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2017年7月 1日 (土)

EPO/「本質的に生物学的な方法により生産された植物又は動物」の審査・異議手続 再開へ(EPC施行規則改正と7月1日より直ちに施行)

だいぶ久しぶりの更新になってしまいました(前回の更新から春を飛び越して夏になってしまいました)。申し訳ありません。
 

20170630pht
(2017年6月30日撮影、workspaceにて)

欧州特許庁(EPO)は、2017年6月29日付のニュースリリースにて、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法(essentially biological processes)によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続が、昨年(2016年)11月以降停止されていましたが、この停止が解除され、7月1日以降、順次、審査および異議申立手続きが再開されることになりました。

また、同6月30日に、この決定に伴う内容を反映したものとして、EPC施行規則の第27条および第28条の改正を公表し、翌日7月1日より直ちに施行し、再開した審査及び異議申立手続に反映させる旨も公表されました。

29 June 2017
EPO clarifies practice in the area of plant and animal patents
https://www.epo.org/news-issues/news/2017/20170629.html


30 June 2017
Decision of the Administrative Council of 29 June 2017 amending Rules 27 and 28 of the Implementing Regulations to the European Patent Convention (CA/D 6/17)
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/ac-decisions/archive/20170630.html

「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物(「本質的に生物学的な方法」というプロセスで特定された物(プロダクト・バイ・プロセスで特定された物)(物/products))自体の特許性について、その扱いが拡大審判部の判断と、欧州委員会のバイオ指令の解釈とで齟齬がありましたが、今回、6月30日付(7月1日より施行)でEPC規則の第27条と第28条とが改正され、これらについても、特許性が認められないことが明確になりました。

つまり欧州特許庁拡大審判部による「ブロッコリ事件II」(G2/13)および「トマト事件II」(G2/12)の審決による立場が否定され、「本質的に生物学的な方法」により得られた植物又は動物についても、特許が付与されないことが明確になりました。


(2017年6月30日に公表されたEPC施行規則改正の概要)


1.EPC施行規則27の(b)項を下記のように改正する。

「規則27
生物工学的発明は,それが次の事項に関するものであるときも,特許を受けることができる。
(b) 第28条2項によらない、動物又は植物。ただし,その発明の技術的実行可能性が特定の植物又は動物の品種に限定されないことを条件とする。


(英文)
(b) without prejudice to Rule 28, paragraph 2, plants or animals if the technical feasibility of the invention is not confined to a particular plant or animal variety;



2.EPC施行規則28について、従前の(a)~(d)項は、第1項の(a)~(d)とし、以下の第2項を新設する。

「規則28
(1) <従前の規則28(a)~(d)を、第1項とし、第2項を新設>>
(2) EPC第53条(b)のもと、欧州特許は、本質的に生物学的手段によりもっぱら得られた植物又は動物に関しては付与されない。


(英文)
(2) Under Article 53(b), European patents shall not be granted in respect of plants or animals exclusively obtained by means of an essentially biological process.



3.「この決定は2017年7月1日より有効となる。この決定の上記1.2.により改正された規則27および28は、この7月1日以降に提出された欧州特許出願、並びに、その時点で継続している欧州特許出願および欧州特許に適用される。」


(ご参考)
なお、上記分野の案件について審査等の手続をEPOが停止していた理由・背景などはこちらの本ブログの過去のエントリー(2017年1月13日)をご参照ください。

「EPO/「本質的に生物学的な方法によって生産された植物」の審査・異議手続の停止決定 ~拡大審判部「ブロッコリ事件II」 「トマト事件II」 その後」
http://blog.patent-pvp.com/pvp/2017/01/index.html#entry-86682090


以上
 

2017年1月13日 (金)

EPO/「本質的に生物学的な方法によって生産された植物」の審査・異議手続の停止決定 ~拡大審判部「ブロッコリ事件II」 「トマト事件II」 その後

2017年になりました。今年もよろしくお願いいたします。

20160112plce


欧州特許庁(EPO)は、2016年12月12日付のニュースリリース(下記)で、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法(essentially biological processes)によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続を停止する決定をしたと、公表しました。
 これにより当面の間、「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続が停止されることになります。

(参考/EPOのwebページ)
EPO stays proceedings in certain biotechnology cases
http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20161212.html


[コメント]

 今回のEPOの決定は、2016年11月に欧州委員会より出されたEUバイオ指令の解釈に関する通知が出された結果、2015年3月に出されていた拡大審判部による審決「ブロッコリ事件II」(G2/13)「トマト事件II」(G2/12)による判断とで、一見すると相反するような状況が生じたため、整合や交通整理が必要となり、EPOにおいて今後の審査や異議審理において明確な指針を示す必要が生じたためと思われます。「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関するEPOとしての取扱いをきめるまで、当面の間、このような案件の審査および異議申立手続が停止されるのだと思われます。

 これまでの状況・経緯を整理しておきたいと思います。
以下の目次:
(1) 前提~EPO第53条(b)およびEU理事会指令98/44/EC(バイオ指令)
(2) 「ブロッコリ事件II」(G2/13)と「トマト事件II」(G2/12) (2015年3月25日 拡大審判部)
(3) 「ブロッコリ事件III」(T0083/05)と「トマト事件III」(T1242/06)  (2015年9月10日/12月8日 技術審判部(審決の公表は2016年9月))
(4) EUバイオ指令の解釈に関する通知 (2016年11月3日/欧州委員会)
(5) EPOによる今回の決定(2016年12月12日/EPOニュースリリース)



<これまでの経緯など>


(1) 前提~EPO第53条(b)およびEU理事会指令98/44/EC(バイオ指令)

 EPC第53条(b)では、「植物品種」と、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に関する発明については、特許しない規定されています。
 ここでいう「植物の生産の本質的に生物学的な方法」とは、交配や選別といった従来的な手法を意味しているとされていました。

 また、バイオテクノロジー発明の法的保護に関する1998年7月6日の欧州議会及び理事会指令98/44/EC(以下「バイオ指令」)では、植物又は動物の生産方法として、交配や選別といった「本質的に生物学的な方法」それ自体は特許性を認めない旨規定されています。

