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特許

2018年5月28日 (月)

例外適用「1年」はいつから?(改正される新規性喪失の例外適用)

前回のご紹介しましたように、「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の施行、又は「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」の成立、施行のいずれかに伴う、特許法改正によって、特許法における「新規性喪失の例外」(特許法30条)の例外の適用が従来の「6月」から「1年」に延長されます。

ここで気になるのが、新規性が喪失されないとする期間が、公知等となった日から「6月」とあったのが、「1年」に延長されると、例外適用の対象となった行為がいつからなら適用されるのか、ということです。

例えば、改正法の施行が「来年の4月1日」になったとすると、その1年前、すなわち、もう例外適用の期間に入っているのでしょうか?

201805koukyo_2
(2018.5 撮影)

答えは、残念ながら違うようです。

改正法の施行の日から、6月を遡った日より前の発明については、例外適用は受けられない、ということになります。

つまり、改正法施行の日から1年前~6月前の行為については、改正法の「経過措置」として適用は残念ながら「受けられない」ということになります。

もっと砕けた言い方をするならば、今回の改正によって、1年にのびることで、急に予想外に適用時期が遡及される事態は起きない、ということになります。

今回の改正法(ここでは、「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の方をみてみます)の特許法の附則第10条に、「発明の新規性喪失の例外期間の延長に関する経過措置」が規定されています。

・改正法の附則
「 第十条 (発明の新規性喪失の例外期間の延長に関する経過措置)
 特許法第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至った日が、附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下「第二号施行日」という。)の六月前の日前である発明については、第三条の規定(同号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の特許法(附則第十六条において「第二号新特許法」という。)第三十条第一項及び第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。」

ちょっと分かり難いですが、改正法の施行日の6月前の行為(発明)については、改正法(例外適用1年)によらず、従前の例(これまでどおり)とするという意味です。

この点について、特許庁の考え方については、ワーキンググループでの特許庁側の発言が参考になります。

産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第12回審査基準専門委員会ワーキンググループ(平成30年1月16日開催) 議事録より
「審査基準室長)
  TPP担保法のときの施行日の考え方では、改正法が施行されたときに、新規性喪失の例外期間がどこまでさかのぼるかというところを規定しておりました。
 今回の法改正でどうなるかはまだ確定してはいないと思いますが、TPP担保法のときの例で申し上げますと、改正法が施行されたら、例外期間がいきなり12月さかのぼるのではなくて施行日から6月しか戻らないとしておりました。施行後順次12月に延びていくという形になりますので、例えば、改正法の施行前にクリアだと思っていた発明が、施行後にさかのぼって例外期間カバーされるという状況にはならないということだと思います。 」

 (下線は当ブログ管理人による)

いずれにしても、優先権主張の利用との関係も再考する必要があるかもしれませんし、実務的には、影響が大きそうです。

少なくとも実務者としては、例外期間「1年」となることによる意義・利用をよく考える必要がありそうです。

以上

2018年5月25日 (金)

2つの特許法等改正が進行中

少しずつ暑くなってきました。

201805kasumigasekibl
(2018.5/ (所用で訪れた)霞が関ビルの高層階から新橋方面を撮影)


現在、特許法の改正について、2つの法律が、国会で審議されており、一つは先日可決成立し、もう一方もまもなく成立すると予想されますので、整理しておきたいと思います。


既にご存じかもしれませんが、まず、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」については、5月23日に参議院本会議の審議で可決、成立したところです。

この「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」は、特許法の一部改正と、弁理士法の一部改正を含むものです。

一方で、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」については、5月24日に衆議院本会議で可決され、こちらは参議院で現在審議中となっており、おそらく近日中に、参議院でも可決、成立されるものと思われます。

(参考)
 ・日経新聞HP、2018/5/25
  「米強硬、日本は苦慮 TPP法案、衆院通過も…」
  https://www.nikkei.com/article/DGKKZO30945100U8A520C1EE8000/

 

 

この「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」は、昨年、国会で可決成立し、公布され、施行待ちのままになっていた、いわゆるTPP整備法(環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律)の施行日を、TPP11の発効にあわせ、改正しようとするものです。

この法律が成立すると、TPP11発効により、昨年のTPP整備法に関連する特許法の一部改正法が施行されることになります。

以下に両法律の施行にともなって行われることになる特許法の改正をまとめました。

不正競争防止法等の一部を改正する法律案 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案
① 特許料等の軽減措置を、全ての中小企業に拡充する。 (a) 発明の新規性喪失の例外期間の延長  
 (新規性喪失の例外期間を6月から1年に延長)
② 裁判所が書類提出命令を出すに際して非公開(インカメラ)で書類の必要性を判断できる手続を創設するとともに、技術専門家(専門委員)がインカメラ手続に関与できるようにする。 (b) 新しい特許権の存続期間の延長制度
 (出願後、審査に時間がかかった場合(出願から5年又は審査請求から3年)、特許権の存続期間(原則出願から20年)の延長ができる制度)
③ 判定制度の関係書類に営業秘密が記載されている場合、その閲覧を制限する。 (c) 商標の不正使用についての損害賠償に関する規定の導入
④ 発明の新規性喪失の例外期間の延長  
 (新規性喪失の例外期間を6月から1年に延長)
  - 
⑤ 特許料等のクレジットカード払いを認める。   - 
⑥ 最初に意匠出願した国への出願日を他の国でも出願日とすることができる制度について、必要書類のオンラインでの交換を認める。   - 
⑦ 商標出願手続を適正化する。   -
 施行日:
公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日
施行日:
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の発効日
 (いわゆる、TPP11の発効日)

