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2014年7月17日 (木)

CBD「名古屋議定書」発効へ


1. CBD「名古屋議定書」の発効が決定


いわゆる「名古屋議定書」、すなわち、生物多様性条約(CBD, Convention on Biological Diversity)における遺伝資源へのアクセスとその利益配分に関する名古屋議定書(NAGOYA Protocol on Access and Benefit-sharing (ABS))の批准国が、7月14日に所定の50ヵ国を超えたため、「名古屋議定書」が発効されることになりました。*1
   [(*1)名古屋議定書は50カ国が批准した日から90日後に発効するとされていました]

発効は、90日後の今年の10月12日となります。生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)(韓国で開催)の開催期間10月6~17日になんとか間に合わせた形です。

(名古屋議定書発効に関する情報ソース)
・生物多様性条約事務局(CBD)7/14のプレスリリース(英文):
http://www.cbd.int/doc/press/2014/pr-2014-07-14-Nagoya-Protocol-en.pdf

 ・日経新聞7/14の報道:
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG15012_V10C14A7CR0000/?n_cid=TPRN0005

(批准した50カ国+EU)
アルバニア、ベラルーシ、ベナン、ブータン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、コモロ、コートジボワール、デンマーク、エジプト、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、グアテマラ、ギニアビサウ、ガイアナ、ホンジュラス、ハンガリー、インド、インドネシア、 ヨルダン、ケニア、ラオス、マダガスカル、モーリシャス、メキシコ、ミクロネシア、モンゴル、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ニジェール、ノルウェー、パナマ、ペルー、ルワンダ、サモア、セイシェル、南アフリカ、スペイン、スーダン、スイス、シリア、タジキスタン、ウガンダ、ウルグアイ、バヌアツ、ベトナム、欧州連合(EU)*2
  [(*2)上記のCBDプレスリリース中の記載より抜粋和訳]


ここでおわかりのように、(名古屋議定書の提案国でありながら)日本はまだ批准していません。現在環境省などで、批准のための国内措置の整備について準備中であり、批准は、年内はおそらく難しく、来年以降になるのではないかと思われます。なお、国内での検討状況は下記の報告書が参考になります。

・名古屋議定書に係る国内措置のあり方検討会報告書(2014/3)
http://www.env.go.jp/nature/biodic/abs/conf/conf01-rep20140320.html

遺伝資源の利用国になりそうな先進国では、EUの対応が先行しています。前述の通り日本は未批准ですし、米国に至っては、名古屋議定書の前提となる「生物多様性条約」自体について未だに、批准すらしていません。


2. 名古屋議定書とは(これまでの経緯)


生物多様性条約(CBD)は、(1)生物の多様性の保全、(2)その構成要素の持続可能な利用、及び(3)遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的とするものです。

Cbd_nagoya_protocol_3

特にCBDの第15条には、遺伝資源の取得機会について規定されており、具体的には、

  ・各国は、自国の天然資源に対して主権的な権利を有すること

  ・遺伝資源の取得の機会については、その資源が存する国の政府に権限があり、その国の国内法令に従うこと。

  ・遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、利用者は、遺伝資源の提供国による、事前の情報に基づく同意(PIC、Prior Informed Consent)を要すること。

  ・遺伝資源の研究、開発、商業的利用等での利用から生ずる利益は、遺伝資源の提供国と、公平かつ衡平に配分する。またその配分は、相互に合意する条件(MAT、Mutually Agreed Terms)(契約)で行うこと。


などが明記されています。
これは、遺伝資源の提供国(遺伝資源を持つ原産国及び供給源から入手した遺伝資源を提供する国)と、遺伝資源の利用国の利害を調整するためのものです。

ただし、ここで問題となるのが、遺伝資源の提供国は、多くの場合、途上国であり、それを利用するような技術も資本もないことが多い一方で、遺伝資源の利用国は、多くの場合、先進国であり、もっと以前には、先進国が、途上国の遺伝資源を一方的に持ち出して、利用し、特許まで取得してしまうといった状況が生じていました*3

  [*3) 例えば、インフルエンザ治療薬「タミフル」は、中国原産の植物の実、八角(トウシキミの実)の抽出物質で作られますが、(遺伝資源提供国である)中国はタミフル販売による利益を享受できていないという立場である]

要するに、このような遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)の問題は、遺伝資源の提供国(多くの場合、途上国)と、利用国(多くの場合、先進国)との対立の図式であり、南北問題的な対立の要素が色濃くあるものです。

遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)への対応については、遺伝資源提供国の国内法を遵守することが原則ですが、国内法等がない場合については、2002年のCOP6で採択された「ボン・ガイドライン」に従うことが推奨されていました。ボン・ガイドラインでは、CBD15条(前述)の手続きをより明確にした指針がしめされておりましたが、これはあくまでも任意のガイドラインであるため、法的な拘束力はなく、遺伝資源へのアクセス手続きも明確な形にすることは求められていませんでした。