 しかし、「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物(「本質的に生物学的な方法」というプロセスで特定された物(プロダクト・バイ・プロセスで特定された物)(物/products))自体の特許性については明示規定がなく、法的に不安定であることが指摘されていました。

(参考)
EUバイオ指令:
DIRECTIVE 98/44/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 6 July 1998 on the legal protection of biotechnological inventions
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:31998L0044

(和訳) 欧州共同体 生物工学発明に関する指令
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/ec/dpcb/mokuji.htm

Broccolitomato_2


(2) 「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」 (2015年3月25日 拡大審判部)


 欧州特許庁拡大審判部は、いわゆる「ブロッコリ事件II」(G2/13)および「トマト事件II」(G2/12)の審決において、プロダクト・バイ・プロセスクレームにより特定された植物や、果実、植物材料、それ自体、すなわち「本質的に生物学的な方法」により生産された「物」自体は、EPC第53条(b)における「本質的に生物学的な方法」には該当しない、として、特許性を認めることとなる判断を示していました。

 このため、「本質的に生物学的な方法」自体には特許性は認められないものの、「本質的に生物学的な方法」により生産された「物」として、プロダクト・バイ・プロセスクレームに書き換えれば、特許性が認められるとも解釈できることから、クレーム記載の仕方によっては、事実上、「品種」について保護が受けられるのでは、との考えが成り立ち、植物品種保護との境界がむしろ不明確となるという状況が生じていました。

(参考/EPOのwebページ)
G 0002/13 of 25.3.2015(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/g130002ex1.html#q%22G%200002%2F13%22

G 0002/12 of 25.3.2015(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/g120002ex1.html#q%22G%200002%2F12%22


(参考/本ブログの過去記事)

2015年4月 3日 (金)
EPO拡大審判部「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」の審決 -植物や植物部分の欧州での特許の可能性広がる(審決G2/12、G2/13)

http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/04/index.html#entry-82157026




(3) 「ブロッコリ事件III」(T0083/05)と「トマト事件III」(T1242/06)  (2015年9月10日/12月8日 技術審判部(審決の公表は2016年9月))


 上記の「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」での拡大審判部より示された判断に基づき、各事件について技術審判部がそれぞれについて容認する判断を示しました。

(参考/EPOのwebページ)
T 0083/05 (Broccoli III/PLANT BIOSCIENCE) of 10.9.2015(審決)

http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/t050083eu1.html


T 1242/06 (Tomatoes III/STATE OF ISRAEL) of 8.12.2015
(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/t061242eu3.html#q




(4) EUバイオ指令の解釈に関する通知 (2016年11月3日/欧州委員会)


 このような状況から、欧州議会は、2015年12月に、「本質的に生物学的な方法」によって得られた「物」に関する特許適格性の判断について、バイオ指令の解釈を明確にするよう欧州委員会に求める決議を採択し、これをうけて、欧州委員会によるEUバイオ指令の解釈に関する通知が2016年11月3日に公表されました。

 通知によれば、

- バイオ指令が採択された際の立法者の意図に鑑み、「本質的に生物学的な方法」によって生産された「物」それ自体も特許対象外である


とする解釈が示されました。なお、この通知自体には法的拘束力はない、とされています。

(参考/EUのwebページ)
(3 November 2016)
Notice of the European Commission
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:JOC_2016_411_R_0003&from=EN


(参考/JETROのwebページ)

2016年11月10日 欧州委員会、欧州連合(EU)バイオ指令の解釈に関する通知を公表
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/europe/2016/20161110.pdf


→ [コメント]

 この結果、EUバイオ指令の解釈では、『「本質的に生物学的な方法」によって生産された「物」それ自体』は、特許対象外とされる一方、ブロッコリIIやトマトIIの拡大審判部の判断では、その『「物」それ自体』は、「本質的に生物学的な方法」には該当しないとして、特許性を認めると解される判断をしめしていたことから、一見すると相反するような立場が示されている状況となりました。ただし、EPOよりもEUの判断の方が上位のものであるため、EPOの審査においては、EPO拡大審判部の判断とEUバイオ指令の解釈とで、整合性をとった落とし所を見出してそれを新たな判断基準とするのか、といったように、EU指令の解釈を踏襲しつつ、何らかの交通整理行っていくのだと思います。
 このため、EPOとしての方針が固まるまで、審査を一時中断するとする下記の決定が今回なされたといえそうです。


 そう遠くない時期に、EPOとしての判断基準が示され、審査等が再開されるはずです。




(5) EPOによる今回の決定(2016年12月12日/EPOニュースリリース)

EPOのニュースリリースによれば、

・EPOはこれまで、EUバイオ指令を、欧州特許条約(EPC)に適用する運用を行っている、

・「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物に関する規定は、EPCにはみられない、

・欧州委員会が公表した通知
(*管理人注:上記(4)の通知)の解釈に加盟国は従う必要があることから、EPOとしては欧州委員会の判断を導入することになるだろう

とのことです。

 このため、今回、公表された決定の通り、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続を停止することとされています。

(参考/EPOのwebページ)
(12 Dec. 2016)
EPO stays proceedings in certain biotechnology cases
http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20161212.html

(24 November 2016)
Notice from the European Patent Office dated 24 November 2016 concerning the staying of proceedings due to the Commission Notice on certain articles of Directive 98/44/EC of the European Parliament and of the Council of 6 July 1998 on the legal protection of biotechnological inventions
http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/information-epo/archive/20161212.html

以上

2016年6月27日 (月)

英国EU離脱、欧州特許&品種登録への影響

6月23日(現地時間)に、英国でEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が実施され、その結果、EU離脱支持が過半数を超え、英国のEU離脱が決定されました。

英国のEU離脱の国民投票の決定が、特許や品種登録に関してどのような影響があるか、現時点で確認したいと思います。



(1) 欧州特許、欧州単一特許、欧州統一特許裁判所への影響

欧州特許庁(EPO)は長官名で6月24日付けで下記のようなステートメントを公表しています。

http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20160624.html


UK Referendum – Statement of President Battistelli

24 June 2016

The Office underlines that the outcome of the referendum has no consequence on the membership of the UK to the European Patent Organisation, nor on the effect of the European Patents in the UK. Concerning the Unitary Patent and the Unified Patent Court, the Office expects that the UK and the participating Member States will find a solution as soon as possible which will allow a full implementation of these so-long awaited achievements
.