両方の法律で、施行日の表現が異なっている点に、注意が必要そうです。
「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」の方は、今後の施行規則等がどのようになるかによりますが、おそらく施行日は、来年の4月1日になるのではないでしょうか。ただし、クレジットカード払いなど一部の施行については前倒しになる可能性はあると思います。

もう一方の施行日は、TPP11の発効次第なので、予想つきにくい状況です。

なお、(法技術的な話ですが)、新規性喪失の例外期間を6月から1年に延長する改正点は、両法案に存在しますが、両法の「付則」で、施行が後になったものからは、改正部分が削除され、重複して改正法が適用される事態は回避されるよう手当がなされています。


(参考資料)
■ 「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」
 (i) 経済産業省HP、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました」
 http://www.meti.go.jp/press/2017/02/20180227001/20180227001.html

 (ii) 衆議院HP(議案審議経過情報)、第196回国会 30 不正競争防止法等の一部を改正する法律案
 http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DC8102.htm

 (iii) 不正競争防止法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議 (衆議院)
 http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/keizaiAF76CA71AB1868004925828F00081130.htm


■ 「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」
 (i) 内閣官房HP, 「第196回 通常国会」
  「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」の欄
 https://www.cas.go.jp/jp/houan/196.html

 (ii) 衆議院HP(議案審議経過情報)、第196回国会 62 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案
 http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DC88BA.htm

 (iii)  首相官邸HP、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定
 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/tpp2015.html
 
 (iv)  本ブログの過去の関連エントリー
 2017年1月19日 (木) 特許法・特許法施行規則・手数料令の改正(TPP整備法関連)
 http://blog.patent-pvp.com/pvp/2017/01/index.html#entry-86720716


以上


2018年4月10日 (火)

補正案をメールで送信可へ ~ 面接ガイドラインの改訂

4月2日付で面接ガイドラインの改訂が公表され、特許の審査に限って、ファックスに代えて、メールによって補正案を審査官宛に送ることが出来るようになりました。

20180410plc
(有楽町側から皇居桜田門方面を撮影(2018/4/10))


特許出願をした際の拒絶理由通知への対応の際に、手続補正書の補正案などの応答案を、特許庁への提出に先だって審査官に見てもらうため、事前に電話して、案をファックスするといった実務対応はよく行われているかと思います。

これまでは、ファックスで補正案を送るのが通常で、メールによる補正案の送付は認められていませんでした。(これまでメールによる連絡は、面接日時や場所等の単なる事務連絡に限られていました)。

このようなところで、4月2日付で面接ガイドラインが改訂され、特許の審査に限って、ファックスに代えて、メールによって補正案を審査官宛に送ることが出来るようになりました。

・特許庁HP 4月2日  面接ガイドラインの改訂について
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_sonota/mensetu_guide_kaitei.htm

実際の面接ガイドライン(特許審査編、平成30年4月2日改訂)の「6.特許出願の審査に関わる意思疎通を図るための「電話・ファクシミリ等による連絡」の記載は、下記の通りとなっています。

「なお、出願人側応対者が補正案等の送付を希望している場合には、未公開案件に関して送付する場合を除き、ファクシミリ等に代えて電子メールにより補正案等を送付することも可能です。その場合には、出願人の責任の下で行ってください。
 審査官からは、面接日時や場所等の単なる事務連絡を除き、電子メールによる連絡は行いません。

(出典:面接ガイドライン(特許審査編、平成30年4月2日改訂)の「6.」)


ただし、下記の点は注意が必要です。
 ・メールの利用が可能になったのは、特許の審査段階のみで、審判段階や、意匠の審査では、依然として、メールは依然として事務連絡のみが認められるだけ。

 ・特許の審査でも、出願人(代理人)側からの補正案等のメールによる「送信が可能」になったに過ぎず、上記(後段)の記載ぶりからすると、
審査官から連絡(補正案への回答など)は、メールではなく、これまで通り、電話対応等のみになりそう


実際に利用してみないと分かりませんが、現状よりは、わずかながら、利便性は向上しそうです。 さらなる利便性向上を期待したいところです。。。

以上

2018年3月24日 (土)

この4月からの法改正・制度実施等のまとめ(3月下旬も含む)

この2018年4月から改正や施行・実施される、法律や規則、制度等(特許や品種登録関連の実務上、影響しそうなもの)を、まとめてみました。 (備忘用のメモです)。

TPPの発効を前提とした、TPP関連の特許法等の改正法が、米国のTPPへの事実上の不参加表明(現時点で)のため、棚上げになっていますので、特許法関連では、この4月には大きな改正はありません。とはいえ、小さな(?)変更等はありますので下記で確認しておきたいと思います。

Sakura201803
(先日、東京も開化宣言がありソメイヨシノが咲き始めました、2018.3.24撮影)


(1) 特許法関連
 (i) 特許法施行規則等の一部改正

  → 特許料について減免申請する場合の手続が一部、簡素化される。
 具体的には、第4年分から第10年分までの特許料を別に納付する場合は、その都度、減免の申請書を作成しなければならなかったところが、改正により、一度減免が認められた者については、以後減免の申請がなくとも第10年分までの特許料については自動的に減免を行うことができるようになる。

 <特許法施行規則等の一部を改正する省令について> (2018.3.28追記)
 https://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohou_300326.htm

 <特許料の減免申請手続の改正(平成30年4月1日施行)に関するお知らせ>
 https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/genmen_kaisei.htm

