
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen.htm
中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした特許料等の軽減措置及び国際出願促進交付金の平成30年4月1日以降の取り扱いについて
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen-fromh300401.htm
(iii) PCT国際出願関係手数料の一部改定 (2018年4月1日)
→ 欧州特許庁が国際調査を行う場合の調査手数料が改定。
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/pct_tesuukaitei.htm
(2) 種苗法関連
(a) 種苗法施行規則の一部改正 (公布日: 2018年03月23日)
→(改正のポイント)
(a-i) 植物について定める区分の追加等(規則別表第一関連)
出願品種の属する植物の種類の追加(規則別表第二関連)
(a-ii) 農業者の自家増殖に関し育成者の効力が及ぶ植物の種類の追加等(規則別表第三関連)
→ 植物を新たに定める(他)
(a-iii) 品種登録出願及び登録料納付に係る電子申請システムの導入に伴う改正
<種苗法施行規則の一部を改正する省令>
(省令案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000165980
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002580&Mode=2
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002580&Mode=0&fromPCMMSTDETAIL=true
(b) 種苗法第2条第7項の規定に基づく重要な形質を定める件の一部の改正 (公布日: 2018年03月23日)
→(改正のポイント)
「重要な形質」の追加(新設)、改正
<種苗法第2条第7項の規定に基づく重要な形質を定める件の一部を改正する告示>
(告示案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000165983
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002581&Mode=2
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002581&Mode=0&fromPCMMSTDETAIL=true
(c) 電子手続の受付開始 ~ 2018年3月26日からの予定
<品種登録電子出願システム(マニュアル、利用規約等)>
http://www.hinshu2.maff.go.jp/info/yousiki/denshi/idpw01.html
(3) その他
・主要農作物種子法(いわゆる「種子法」)の廃止
(注: 種苗法とは全く別の法律です)
主要農作物種子法を廃止する法律の施行(2018年4月1日)により、「主要農作物種子法」が廃止されます。
主要農作物種子法では、稲・麦・大豆の優良な種子の安定的な生産や普及を、国や都道府県が責任をもつとされており、国や都道府県が育成した品種でなければ、奨励品種とはなることは事実上困難で、奨励品種になれないと農家への普及等は実質期待できないものでした。
このため、稲等の民間企業による新品種の開発はこれまで、新品種の育成はされても結局、普及は期待できず、ビジネスとしてほぼ成立しえなかったため、結局、民間企業による稲の品種開発はあまり進みませんでした。
(10年ほど前にイネの全ゲノム解読の後、ゲノム育種による国内民間企業、ベンチャーによる稲の新品種の育種が盛り上がった時期がありますが、結局、民間開発の品種は「奨励品種」になれないことが壁となり、その後は、民間企業のプロジェクトやベンチャーについては、死屍累々となりました)。
主要農作物種子法の廃止により、民間企業による稲・麦・大豆での、新品種の開発等が期待されているようです。因みにこの廃止には、海外の種子メジャーによる国内種子の独占などを心配する向きもあるようです。
国内民間企業等の品種開発促進を主眼に「廃止」を考えるのであれば、正直、その判断は、遅きに失した(10年遅れた)のでは、と思います。「廃止」となったからには、民間を含む国内での優れた品種の開発がされていくことを期待したいです。
<主要農作物種子法を廃止する法律案の概要>
http://www.maff.go.jp/j/law/bill/193/attach/pdf/index-13.pdf
以上