(出典:上記URL)


(管理人による仮和訳)


「英国の国民投票」 ~バティステリ欧州特許庁長官による声明
2016年6月24日
「欧州特許庁は、欧州特許機構における英国の加盟国の地位、および英国における欧州特許の効力に関して、今回の国民投票の結果は影響を及ぼさないことを強調する。欧州単一特許および統一特許裁判所に関しては、英国および参加国が、待望の成果を十分に実現できるようできるだけ速やかに解決策を見出すことを期待する。」



[コメント]

欧州特許の法的根拠は欧州特許条約(EPC)であり、EPC条約に各国が加盟しているか否かが問題であって、EUに加盟しているか否かとは関わりありません。このため、EPOの長官の声明もそれに沿って、EPCにおける加盟国の地位や、英国における欧州特許の効力については影響が無いことを明確に述べていると理解できます。

一方で、予定されている欧州単一特許や、統一特許裁判所の法的根拠は、EU規則です。EU規則はEUの加盟国を拘束するものであり、EUから離脱すればその制約は当然うけなくなります。このため、英国は、理屈の上からいえば、EUを離脱すれば、EU規則の枠外となり、欧州単一特許や、統一特許裁判所も関係無くなる可能性は十分あると言えます。ただし、現状、EUが今回の英国のEU離脱をどのように扱うかがまだ未確定であることから、EPOの長官の声明も、「解決策が見出されることを期待する」ということに止めていると思われます。

 もちろん、EUと英国がどのように今後、対応していくかの問題ですので、欧州単一特許や、統一特許裁判所に英国も含めて運用する可能性は否定できませんが、いずれにしても、欧州単一特許と統一特許裁判所に関する英国の立場については、今後の対応に注目する必要があるようです。



(2) 欧州共同体植物品種権(CPVR)への影響


欧州共同体品種庁(Community Plant Variety Office (CPVO))のWebサイトを見る限り、今日までの段階で何ら、公式は発表はありません。

http://www.cpvo.europa.eu/main/en/home



[コメント]

共同体植物品種権の法的根拠は、EU規則です。このため、英国のEU離脱後は、CPVO経由しての(英国でも有効な)EU品種権の取得ができなくなる可能性が十分にあると思われます(この場合、英国については、英国に出願して英国での育成者権を個別に取得する必要がでてくるかもしれません)。ただしこちらも、EUと英国がこの問題にどのように今後、対応していくかの問題ですので、今後の対応に注目する必要があるようです。


いずれにしても、英国のEU離脱問題は、知財の世界にも少なからず影響を及ぼしそうです。

以上

2016年6月 3日 (金)

【品種登録】 中国の「植物新品種証書」(品種登録の登録証)を受領

中国で出願していた、品種登録出願について、この度無事、登録が認められ、登録証(「植物新品種権証書」)が送られてきました。

ご覧のとおり、証書自体を、結構立派な専用のファイルに入ったものです。
(出願人、権利者や具体的な品種の情報はマスキングしています)


2016_06_cnpvpcertfct

中国では、日本と異なり、植物の種類によって、出願審査を取り扱う当局が2種類あります。

木本性植物の場合は、「中国国家林業局 植物新品種保護弁公室」へ出願し審査をしてもらいます。
それ以外の植物(例えば、花卉、野菜、作物他)は、「中国農業部 植物新品種保護弁公室」に出願し、審査してもらうことになります。

今回は、「中国農業部 植物新品種保護弁公室」に出願したものです。

(因みに日本では、「農林水産省 食料産業局 知的財産課」に一本化しているのでこのような分かり難さはありません)。


この案件、日本での出願に加えて、中国の他、別の2ヵ国でも出願しており、この件で懸案だった海外出願について、いずれも無事、登録することができました。他の国のときもふくめ、出願後の手続でいろいろ紆余曲折があって大変だったこともあり、結構思い入れがあります。そのため、登録が認められ、とても嬉しいです。


※ ご存じのとおり、品種登録出願は、日本国内での種苗法に基づく出願はもちろんですが、海外でも、各国の品種登録制度に基づき出願し、権利化を図ることが可能です。このとき、特許出願の場合のパリ条約のように優先権(UPOV条約による優先権)を主張することで、基礎出願の出願日を確保しつつ、別の国で出願・権利化を図ることができます。

以上

2015年4月 3日 (金)

EPO拡大審判部「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」の審決 -植物や植物部分の欧州での特許の可能性広がる(審決G2/12、G2/13)

欧州特許庁(EPO)の拡大審判部が、いわゆる「ブロッコリ事件II」(G2/12)と、「トマト事件II」(G2/13)の審決を出し(先週3月25日)、この中で、プロダクト・バイ・プロセスクレームにより特定された植物や、果実、植物材料については、EPC第53条(b)における「植物の生産の本質的に生物学的な方法」には該当しない、として、特許性を認めることとなる判断を示しました。

 (参考) G2/12及びG2/13の審決(EPOのサイト):
  
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/eba/number.html
  (上記URLにアクセス後、該当の審決番号をクリックすることで参照可能)

-----(4/10追記)-----
    EPO, Website updates, 7. April. 2015
    Decisions G 2/12 and G 2/13 of the Enlarged Board of Appeal
   
http://www.epo.org/service-support/updates/2015/20150407.html
--------------------

これにより、交配や選別といった従来的な手法によって得られた植物(植物品種以外)や、果実、植物の部分といったものについては、プロダクト・バイ・プロセス形式でクレームを記載するっことによって、欧州特許を取得できることが確認されました。

従来は、交配や選別といった従来的な手法によって得られた植物(植物品種以外)や、果実、植物の部分といったものについては、EPC第53条(b)には明文的な記載はなく、はっきりしていませんでしたが、植物品種や、交配や選別といった方法自体が、不特許とされていたことから、交配や選別といった手法によって得られた植物等についても、どちらかというと否定的に考えられていたと思います。

今回の審決で、上記のように確認できたことは、植物や植物部分についての物の発明について、欧州で特許される可能性が広がったと言えそうです。実務的にも影響がありそうですし、EPOの審査ガイドラインについても、今後、今回の審決を受けて、部分的な改訂がされるかもしれません。