 <「特許法施行規則等の一部を改正する命令案」に対する意見募集について>
 https://www.jpo.go.jp/iken/171113_houkaisei.htm

20180401genmem_2
   (出典:特許庁HP)


 (ii) 中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした審査請求料・特許料の軽減措置(1/3に軽減)が平成30年(2018年)3月31日で終了。

平成30年4月1日以降に特許の審査請求をした場合は、上記軽減措置は受けられなくなる。

ただし、特許法、産業技術力強化法等の他の法律に基づく軽減措置の軽減の要件を満たす者であれば、「審査請求料」、「特許料(1~10年分)」が1/2となりうる。また、平成26年4月1日から平成30年3月31日までに特許の審査請求を行った案件については、特許料の納付が平成30年4月1日以降であっても、軽減の要件を満たす者の場合は「特許料(1~10年分)」を1/3とする軽減措置を利用することができる。

中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした審査請求料・特許料の軽減措置について
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen.htm

中小ベンチャー企業、小規模企業を対象とした特許料等の軽減措置及び国際出願促進交付金の平成30年4月1日以降の取り扱いについて
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen-fromh300401.htm


 (iii) PCT国際出願関係手数料の一部改定 
(2018年4月1日)
   → 欧州特許庁が国際調査を行う場合の調査手数料が改定。
   http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/pct_tesuukaitei.htm



(2) 種苗法関連
 (a) 種苗法施行規則の一部改正  (公布日: 2018年03月23日)

  →(改正のポイント)
  (a-i) 植物について定める区分の追加等(規則別表第一関連)
       出願品種の属する植物の種類の追加(規則別表第二関連)
  (a-ii) 農業者の自家増殖に関し育成者の効力が及ぶ植物の種類の追加等(規則別表第三関連)
   → 植物を新たに定める(他)
  (a-iii) 品種登録出願及び登録料納付に係る電子申請システムの導入に伴う改正

 <種苗法施行規則の一部を改正する省令>
(省令案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000165980

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002580&Mode=2

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002580&Mode=0&fromPCMMSTDETAIL=true


 (b) 
苗法第2条第7項の規定に基づく重要な形質を定める件の一部の改正  (公布日: 2018年03月23日)
→(改正のポイント)
 「重要な形質」の追加(新設)、改正

 <種苗法第2条第7項の規定に基づく重要な形質を定める件の一部を改正する告示>
 (告示案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000165983

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002581&Mode=2
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002581&Mode=0&fromPCMMSTDETAIL=true


 (c) 電子手続の受付開始 ~ 2018年3月26日からの予定

 <品種登録電子出願システム(マニュアル、利用規約等)>
http://www.hinshu2.maff.go.jp/info/yousiki/denshi/idpw01.html



(3) その他
・主要農作物種子法(いわゆる「種子法」)の廃止

  (注: 種苗法とは全く別の法律です)

主要農作物種子法を廃止する法律の施行(2018年4月1日)により、「主要農作物種子法」が廃止されます。

主要農作物種子法では、稲・麦・大豆の優良な種子の安定的な生産や普及を、国や都道府県が責任をもつとされており、国や都道府県が育成した品種でなければ、奨励品種とはなることは事実上困難で、奨励品種になれないと農家への普及等は実質期待できないものでした。
このため、稲等の民間企業による新品種の開発はこれまで、新品種の育成はされても結局、普及は期待できず、ビジネスとしてほぼ成立しえなかったため、結局、民間企業による稲の品種開発はあまり進みませんでした。
(10年ほど前にイネの全ゲノム解読の後、ゲノム育種による国内民間企業、ベンチャーによる稲の新品種の育種が盛り上がった時期がありますが、結局、民間開発の品種は「奨励品種」になれないことが壁となり、その後は、民間企業のプロジェクトやベンチャーについては、死屍累々となりました)。

主要農作物種子法の廃止により、民間企業による稲・麦・大豆での、新品種の開発等が期待されているようです。因みにこの廃止には、海外の種子メジャーによる国内種子の独占などを心配する向きもあるようです。

国内民間企業等の品種開発促進を主眼に「廃止」を考えるのであれば、正直、その判断は、遅きに失した(10年遅れた)のでは、と思います。「廃止」となったからには、民間を含む国内での優れた品種の開発がされていくことを期待したいです。

<主要農作物種子法を廃止する法律案の概要>
http://www.maff.go.jp/j/law/bill/193/attach/pdf/index-13.pdf

以上

2017年7月 1日 (土)

EPO/「本質的に生物学的な方法により生産された植物又は動物」の審査・異議手続 再開へ(EPC施行規則改正と7月1日より直ちに施行)

だいぶ久しぶりの更新になってしまいました(前回の更新から春を飛び越して夏になってしまいました)。申し訳ありません。
 

20170630pht
(2017年6月30日撮影、workspaceにて)

欧州特許庁(EPO)は、2017年6月29日付のニュースリリースにて、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法(essentially biological processes)によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続が、昨年(2016年)11月以降停止されていましたが、この停止が解除され、7月1日以降、順次、審査および異議申立手続きが再開されることになりました。

また、同6月30日に、この決定に伴う内容を反映したものとして、EPC施行規則の第27条および第28条の改正を公表し、翌日7月1日より直ちに施行し、再開した審査及び異議申立手続に反映させる旨も公表されました。

29 June 2017
EPO clarifies practice in the area of plant and animal patents
https://www.epo.org/news-issues/news/2017/20170629.html


30 June 2017
Decision of the Administrative Council of 29 June 2017 amending Rules 27 and 28 of the Implementing Regulations to the European Patent Convention (CA/D 6/17)
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/ac-decisions/archive/20170630.html