この状況は、遺伝資源の提供国(多くの場合、途上国)と、利用国(多くの場合、先進国)の双方にとっても、不満が残る状況でした。

そこで、2010年の第10回の締約国会議(COP10)において、ABSの問題が議論されましたが、双方の隔たりは大きく、合意は難しい状況になりましたが、最終段階で議長国である日本の提案が採用されることになり、これが「名古屋議定書」として採択されました。

つまり、「名古屋議定書」は、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)について、各国に国内措置を義務づけし、手続きについても明確化を図るためのものです。ポイントは下記の通りです。

  ・遺伝資源提供国には、アクセスに関する透明性のある手続きの明確化

  ・利用国については、遵守措置の設置の義務づけ

  ・情報交換の仕組み(クリアリングハウス)の設置



日本は、議定書の提案国であったにもかかわらず、結局、国内措置などの体制の整備が遅れ、批准するための準備が整わず、名古屋議定書の発効のための最初の50か国には入れませんでした。


3. 知財実務への影響

・特許出願における「遺伝資源の出所開示」
生物多様性条約の第15条の関係では「ボン・ガイドライン」において、特許出願の際に遺伝資源の出所開示が奨励されていたことから、特許出願時の明細書に「遺伝資源の出所開示」の義務付ける国が、すでに多く存在していました。主なところでは、インド(インド特許法10条)や中国(専利法26条)などでは、そのような出所開示を出願明細書においてすることが実際に求められています。

・ABSについての国内措置(国内法)との関係
また、ABSについて独自の国内法を設けていて、違反の場合に、行政処分や、出願の拒絶や特許の無効などを規定している国もあります。すなわち、遺伝資源の適法に入手されていることの証明や、その国で事前承認を受けていない場合には、その国での特許出願自体ができなくなる場合もあります(例えば、インドの生物多様性法第6条)。*4

したがって、出願に係る発明や明細書中で使用しているもの(実施例や比較例においても)について、遺伝資源に関するものがあるときは、それがどのような起源(出所)のものであり、また適法に入手されたものであるかについて、確認しておく必要があります。

  [*4) 例えば、ペルーは以前、自国の遺伝資源や伝統的知識を無断で利用していると考える特許出願や特許(日本を含む主要国の特許)について、名指しでリスト(出願番号、出願人を含むもの)を公表し、国際社会に向かって非難をしたことがありました。これに対して、多くの企業・団体が(真偽の立証をすることなく、風評を気にして)出願や特許を取り下げるということがありました。このときは、日本の企業(化粧品会社)も日本の特許出願を取り下げたものもありました]。


・品種登録に関して
品種登録に関しても、遺伝資源に基づく知的財産権の取得という観点からは、特許と同様の問題が生じ得ます。例えば、品種登録出願の出願書類中に、出願品種に関して遺伝資源の出所開示の記載を求める法制をとっている国も既にあるようです(例えば、タイ)。また、自分で出願するに際しても、自身の育成した品種について、その起源(親品種やさらにそれ以前)を含めて、遺伝資源の出所や、それが適法に入手したものであるかについて、確認しておく必要があります。

・今後の影響は
名古屋議定書が発効されること自体に関しては、それが、この「遺伝資源の出所開示」の問題などにすぐに直接的な影響を及ぼすことはなさそうです。

ただし、名古屋議定書締約国においては、ABSに関する国内措置が義務づけられることになりますので、特許出願時の明細書に「遺伝資源の出所開示」の義務付けようとする国や、特許出願の拒絶や特許の無効も視野にいれたABSの独自の国内法を設ける国が増えてくる可能性が多分にあります。

既に批准した国ももちろん、これから批准する国について、知財の観点でどのような制度があるか(新たに制定されているか)について、今後、充分に注意しておく必要がありそうです。



*************************************

参考資料:

生物多様性条約(外務省サイト):

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html



名古屋議定書(和文(仮訳)、英文)(外務省サイト):
[名古屋議定書: 遺伝資源の取得の機会の提供及び提供された遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分するための国際ルールを定める議定書]

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_72.html


カルタヘナ議定書(和文、説明書など)(外務省サイト):

[カルタヘナ議定書: 遺伝子組み換え生物による生物多様性の保全及び持続可能な利用への悪影響を防止するための輸出入の手続等について定める議定書]

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty156_6.html


「世界の特許出願時の遺伝資源の出所開示に関する法律についての運用の調査報告書」、パテント、2011年、Vol.64, No.12, pp30-

http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201109/jpaapatent201109_030-038.pdf


                                                     以上 

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