Broccolitomato_2
<背景など>
欧州特許条約(EPC)では、植物に関連する発明について、特許できる主題について「特許性の例外」(つまり日本でいうところの「不特許事由」)として、下記のように規定しています。

・EPC第53条 特許性の例外
 欧州特許は,次のものについては,付与されない。
 (a) 略
 (b) 植物及び動物の品種又は植物又は動物の生産の本質的に生物学的な方法。ただし,この規定は,微生物学的方法又は微生物学的方法による生産物については,適用しない。
 (c) 略

 つまり、EPC第53条(b)では、「植物品種」と、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に関する発明については、特許しない旨、規定しています。
 ここでいう「植物の生産の本質的に生物学的な方法」とは、交配や選別といった従来的な手法を意味しているとされていました。

今回の審決には、同じ特許についてそれに先立つ審決として、いわゆる「ブロッコリ事件I」(G2/07)と「トマト事件I」(G1/08)があり(2010年12月拡大審判部)、ここでは、交配と選別による植物の生産方法に、植物の全体の遺伝子の交配や、それに続く植物の選別の段階の実施を可能にしたり補助したりするのに役立つ技術的な段階をさらに加えた場合には、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」には当たらないのでは無いか、として争われていました。

この「ブロッコリ事件I」(G2/07)と「トマト事件I」(G1/08)の結論としては、そのような付加的な肯定や段階を加えたとしても、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に当たるとして、特許の対象から除外されるとされていました。

これに対して特許権者は、クレームを、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」により得られた物(植物、果実など)として、プロダクト・バイ・プロセス形式のクレームとして、さらに争っていました。

今回の審決は、その判断に当たって、技術審判部からの質問付託に対する回答として、拡大審判部が判断したものです。

審決自体は、2つあり、いずれも80頁近くあって長いのですが、結論部分のみ抜粋すると下記の通りです。(まだ詳細な検討はしていませんので、ざっと読んだ範囲で書いています)。


・審決の結論部:

1. The exclusion of essentially biological processes for the production of plants in Article 53(b) EPC does not have a negative effect on the allowability of a product claim directed to plants or plant material such as plant parts.

2. (a) The fact that the process features of a product-by-process claim directed to plants or plant material other than a plant variety define an essential biological process for the production of plants does not render the claim unallowable.

(b) The fact that the only method available at the filing date for generating the claimed subject-matter is an essentially biological process for the production of plants disclosed in the patent application does not render a claim directed to plants or plant material other than a plant variety unallowable.

3. In the circumstances, it is of no relevance that the protection conferred by the product claim encompasses the generation of the claimed product by means of an essentially biological process for the production of plants excluded as such under Article 53(b) EPC.

(管理人による仮訳)

1. EPC第53条(b)において、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を除外していることは、植物又は植物の部分のような植物材料に向けられた、物のクレームの特許性に対して、否定的な影響を及ぼさない。

2.(a) 植物品種以外の植物又は植物材料に向けられた、プロダクト・バイ・プロセスクレームの方法の特徴が、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を定義するという事実によっては、そのクレームは不許可にはならない。

 (b) クレームされた主題を作り出すために出願日当時に入手可能だった唯一の方法が、特許出願中に開示された「植物の生産の本質的に生物学的な方法」であるという事実によっては、植物品種以外の植物又は植物材料に向けられたクレームは不許可にはならない。

3. 以上のような(上記1と2の結論による)状況において、物のクレームによって与えられる保護が、EPC第53条(b)のもとでそれ自体除外される「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を用いてクレームされた物の生産を包含することは、関連性がない。

→なんだか分かり難い内容ですが、要するに、以下の通りのことを言っているようです(結局分かり難いかもしれませんが・・・)。

 1) EPC第53条(b)において、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」が不特許事由(特許性の例外)となっているからといって、このこと自体は、植物や植物材料のような物のクレームの特許性を否定するものではない。

 2a) 植物(植物品種以外)や植物材料のような物のクレームが、プロダクト・バイ・プロセスクレームの様式で記載されている場合に、その方法(プロセス)部分の内容が、不特許事由に当たる「植物の生産の本質的に生物学的な方法」であったとしても、それを理由に、物のクレームは不許可にはならない。

 2a) クレームされた主題である植物等を作り出すために、出願日当時に入手可能な方法としては、不特許事由である「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に当たる方法以外の(特許可能であるような)方法は他には存在せず、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に当たる方法のみであったとしても、その方法によって得られた、植物や植物材料のクレームは、それを理由には、不許可にはならない。

 3) 上記のようなプロダクト・バイ・プロセスによる物のクレームの保護と、そのような物の「生産」行為とは、物が、不特許事由に当たる「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を含むプロダクト・バイ・プロセス様式で書かれていたとしても、関連性は無い。


 (対象の特許について)
●「ブロッコリ事件II」(G2/12)
 ・欧州特許: EP 1069819B
 ・対応日本特許 特許第4448615号
   出願日:1999.4.8 (優先日:1998.4.9)
   登録日:2010.1.29

  【発明の名称】ブラシカ種において抗発癌性グルコシノラートを選択的に増加させる方法
  【特許請求の範囲】
   【請求項1】
  (a)ブラシカヴィローサおよびブラシカドレパネンシスからなる群から選択される野生型ブラシカ属とブラシカ・オレラセア育種系統とを交雑するステップと、
  (b)4-メチルスルフィニルブチルグルコシノラートもしくは3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノラートまたはそれらの両方の量が、ブラシカ・オレラセア育種系統において最初に見いだされる量よりも多い雑種を選択するステップと
を含むことを特徴とする、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノラートもしくは3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノラートまたはそれらの両方の量が増加したブラシカ・オレラセアを生産する方法。
・・・
  【請求項7】  請求項1~4のいずれかに記載の方法によって生産される食用ブラシカ植物。
  【請求項8】  請求項1~4のいずれかに記載の方法によって生産されるブロッコリーの食用部分。
  【請求項9】  請求項1~4のいずれかに記載の方法によって生産されるブロッコリー植物の種子。
・・・
【請求項14】まであります。
 (*以上は日本の対応特許ですので、欧州の審決でどのような表現のクレームが争われたかは、これからは分かりません)。