「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物(「本質的に生物学的な方法」というプロセスで特定された物(プロダクト・バイ・プロセスで特定された物)(物/products))自体の特許性について、その扱いが拡大審判部の判断と、欧州委員会のバイオ指令の解釈とで齟齬がありましたが、今回、6月30日付(7月1日より施行)でEPC規則の第27条と第28条とが改正され、これらについても、特許性が認められないことが明確になりました。

つまり欧州特許庁拡大審判部による「ブロッコリ事件II」(G2/13)および「トマト事件II」(G2/12)の審決による立場が否定され、「本質的に生物学的な方法」により得られた植物又は動物についても、特許が付与されないことが明確になりました。


(2017年6月30日に公表されたEPC施行規則改正の概要)


1.EPC施行規則27の(b)項を下記のように改正する。

「規則27
生物工学的発明は,それが次の事項に関するものであるときも,特許を受けることができる。
(b) 第28条2項によらない、動物又は植物。ただし,その発明の技術的実行可能性が特定の植物又は動物の品種に限定されないことを条件とする。


(英文)
(b) without prejudice to Rule 28, paragraph 2, plants or animals if the technical feasibility of the invention is not confined to a particular plant or animal variety;



2.EPC施行規則28について、従前の(a)~(d)項は、第1項の(a)~(d)とし、以下の第2項を新設する。

「規則28
(1) <従前の規則28(a)~(d)を、第1項とし、第2項を新設>>
(2) EPC第53条(b)のもと、欧州特許は、本質的に生物学的手段によりもっぱら得られた植物又は動物に関しては付与されない。


(英文)
(2) Under Article 53(b), European patents shall not be granted in respect of plants or animals exclusively obtained by means of an essentially biological process.



3.「この決定は2017年7月1日より有効となる。この決定の上記1.2.により改正された規則27および28は、この7月1日以降に提出された欧州特許出願、並びに、その時点で継続している欧州特許出願および欧州特許に適用される。」


(ご参考)
なお、上記分野の案件について審査等の手続をEPOが停止していた理由・背景などはこちらの本ブログの過去のエントリー(2017年1月13日)をご参照ください。

「EPO/「本質的に生物学的な方法によって生産された植物」の審査・異議手続の停止決定 ~拡大審判部「ブロッコリ事件II」 「トマト事件II」 その後」
http://blog.patent-pvp.com/pvp/2017/01/index.html#entry-86682090


以上
 

2017年1月22日 (日)

知財高裁大合議判決(延長された特許権の効力)~判決言渡

20日(金)に、知的財産高等裁判所の大合議判決が出されました。
大合議判決としては11件目で、主要なポイントは、存続期間が延長された特許権の効力に関するものです。


20170121ume
(早くも、梅の花が咲いているのを見つけました)


備忘として、大合議事件の判決(言渡)に関連する公開事実のみメモを残します(判決内容についてのコメントはしていません)。

判決は、20日の14時から、東京高等裁判所合同庁舎の1階の101法廷(大きな法廷です)で開かれました。

設楽裁判長を含む5人の裁判官が入廷の後、報道機関による撮影時間があり、その後の判決の言渡がありました。

裁判長から、主文が述べられた後、判決要旨について、若干時間をとって言及があり、判決概要と、ポイント的なところのコメント(下記)が述べられました。

すなわち、
 ・本件は医薬品業界の関心が非常に高い事案であることを鑑みて、今回は判決もそのような状況を考慮してできるだけ丁寧に判断を示そうとしたこと、
 ・判決文中の、医薬品の実質同一の4類型は必ずしもすべての医薬品を網羅したものではないこと、
などです (言及のあったポイントは他にもありましたが省略します。また上記表現の正確性は保証できません)。

判決内容や、関連ニュース等については下記のとおりです。


● 知的財産高等裁判所 - 大合議事件(本件)
1.平成28年(ネ)第10046号 特許権侵害差止請求控訴事件

http://www.ip.courts.go.jp/hanrei/g_panel/index.html

- 判決の要旨
http://www.ip.courts.go.jp/vcms_lf/yosi_28ne10046.pdf

- 判決の全文
http://www.ip.courts.go.jp/vcms_lf/27wa12414.pdf


● 東和薬品HP

2017年1月20日 プレスリリース
オキサリプラチン点滴静注の特許権侵害差止請求訴訟 - 知的財産高等裁判所大合議判決勝訴のお知らせ
http://www.towayakuhin.co.jp/pdf/news170120.pdf



--(参考、ニュース記事)--

● 2017/1/20 日経新聞web
薬品の延長特許、「わずかな差異」なら侵害 知財高裁

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20H9T_Q7A120C1CR8000/

(記事抜粋)
特許の保護期間延長が認められた医薬品をめぐる訴訟で、知的財産高裁の大合議(裁判長・設楽隆一所長)は20日、「成分や分量、用法などにわずかな差異や形式的な差異しかない場合、実質的に同じ医薬品」と述べ、そうした医薬品の販売は延長された特許の侵害にあたるとする判断基準を初めて示した。
・・・・・・。
これまで延長特許が保護される範囲ははっきりせず、特許を持つ製薬会社と後発医薬品会社の訴訟が相次いだ。知財高裁が一定のルールを示したことで後発薬側の訴訟リスクを避けやすくなる。
・・・・・・。
20日の判決は、特許侵害を認めなかった一審・東京地裁判決を支持し、デビオ社の控訴を棄却した。設楽裁判長は判決理由で「延長特許の効力はわずかな差異や形式的な差異の製品にも及ぶ」と指摘。その上で東和薬品の製品には添加物が含まれ、「実質的に同じ物ではない」として効力は及ばないと結論づけた。
・・・・・・。

・・・・・・・。・・・・・・

● 2017/1/20 読売新聞
抗がん剤後発薬の特許侵害、認めず…知財高裁
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170120-OYT1T50085.html

● 2017/1/20 朝日新聞
ジュネリック抗がん剤「特許侵害ない」 知財高裁が基準
http://www.asahi.com/articles/ASK1P34Z2K1PUBQU00C.html

● 2017/1/20 TBS News (ニュース映像あり)
ジェネリックの抗がん剤、特許侵害認めず
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2964771.html

● 2017年1月20日 時事通信社
後発薬の特許侵害認めず=海外メーカー二審も敗訴―知財高裁
http://sp.m.jiji.com/generalnews/article/genre/social/id/1763405

以上

2017年1月19日 (木)

特許法・特許法施行規則・手数料令の改正(TPP整備法関連)

環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(以下「TPP整備法」)が、2016年12月9日に(第192回国会にて)可決・成立し、12月16日に法律第108号として公布されています。また、それに関連する法整備として、特許法施行令及び特許法等関係手数料令について改正するための政令が、閣議決定され、2017年1月17日付けで経済産業省HPにて公表されています。

(参考)
2016年12月28日 (特許庁)
環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年12月16日法律第108号)
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tpp_houritu_seibi_h281228.htm

2017年1月17日 (経済産業省)
特許法施行令及び特許法等関係手数料令の一部を改正する政令が閣議決定されました
http://www.meti.go.jp/press/2016/01/20170117002/20170117002.html

内閣官房 - TPP政府対策本部
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/torikumi/index.html#seibihouan

TPP整備法については、昨年3月の時点で法案が公表されていましたのでご存じの方も多いと思いますが、備忘のため、下記に簡単にまとめておきます。



[TPP整備法による特許法等の改正の概要]

TPP整備法は、TPPの締結に伴ってそれを的確に実施するため、特許権の存続期間の延長制度の整備等を内容とする特許法や商標法等の一部改正を含む、関連する国内法の規定の整備を一体的に行うものです。このため、このTPP整備法案により、関連する特許法、商標法、著作権法などの規定が改正がなされることになります。


(1)特許法の改正内容

(i) 発明の新規性喪失の例外期間の延長

 特許出願をする前に、特許を受ける権利を有する者が発明を公開した場合、現行法では、発明を公開した日から「6ヶ月」以内に(所定の手続をととって)特許出願することにより、公開に伴う新規性喪失を例外として扱って救済を受けることが可能です(特許法30条)。
 今回の改正では、この例外の期間が現行の6ヵ月から「1年」に延長されます。

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(出典: http://www.cas.go.jp/jp/houan/160308/siryou1.pdf)


(ii) 特許権の存続期間の延長制度の整備

 特許権の存続期間は、原則、特許出願の日から20年間であり、医薬品や農薬のような例外を除いては、この期間は延長されません。
 一方で、特許権の存続期間は出願日からの計算されるため、出願から審査を経て特許として登録されるまでの間で、審査等に時間がかかった場合、その分の権利期間が短くなるといえます。
 今回のTPP整備法では、一定の基準以上、審査等に時間がかかった場合には、それに要した期間について、特許権の存続期間の延長を可能とするものです。

 ここでいう一定の基準となるものとしては、
「特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求のあった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後に特許権の設定登録があった場合」には、その期間(ただし、出願人の責めに帰する期間、審判・裁判に関する期間等は除外する)について、特許権の存続期間を延長することができるようになります。

 ただし、米国特許制度にある特許期間調整制度(Patent Term Adjustment(PTA))ように自動で計算して(無料で)適用しれくれるのではなく、下記のような手続や制約があります。

 ・特許権者自らが、特許権の設定登録の日から3月以内に延長登録出願を行う必要がある(自動的に計算されて延長されるのではない)、

 ・延長登録出願する際には、特許権者(延長出願の出願人)が、延長が見込まれる期間を自分で計算する必要があり、またその期間が適切か否かについて、審査がされ、場合によっては拒絶理由通知の発行、手続補正書・意見書提出が必要となる、

 ・延長登録出願は無料ではなく、印紙代(43600円)がかかる(改正手数料令参照) など。

Enchopta
(出典: http://www.cas.go.jp/jp/houan/160308/siryou1.pdf)


(2)商標法の改正内容

商標の不正使用についての損害賠償に関する規定(詳細は省略)。


(3)施行日

・TPP整備法(特許法の改正等):  TPPが日本について効力を生ずる日

・特許法施行規則・手数料令:  TPP整備法の施行の日


[コメント]

・明日1月20日に、米国で新大統領(トランプ大統領)の就任式がありますが、新大統領はTPPについて否定的な立場を既にとっていますので、TPP自体は発効しない可能性が非常に高くなっています。TPPが発効しなければ、(上記の施行日の条件のとおり)、上記の改正法も施行されず(当然、施行令等も施行されません)、何も無かったことになります。

・したがって、現時点では、実際に、日本で特許法等の改正が行われるか否かは、米国の新大統領の胸三寸、というなんだか不思議な状況になっています。

・ただし、TPPが発効しなかった場合でも、上記の特許法の改正内容は、TPPの交渉段階で米国からの要望で入った内容といえそうですので、将来的に、TPPの代わりに日米でのFTA交渉があれば、これらの内容について特許法の改正が求められる可能性は十分あると予想されます(実際、米国と二国間のFTAを結んでいる韓国では新規性喪失例外の期間が1年になる等の改正が既に行われています)。