●「トマト事件II」(G2/13)
 ・欧州特許: EP 1211926B
 ・対応日本特許出願(拒絶査定確定) 特表2003-507044号公報
   出願日:2000.7.4 (優先日:1999.8.19)

  【発明の名称】水分の減少したトマトを育てるための方法及びその方法の生産物
  【特許請求の範囲】
<2011年6月30日の補正書(おそらく最後に提出)のクレーム>
  【請求項1】  少なくとも一つのリコペルシコン・エスカレンタム植物をリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種と交配させハイブリッド種を産生する段階と、
  ハイブリッド種の第一世代を回収する段階と、
  そのハイブリッド種の第一世代から植物を生長させる段階と、
  最新ハイブリッド世代の植物を授粉させる段階と、
  その最新ハイブリッド世代により産生された種を回収する段階と、
  最新ハイブリッド世代の種から植物を生長させる段階と、
  通常の成熟時期を過ぎても、植物をつるに残したままにする段階と、
  熟した果実の延長された保存期間と果実表皮のしわにより示される、果実中水分の減少したハイブリッド植物を選別する段階と
からなり、更に
 その後代が果実中水分量の減少を示すハイブリッド種由来の植物を、リコペルシコン植物と交配させる段階と、
 その交配した植物を生長させる段階と、
 非交配リコペルシコンからの果実と比較して乾燥重量%が増加したトマト果実を有する植物を選択する段階とからなる
果実中水分の減少したトマトを産生するトマト植物を育てる方法。
 ・・・・
  【請求項13】  野生のリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種植物からの遺伝子移入を伴うリコペルシコン・エスクレンツムの遺伝子を有し、トマト植物に付いたまま自然乾燥する能力を特徴とし、概して細菌性腐敗を伴わないその自然乾燥が、通常の熟した状態での収穫段階の後に植物に付いた状態のままにされたトマト果実表皮のしわにより定められるトマト果実。
  【請求項14】  略
  【請求項15】  トマト植物に付いたまま自然乾燥する能力を特徴とし、概して細菌性腐敗を伴わないその自然乾燥が、通常の熟した状態での収穫段階の後に植物に付いた状態のままにされたトマト果実表皮のしわにより定められる請求項1から12のいずれか記載の果実中水分の減少したトマトを産生するトマト植物を育てる方法により育つトマト果実。
  【請求項16】  請求項15記載のトマト植物の種。
 (*以上は日本の対応特許ですので、欧州の審決でどのような表現のクレームが争われたかは、これからは分かりません)。


(参考資料)
●ジェトロHP、2015年4月1日
 「欧州特許庁拡大審判部,ブロッコリ事件及びトマト事件について」
 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20150401.pdf

●ジェトロHP、2010年12月11日
 「EPO拡大審判部,交配を含む植物の生産方法に対して特許性を認めない審決」
 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20101211.pdf

  以上

2015年3月31日 (火)

拒絶理由通知書等の記載様式の見直し(要望あり)

4月1日以降に審査される特許出願の案件について、拒絶理由通知や、拒絶査定の記載様式の見直しが行われるとのことです。これより、より分かり易く、明確になることが期待されます。

● 特許庁HP,ニュースリリース、平成27年3月25日
  「拒絶理由通知書等の記載様式に関する取組について」
  http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/kyozetsu_kisaiyoushiki.htm

ニュースリリースでは、4月1日以降の審査案件から、となっていましたが、今週(3月末日よりも前)に受け取った拒絶理由通知の中には、既に、この様式の見直しに従って記載したと思われるものがありました。

見直しの内容自体は、劇的なものではなく、順当な内容です。でも実際に見直しが図られた拒絶理由通知を見た印象は、以前にくらべると、結構見やすくなるな、という感じです。

例えば、見直しの要点の(4)に、条文の冒頭に拒絶理由の簡略表記をつける、というのものがあります。拒絶理由の理由の欄の段落の最初に、例えば、特許法29条1項3号違反であれば、「新規性」との表示がつくようになります。地味な見直しですが、実際は、結構見やすくなって、良かったです。

今回の記載様式の見直しは、結構、ありがたいものになりそうです。

ただし、今回の見直しで、依然として、不十分と思われる点(見直して欲しかった点)があります(もしかしたら、管理人自身しか感じていない点かもしれませんが)。

それは、拒絶査定や、2回目以降の拒絶理由通知などで、前回まで理由で、意見書や補正書によって解消されたものがあった場合は、その点を明記して欲しいという点です。

例えば、第1回の拒絶理由通知で、理由1~3が指摘され、それが、理由1(新規性)、理由2(進歩性)、理由3(実施可能要件)であったとします。これらに対して、意見書と手続補正書を提出して応答したところ、理由2(進歩性)によって拒絶すべきものである、として拒絶査定を受け取った場合、理由1や理由3については、理由が解消されたかどうかについて、明示的記載は、通常、行われません。

理由2については、・・・日付けの意見書を検討したが、・・・であるから、出願人の意見は採用できない、などと、記載されて、理由が維持される理由なども明示されます。

理由1や3については、理由2については依然として拒絶理由を維持すると明示したのであるから、その反対解釈として、理由1や3については、解消されたと理解すべき、というのかもしれません。

しかし、このような場合の理由1や理由3についても、理由が解消されたと認定しているのであれば、先の拒絶理由通知の理由1と理由3は、意見書と補正書によって「解消された」(理由は取り下げる)と、明記して欲しいと思っています。

現状の扱いですと、理由1や3については、本当に、理由が解消されたのかについて、不安が残ると考えています。

この点について、米国の拒絶理由通知などでは、非常に明確に、記載されます。
上記例でいえば、2回目の拒絶理由通知の際に、理由1と理由3はwithdrawnされたとして明示されます。

こういった記載を、拒絶査定や、第2回目以降の拒絶理由通知に、入れて欲しかったので、様式の見直しが公表されたときに期待したのですが、全く、触れられていませんでした。

今後、さらに様式の見直しが検討される際には、是非とも採用を考えて欲しいです。

因みに、ニュースリリースの記事では、「拒絶理由通知書等の記載様式のあり方については、より良い記載様式となるよう、欧米等主要特許庁の記載様式やシステム対応も勘案し、引き続き検討して参ります」とありますので、今後に期待したいと思います。

以上

2015年2月27日 (金)