・改正法の内容についての個人的な感想(コメント)としては、新規性喪失例外の適用については、猶予期間(グレースピリオド)が「1年」となるは良い方向性だと思います。ユーザーにとっては利便性が大幅に良くなると思います。
 一方、新たな存続期間の延長登録制度については、これはちょっと、出願人(特許権者)にとっては、あんまりな(酷い)制度なのではないでしょうか。

・つまり、特許庁側の理由で、審査が遅延して延長する必要がでてくるのに、特許権者側が、お金を払って、期間も計算して、出願手続をとって、さらに審査手続に対応しなければならないなど、特許権者側の負担があまりに大きく、バランスを欠いていると思います。

・現行の審査に要している期間を考えれば、実際に、この延長登録制度を利用する場合はあまり無いのかもしれませんが、それでも、利用することになった場合には、金銭的・手続的負担増は、多大です。
 意地悪な見方をすれば、特許庁としては、審査を遅らせた方が、延長登録制度の利用が増えて(仕事が増えて)、印紙代が「儲かる」という見方さえできてしまいます。 (そういったことは意図していないとは思いますが。。)

・審査遅延による期間の救済については、米国の特許期間調整制度(Patent Term Adjustment)にならった制度(延長期間を自動的に計算し適用してくれる)の方が、ユーザーフレンドリーであり、望ましい様に思います。

以上

2017年1月13日 (金)

EPO/「本質的に生物学的な方法によって生産された植物」の審査・異議手続の停止決定 ~拡大審判部「ブロッコリ事件II」 「トマト事件II」 その後

2017年になりました。今年もよろしくお願いいたします。

20160112plce


欧州特許庁(EPO)は、2016年12月12日付のニュースリリース(下記)で、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法(essentially biological processes)によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続を停止する決定をしたと、公表しました。
 これにより当面の間、「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続が停止されることになります。

(参考/EPOのwebページ)
EPO stays proceedings in certain biotechnology cases
http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20161212.html


[コメント]

 今回のEPOの決定は、2016年11月に欧州委員会より出されたEUバイオ指令の解釈に関する通知が出された結果、2015年3月に出されていた拡大審判部による審決「ブロッコリ事件II」(G2/13)「トマト事件II」(G2/12)による判断とで、一見すると相反するような状況が生じたため、整合や交通整理が必要となり、EPOにおいて今後の審査や異議審理において明確な指針を示す必要が生じたためと思われます。「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関するEPOとしての取扱いをきめるまで、当面の間、このような案件の審査および異議申立手続が停止されるのだと思われます。

 これまでの状況・経緯を整理しておきたいと思います。
以下の目次:
(1) 前提~EPO第53条(b)およびEU理事会指令98/44/EC(バイオ指令)
(2) 「ブロッコリ事件II」(G2/13)と「トマト事件II」(G2/12) (2015年3月25日 拡大審判部)
(3) 「ブロッコリ事件III」(T0083/05)と「トマト事件III」(T1242/06)  (2015年9月10日/12月8日 技術審判部(審決の公表は2016年9月))
(4) EUバイオ指令の解釈に関する通知 (2016年11月3日/欧州委員会)
(5) EPOによる今回の決定(2016年12月12日/EPOニュースリリース)



<これまでの経緯など>


(1) 前提~EPO第53条(b)およびEU理事会指令98/44/EC(バイオ指令)

 EPC第53条(b)では、「植物品種」と、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に関する発明については、特許しない規定されています。
 ここでいう「植物の生産の本質的に生物学的な方法」とは、交配や選別といった従来的な手法を意味しているとされていました。

 また、バイオテクノロジー発明の法的保護に関する1998年7月6日の欧州議会及び理事会指令98/44/EC(以下「バイオ指令」)では、植物又は動物の生産方法として、交配や選別といった「本質的に生物学的な方法」それ自体は特許性を認めない旨規定されています。

 しかし、「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物(「本質的に生物学的な方法」というプロセスで特定された物(プロダクト・バイ・プロセスで特定された物)(物/products))自体の特許性については明示規定がなく、法的に不安定であることが指摘されていました。

(参考)
EUバイオ指令:
DIRECTIVE 98/44/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 6 July 1998 on the legal protection of biotechnological inventions
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:31998L0044

(和訳) 欧州共同体 生物工学発明に関する指令
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/ec/dpcb/mokuji.htm

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(2) 「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」 (2015年3月25日 拡大審判部)


 欧州特許庁拡大審判部は、いわゆる「ブロッコリ事件II」(G2/13)および「トマト事件II」(G2/12)の審決において、プロダクト・バイ・プロセスクレームにより特定された植物や、果実、植物材料、それ自体、すなわち「本質的に生物学的な方法」により生産された「物」自体は、EPC第53条(b)における「本質的に生物学的な方法」には該当しない、として、特許性を認めることとなる判断を示していました。

 このため、「本質的に生物学的な方法」自体には特許性は認められないものの、「本質的に生物学的な方法」により生産された「物」として、プロダクト・バイ・プロセスクレームに書き換えれば、特許性が認められるとも解釈できることから、クレーム記載の仕方によっては、事実上、「品種」について保護が受けられるのでは、との考えが成り立ち、植物品種保護との境界がむしろ不明確となるという状況が生じていました。

(参考/EPOのwebページ)
G 0002/13 of 25.3.2015(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/g130002ex1.html#q%22G%200002%2F13%22