特許微生物寄託(日本-台湾間の手続が大幅に簡素化)-でも未だ実施されず

 日本から台湾へ、及び、台湾から日本への、特許微生物寄託が必要な特許出願の手続きに際して寄託関連の手続が、大幅に簡素化されることが予定されています

 既に特許庁のHPでも公表されているように、特許微生物寄託に関連する特許法施行規則の規定が改正され*1、また審査基準(「生物関連発明」の審査基準)が改訂され*2、施行規則の施行日と改正審査基準の適用はいずれも、平成27年1月1日からとなっています。これらの改正によって、台湾から日本への出願がされた場合の特許微生物寄託の手続きの簡素化が見込まれていました(日本から台湾への出願も、相互主義の考えに基づき(後述するように覚書が最近交わされています)、同様に適用される予定でした)

 ところが、今日現在まだ、日本-台湾間の特許微生物寄託手続の簡素化は、実際には未だおこなわれておらず、表面的には動きが止まってしまっているようです

 すなわち、特許法施行規則の改正、審査基準の改訂に加えて、特許微生物寄託の寄託機関における実際の運用などを定めた「特許微生物寄託等事業実施要綱の一部を改正する告示」(案)が一旦パブリックコメントを募集して、告示の公表のため手続きが進められていましたが、意見募集の結果(2015/1/10公表)、「本件に係る告示案について内容を見直し、改めて意見公募手続をすることとし、本意見公募に基づいて告示を定めないこととしました」として、仕切り直しが表明されて以降、特許庁での動きがとまってしまっています*3


*1
 特許庁ニースリリース、平成26年8月12日
 特許法施行規則の一部を改正する省令(平成26年8月12日経済産業省令第40号)
 
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohou_260812.htm

*2 特許庁ニースリリース、平成26年11月19日
 「生物関連発明」の審査基準の改訂について

 
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/h26_seibutsu_kaitei.htm
(改訂のポイント)
「特許法施行規則第27条の2第1項の改正に伴い、条文を引用している箇所について、改正後の条文に更新するとともに、改正により新たに規定された寄託機関である「条約の締約国に該当しない国(日本国民に対し、特許手続上の微生物の寄託に関して日本国と同一の条件による手続を認めることとしているものであつて、特許庁長官が指定するものに限る。)が行う機関指定に相当する指定その他の証明を受けた機関」を特許手続上の寄託機関として追加する。」

*3 http://www.jpo.go.jp/iken/biseibutsu_141107_kekka.htm
「特許微生物寄託等事業実施要綱(平成十四年経済産業省告示第二百九十一号)の一部を改正する告示案に対する意見公募の結果について」(2015/1/10)


また、改正施行規則や改正審査基準で新たに対象に加えたい、締約国に該当しない国の機関(「条約の締約国に該当しない国(日本国民に対し、特許手続上の微生物の寄託に関して日本国と同一の条件による手続を認めることとしているものであつて、特許庁長官が指定するものに限る。)が行う機関指定に相当する指定その他の証明を受けた機関」)についても、特許庁長官による国等の指定についても、未だに、何ら公表等されていません*4


*4 今回の改正により手続きの簡素化を図ろうと考える国・地域は、特許庁の改正の説明等には具体的には記載されておりませんが、これまでの経緯や、後述する台湾との覚書締結の進捗からみて、「台湾」を第一のターゲットにしていることは明らかです。

  なお、上記は、台湾から日本へ出願をした場合に関連する日本国内での寄託手続に関するものですが、その裏返しである、日本から台湾へ出願した際の台湾での寄託手続きについては、当然、台湾での法律に基づくものになりますが、これに関して、今回の日本国内の改正に合わせるように、日本-台湾間で「日台特許手続微生物寄託覚書」が交わされています*5


*5
 「公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の特許手続上の微生物の寄託の分野における相互協力に関する覚書」(略称「日台特許手続微生物寄託覚書」) 2014年 11月 20日作成
http://www.koryu.or.jp/taipei/ez3_contents.nsf/v04/787A326B12A80D0449257D9500303326

(抜粋)
1.11月20日、日本と台湾との特許手続上の微生物の寄託の分野における相互協力に関し、公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間で標記覚書を交わし、以下の合意がなされましたのでお知らせいたします。

2.台湾は我が国にとって緊密な経済関係を有するパートナーであり、その基礎となる知的財産分野においても、密接な関係を有しています。本覚書は、これまで日台双方において出願人が行うことが必要であった手続の負担を軽減するものであり、これにより、経済面での日台間の実務交流が一層促進されることが期待されます。

(主要合意事項)
1. 基本的性質
交流協会と亜東関係協会は、日台双方の出願人の相手方区域における特許権の取得に関する手続負担を軽減するため、覚書に規定された内容について、必要な関係当局の同意が得られるように相互に協力する。

2.  規定内容
(1)上記協力の対象は、特許手続における微生物寄託の相互承認。
(2)主な内容
 出願人が相手側の寄託機関に寄託を行う手続負担を軽減するために、日台双方がそれぞれ指定する微生物寄託機関への寄託を相互に承認すること。


 因みに従来は(結果的には今現在も)、「日本から台湾へ」の特許出願の場合も、またその逆の「台湾から日本へ」の特許出願の場合も、(ブダペスト条約の適用外なので)特許微生物寄託の手続における原則的な取扱いとなるため、実際に、相手国の寄託当局宛に寄託する微生物(生物)を送って、現地で微生物寄託をしたことの証明書(受託証)を取得し、それを特許出願に際して提出しなければなりません。

 特許微生物寄託の手続きの世界では、ブダペスト条約(『特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約』)というものがあります。

ブダペスト条約の加盟国であれば、自国の寄託機関で寄託(国際寄託)をしておくことで、自国でした寄託手続を相手国の審査の際に承認してもらえることになるため、その国で別途あらためて寄託手続をする必要はありません。

 しかし、台湾のようにブダペスト条約の枠外の国・地域については、その国へ、微生物寄託を伴う特許出願をしようとする場合、(基本的には)その国での特許出願前までに、その国に実際に微生物を送って、その国の寄託機関に提出して寄託手続を行い、その国で寄託の証明書(寄託機関の受託証)を取得する必要があります。