G 0002/12 of 25.3.2015(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/g120002ex1.html#q%22G%200002%2F12%22


(参考/本ブログの過去記事)

2015年4月 3日 (金)
EPO拡大審判部「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」の審決 -植物や植物部分の欧州での特許の可能性広がる(審決G2/12、G2/13)

http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/04/index.html#entry-82157026




(3) 「ブロッコリ事件III」(T0083/05)と「トマト事件III」(T1242/06)  (2015年9月10日/12月8日 技術審判部(審決の公表は2016年9月))


 上記の「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」での拡大審判部より示された判断に基づき、各事件について技術審判部がそれぞれについて容認する判断を示しました。

(参考/EPOのwebページ)
T 0083/05 (Broccoli III/PLANT BIOSCIENCE) of 10.9.2015(審決)

http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/t050083eu1.html


T 1242/06 (Tomatoes III/STATE OF ISRAEL) of 8.12.2015
(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/t061242eu3.html#q




(4) EUバイオ指令の解釈に関する通知 (2016年11月3日/欧州委員会)


 このような状況から、欧州議会は、2015年12月に、「本質的に生物学的な方法」によって得られた「物」に関する特許適格性の判断について、バイオ指令の解釈を明確にするよう欧州委員会に求める決議を採択し、これをうけて、欧州委員会によるEUバイオ指令の解釈に関する通知が2016年11月3日に公表されました。

 通知によれば、

- バイオ指令が採択された際の立法者の意図に鑑み、「本質的に生物学的な方法」によって生産された「物」それ自体も特許対象外である


とする解釈が示されました。なお、この通知自体には法的拘束力はない、とされています。

(参考/EUのwebページ)
(3 November 2016)
Notice of the European Commission
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:JOC_2016_411_R_0003&from=EN


(参考/JETROのwebページ)

2016年11月10日 欧州委員会、欧州連合(EU)バイオ指令の解釈に関する通知を公表
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/europe/2016/20161110.pdf


→ [コメント]

 この結果、EUバイオ指令の解釈では、『「本質的に生物学的な方法」によって生産された「物」それ自体』は、特許対象外とされる一方、ブロッコリIIやトマトIIの拡大審判部の判断では、その『「物」それ自体』は、「本質的に生物学的な方法」には該当しないとして、特許性を認めると解される判断をしめしていたことから、一見すると相反するような立場が示されている状況となりました。ただし、EPOよりもEUの判断の方が上位のものであるため、EPOの審査においては、EPO拡大審判部の判断とEUバイオ指令の解釈とで、整合性をとった落とし所を見出してそれを新たな判断基準とするのか、といったように、EU指令の解釈を踏襲しつつ、何らかの交通整理行っていくのだと思います。
 このため、EPOとしての方針が固まるまで、審査を一時中断するとする下記の決定が今回なされたといえそうです。


 そう遠くない時期に、EPOとしての判断基準が示され、審査等が再開されるはずです。




(5) EPOによる今回の決定(2016年12月12日/EPOニュースリリース)

EPOのニュースリリースによれば、

・EPOはこれまで、EUバイオ指令を、欧州特許条約(EPC)に適用する運用を行っている、

・「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物に関する規定は、EPCにはみられない、

・欧州委員会が公表した通知
(*管理人注:上記(4)の通知)の解釈に加盟国は従う必要があることから、EPOとしては欧州委員会の判断を導入することになるだろう

とのことです。

 このため、今回、公表された決定の通り、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続を停止することとされています。

(参考/EPOのwebページ)
(12 Dec. 2016)
EPO stays proceedings in certain biotechnology cases
http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20161212.html

(24 November 2016)
Notice from the European Patent Office dated 24 November 2016 concerning the staying of proceedings due to the Commission Notice on certain articles of Directive 98/44/EC of the European Parliament and of the Council of 6 July 1998 on the legal protection of biotechnological inventions
http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/information-epo/archive/20161212.html

以上

2016年7月20日 (水)

ノンアルコールビールの特許侵害訴訟(控訴審)で和解成立

ノンアルコールビールに関する特許を侵害されたとして、S社が、A社の主力商品「ドライゼロ」の製造や販売の差し止めを求めた訴訟の控訴審において、20日に和解が成立したようです。


今回の事件を簡単に整理しますと下記の通りでした。


2015年1月  東京地裁に提訴(第一審)

        S社が、自社の特許(特許第5382754号(請求項1は下記))を侵害されたとして、A社のノンアルコールビール製品「ドライゼロ」の製造や販売の差し止めを求める訴訟を提起した。

    ・特許第5382754号 「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」
      【請求項1】(
訂正後
 エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下であり、糖質の含量が0.5g/100ml以下である、前記飲料。


     ・本ブログ記事

      2015年3月10日 ノンアルコールビール風味飲料で特許侵害訴訟提訴(サントリーとアサヒ)
      http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/03/index.html#entry-81984119


2015年10月29日  第一審の判決言渡し


      結論(主文):
  原告の請求をいずれも棄却する。 
      理由の概要:  特許が進歩性欠如により無効であるとして、原告の請求を認めなかった。
         ・本件発明は、公然実施発明1(オールフリー)及び公然実施発明2(ダブルゼロ)に基づいて容易に想到することがができたから、本件発明は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。
         ・よって、原告は被告に対して本件特許権を行使することができないから(特許法104条の3第1項)、・・、原告の請求はいずれも理由がない。よって,原告の請求をいずれも棄却する・・。