  例えば、従来は、たとえ日本国内の寄託機関に寄託をして受託証を取得していたとしても、日本出願を基礎として台湾で特許出願をするに場合には、日本から台湾に微生物の現物を送り、台湾の寄託当局に微生物を実際に寄託する手続をし、そこで受託証を取得して、それを台湾の特許当局に提出する必要がありました。

 ところが、今回の手続の簡素化が実際に図られると、この相手国(例えば台湾)での寄託を行う必要がなくなり、日本の寄託機関に対する手続のみで済ますことができるようになります。微生物の実物を現地に送らなければならないという問題を回避できますので、出願人にとっては大幅な負担軽減につながります。このため、簡素化は非情に期待されているといえます。

 いずれにしても、早く、手続の簡素化を実施してほしいです。


(参考)
ブダペスト条約(日本語訳)

http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/budapest/bt/mokuji.htm

ブダペスト条約(英語)
Treaties and Contracting Parties: Budapest Treaty(WIPO)

http://www.wipo.int/treaties/en/registration/budapest/index.html

特許微生物寄託センター(NPMD)
http://www.nite.go.jp/nbrc/patent/ida/npmd.html

以上

2014年7月17日 (木)

CBD「名古屋議定書」発効へ


1. CBD「名古屋議定書」の発効が決定


いわゆる「名古屋議定書」、すなわち、生物多様性条約(CBD, Convention on Biological Diversity)における遺伝資源へのアクセスとその利益配分に関する名古屋議定書(NAGOYA Protocol on Access and Benefit-sharing (ABS))の批准国が、7月14日に所定の50ヵ国を超えたため、「名古屋議定書」が発効されることになりました。*1
   [(*1)名古屋議定書は50カ国が批准した日から90日後に発効するとされていました]

発効は、90日後の今年の10月12日となります。生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)(韓国で開催)の開催期間10月6~17日になんとか間に合わせた形です。

(名古屋議定書発効に関する情報ソース)
・生物多様性条約事務局(CBD)7/14のプレスリリース(英文):
http://www.cbd.int/doc/press/2014/pr-2014-07-14-Nagoya-Protocol-en.pdf

 ・日経新聞7/14の報道:
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG15012_V10C14A7CR0000/?n_cid=TPRN0005

(批准した50カ国+EU)
アルバニア、ベラルーシ、ベナン、ブータン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、コモロ、コートジボワール、デンマーク、エジプト、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、グアテマラ、ギニアビサウ、ガイアナ、ホンジュラス、ハンガリー、インド、インドネシア、 ヨルダン、ケニア、ラオス、マダガスカル、モーリシャス、メキシコ、ミクロネシア、モンゴル、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ニジェール、ノルウェー、パナマ、ペルー、ルワンダ、サモア、セイシェル、南アフリカ、スペイン、スーダン、スイス、シリア、タジキスタン、ウガンダ、ウルグアイ、バヌアツ、ベトナム、欧州連合(EU)*2
  [(*2)上記のCBDプレスリリース中の記載より抜粋和訳]


ここでおわかりのように、(名古屋議定書の提案国でありながら)日本はまだ批准していません。現在環境省などで、批准のための国内措置の整備について準備中であり、批准は、年内はおそらく難しく、来年以降になるのではないかと思われます。なお、国内での検討状況は下記の報告書が参考になります。

・名古屋議定書に係る国内措置のあり方検討会報告書(2014/3)
http://www.env.go.jp/nature/biodic/abs/conf/conf01-rep20140320.html

遺伝資源の利用国になりそうな先進国では、EUの対応が先行しています。前述の通り日本は未批准ですし、米国に至っては、名古屋議定書の前提となる「生物多様性条約」自体について未だに、批准すらしていません。


2. 名古屋議定書とは(これまでの経緯)


生物多様性条約(CBD)は、(1)生物の多様性の保全、(2)その構成要素の持続可能な利用、及び(3)遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的とするものです。

Cbd_nagoya_protocol_3

特にCBDの第15条には、遺伝資源の取得機会について規定されており、具体的には、

  ・各国は、自国の天然資源に対して主権的な権利を有すること

  ・遺伝資源の取得の機会については、その資源が存する国の政府に権限があり、その国の国内法令に従うこと。

  ・遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、利用者は、遺伝資源の提供国による、事前の情報に基づく同意(PIC、Prior Informed Consent)を要すること。

  ・遺伝資源の研究、開発、商業的利用等での利用から生ずる利益は、遺伝資源の提供国と、公平かつ衡平に配分する。またその配分は、相互に合意する条件(MAT、Mutually Agreed Terms)(契約)で行うこと。


などが明記されています。
これは、遺伝資源の提供国(遺伝資源を持つ原産国及び供給源から入手した遺伝資源を提供する国)と、遺伝資源の利用国の利害を調整するためのものです。

ただし、ここで問題となるのが、遺伝資源の提供国は、多くの場合、途上国であり、それを利用するような技術も資本もないことが多い一方で、遺伝資源の利用国は、多くの場合、先進国であり、もっと以前には、先進国が、途上国の遺伝資源を一方的に持ち出して、利用し、特許まで取得してしまうといった状況が生じていました*3

  [*3) 例えば、インフルエンザ治療薬「タミフル」は、中国原産の植物の実、八角(トウシキミの実)の抽出物質で作られますが、(遺伝資源提供国である)中国はタミフル販売による利益を享受できていないという立場である]

要するに、このような遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)の問題は、遺伝資源の提供国(多くの場合、途上国)と、利用国(多くの場合、先進国)との対立の図式であり、南北問題的な対立の要素が色濃くあるものです。

遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)への対応については、遺伝資源提供国の国内法を遵守することが原則ですが、国内法等がない場合については、2002年のCOP6で採択された「ボン・ガイドライン」に従うことが推奨されていました。ボン・ガイドラインでは、CBD15条(前述)の手続きをより明確にした指針がしめされておりましたが、これはあくまでも任意のガイドラインであるため、法的な拘束力はなく、遺伝資源へのアクセス手続きも明確な形にすることは求められていませんでした。

この状況は、遺伝資源の提供国(多くの場合、途上国)と、利用国(多くの場合、先進国)の双方にとっても、不満が残る状況でした。

そこで、2010年の第10回の締約国会議(COP10)において、ABSの問題が議論されましたが、双方の隔たりは大きく、合意は難しい状況になりましたが、最終段階で議長国である日本の提案が採用されることになり、これが「名古屋議定書」として採択されました。

つまり、「名古屋議定書」は、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)について、各国に国内措置を義務づけし、手続きについても明確化を図るためのものです。ポイントは下記の通りです。

  ・遺伝資源提供国には、アクセスに関する透明性のある手続きの明確化

  ・利用国については、遵守措置の設置の義務づけ

  ・情報交換の仕組み(クリアリングハウス)の設置



日本は、議定書の提案国であったにもかかわらず、結局、国内措置などの体制の整備が遅れ、批准するための準備が整わず、名古屋議定書の発効のための最初の50か国には入れませんでした。


3. 知財実務への影響

・特許出願における「遺伝資源の出所開示」
生物多様性条約の第15条の関係では「ボン・ガイドライン」において、特許出願の際に遺伝資源の出所開示が奨励されていたことから、特許出願時の明細書に「遺伝資源の出所開示」の義務付ける国が、すでに多く存在していました。主なところでは、インド(インド特許法10条)や中国(専利法26条)などでは、そのような出所開示を出願明細書においてすることが実際に求められています。

・ABSについての国内措置(国内法)との関係
また、ABSについて独自の国内法を設けていて、違反の場合に、行政処分や、出願の拒絶や特許の無効などを規定している国もあります。すなわち、遺伝資源の適法に入手されていることの証明や、その国で事前承認を受けていない場合には、その国での特許出願自体ができなくなる場合もあります(例えば、インドの生物多様性法第6条)。*4

したがって、出願に係る発明や明細書中で使用しているもの(実施例や比較例においても)について、遺伝資源に関するものがあるときは、それがどのような起源(出所)のものであり、また適法に入手されたものであるかについて、確認しておく必要があります。

  [*4) 例えば、ペルーは以前、自国の遺伝資源や伝統的知識を無断で利用していると考える特許出願や特許(日本を含む主要国の特許)について、名指しでリスト(出願番号、出願人を含むもの)を公表し、国際社会に向かって非難をしたことがありました。これに対して、多くの企業・団体が(真偽の立証をすることなく、風評を気にして)出願や特許を取り下げるということがありました。このときは、日本の企業(化粧品会社)も日本の特許出願を取り下げたものもありました]。


・品種登録に関して
品種登録に関しても、遺伝資源に基づく知的財産権の取得という観点からは、特許と同様の問題が生じ得ます。例えば、品種登録出願の出願書類中に、出願品種に関して遺伝資源の出所開示の記載を求める法制をとっている国も既にあるようです(例えば、タイ)。また、自分で出願するに際しても、自身の育成した品種について、その起源(親品種やさらにそれ以前)を含めて、遺伝資源の出所や、それが適法に入手したものであるかについて、確認しておく必要があります。

・今後の影響は
名古屋議定書が発効されること自体に関しては、それが、この「遺伝資源の出所開示」の問題などにすぐに直接的な影響を及ぼすことはなさそうです。

ただし、名古屋議定書締約国においては、ABSに関する国内措置が義務づけられることになりますので、特許出願時の明細書に「遺伝資源の出所開示」の義務付けようとする国や、特許出願の拒絶や特許の無効も視野にいれたABSの独自の国内法を設ける国が増えてくる可能性が多分にあります。

既に批准した国ももちろん、これから批准する国について、知財の観点でどのような制度があるか(新たに制定されているか)について、今後、充分に注意しておく必要がありそうです。



*************************************

参考資料:

生物多様性条約(外務省サイト):

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html



名古屋議定書(和文(仮訳)、英文)(外務省サイト):
[名古屋議定書: 遺伝資源の取得の機会の提供及び提供された遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分するための国際ルールを定める議定書]

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_72.html


カルタヘナ議定書(和文、説明書など)(外務省サイト):

[カルタヘナ議定書: 遺伝子組み換え生物による生物多様性の保全及び持続可能な利用への悪影響を防止するための輸出入の手続等について定める議定書]

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty156_6.html


「世界の特許出願時の遺伝資源の出所開示に関する法律についての運用の調査報告書」、パテント、2011年、Vol.64, No.12, pp30-

http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201109/jpaapatent201109_030-038.pdf


                                                     以上 

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2014年3月11日 (火)

ブログ開設のごあいさつ

 このブログは、植物の育種技術、品種保護や農産物の問題に興味のある、化学バイオ系の弁理士が開設しました。

 これまでに、機会にめぐまれ(?)、品種登録の出願を国内と外国向けで数十件以上経験することができ、様々な実務上の経験や知見が得られた一方で、いろいろ考えさせられることがありました。そのためもあって、植物品種の保護の有利不利の問題や特許との制度上の異同、両制度の活用、農産物の輸出、遺伝資源へのアクセスの問題、遺伝子組換え植物に関連する規制・事情などの話題に興味をもち、自分なりに調べたり考えたり、また外部の委員会などの参加して勉強したりしてきました。

 このブログでは、ブログタイトルにあるように「植物品種の保護*と特許」に関して、これまでにわかったり気がついたりしたことについて、現状に限らず、少し前の情報も含めて(もちろん、最新情報も含めて)、整理していきたいと思います。 (研修や展示会等への参加報告などもしたいと思います)。
[* 植物品種保護=Plant Variety Protection(略して、PVPとよく言います)。当サイトのドメイン patent-pvpは特許と植物品種保護、という意味からきています。]

 ブログの目的は、第一には(申し訳ありませんが)、自分の手持ち情報と考えの整理のためです(つまり備忘録と自分の頭の整理という、要するに自分用です)。だだ、それに限らず、ご覧になった方に少しでも参考となり、お役に立つことができればうれしいですし、また同じような関心を持っていただける方が一人でも増えればと思っておりますので、そういった視点も意識して書いていきたいと思います。

 ブログの内容は、テーマを明確にしたいという気持ちから、できるだけブログタイトル(サブタイトル含む)にある内容の範囲に絞りたいと思います(ただし少し疲れたりしたときには、雑談的な話も入るかもしれません)。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

以上

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[ブログ開設日は、いろいろなことを再考するきっかけとなったこの日(3.11)と同じ日としました。]

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