        ・平成27年10月29日言渡 平成27(ワ)1025  特許権侵害差止請求事件  東京地方裁判所

         http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/436/085436_hanrei.pdf


        ・2015/10/30 日経新聞web
        「ノンアル訴訟、サントリーの特許「無効」 東京地裁判決」

         http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H7G_Z21C15A0EA2000/


        ・本ブログ記事
         2015年10月31日  久しぶりの更新になりました
         http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/10/index.html#entry-83763460



その後、控訴審へ


2016年4月  A社が、S社の特許の無効審判を特許庁に請求。



2016年7月20日  日経新聞web、

         「サントリーとアサヒ、ノンアルビール特許訴訟で和解」

             http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20H1Y_Q6A720C1MM0000/?dg=1&nf=1

       記事によれば、

       ・20日に知的財産高裁で、控訴審の和解協議があり、和解が成立した。
       ・(一審で敗訴した)S社は、控訴を取り下げる。
       ・A社は、S社の特許に対する無効審判請求を取り下げる。
       ・問題となった製品「ドライゼロ」を含む両社の各ノンアルコールビール
製品の製造・販売を、両社はこれまで通り続ける。
       ・その他和解の内容(条件)は非公表。



[コメント]

 ・第一審では、S社の特許が無効とされ、特許権の行使は認められず、いわばA社の完勝の雰囲気でしたが、控訴審の和解の内容をみると、特許無効審判も取り下げられて維持されることになり、第一審で寄り切られる寸前までいったところから大分、S社の方ががんばって戻した印象があります。

 ・本件は、充足論はほぼ争う余地は無いようでしたので、特許の無効論の正否が判断の分かれ目となっていたと思われます。第一審では、特許「無効」との判断でした が、控訴審では、そのままの判断とはならず、知財高裁の判断(心証)は微妙だったのかもしれません。第一審での無効理由が、(食品分野での)公然実施に基づく進歩性という、比較的珍しい判断理由だったので、その帰趨に(個人的には)興味がありましたが、(残念ながら)その結論はでませんでした。

 ・訴訟を継続する意味合いという観点からみると、今回の訴訟が起こってから、問題となった製品は設計変更して、特許の範囲外になっている可能性が高く(そもそも2014年にした製品リニューアル以降のものが特許抵触で問題となっていたので、回避は簡単と思われます)、差し止め請求は、既にできない状況になっていた可能性が高いと思われます。

 ・また、損害賠償にしても、製品リニューアルの2014年9月から、第一審提訴の2015年1月辺りまでの製品が対象となると考えると、それほどの損害賠償額にはならない可能性があります。

 ・よって、判決という結論をもらう意義が、すでに、大分、薄らいでしまっていたのかもしれません。

 ・日経新聞の上記記事によれば、判決期日も既に定められていた上での和解協議だったようです(8月3日)。業界的なことも考えると、2社だけで争って判決まで出すことまではせず、ひとまず矛を収めて、ということかもしれません。

以上

2016年6月27日 (月)

英国EU離脱、欧州特許&品種登録への影響

6月23日(現地時間)に、英国でEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が実施され、その結果、EU離脱支持が過半数を超え、英国のEU離脱が決定されました。

英国のEU離脱の国民投票の決定が、特許や品種登録に関してどのような影響があるか、現時点で確認したいと思います。



(1) 欧州特許、欧州単一特許、欧州統一特許裁判所への影響

欧州特許庁(EPO)は長官名で6月24日付けで下記のようなステートメントを公表しています。

http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20160624.html


UK Referendum – Statement of President Battistelli

24 June 2016

The Office underlines that the outcome of the referendum has no consequence on the membership of the UK to the European Patent Organisation, nor on the effect of the European Patents in the UK. Concerning the Unitary Patent and the Unified Patent Court, the Office expects that the UK and the participating Member States will find a solution as soon as possible which will allow a full implementation of these so-long awaited achievements
.

(出典:上記URL)


(管理人による仮和訳)


「英国の国民投票」 ~バティステリ欧州特許庁長官による声明
2016年6月24日
「欧州特許庁は、欧州特許機構における英国の加盟国の地位、および英国における欧州特許の効力に関して、今回の国民投票の結果は影響を及ぼさないことを強調する。欧州単一特許および統一特許裁判所に関しては、英国および参加国が、待望の成果を十分に実現できるようできるだけ速やかに解決策を見出すことを期待する。」



[コメント]

欧州特許の法的根拠は欧州特許条約(EPC)であり、EPC条約に各国が加盟しているか否かが問題であって、EUに加盟しているか否かとは関わりありません。このため、EPOの長官の声明もそれに沿って、EPCにおける加盟国の地位や、英国における欧州特許の効力については影響が無いことを明確に述べていると理解できます。

一方で、予定されている欧州単一特許や、統一特許裁判所の法的根拠は、EU規則です。EU規則はEUの加盟国を拘束するものであり、EUから離脱すればその制約は当然うけなくなります。このため、英国は、理屈の上からいえば、EUを離脱すれば、EU規則の枠外となり、欧州単一特許や、統一特許裁判所も関係無くなる可能性は十分あると言えます。ただし、現状、EUが今回の英国のEU離脱をどのように扱うかがまだ未確定であることから、EPOの長官の声明も、「解決策が見出されることを期待する」ということに止めていると思われます。

 もちろん、EUと英国がどのように今後、対応していくかの問題ですので、欧州単一特許や、統一特許裁判所に英国も含めて運用する可能性は否定できませんが、いずれにしても、欧州単一特許と統一特許裁判所に関する英国の立場については、今後の対応に注目する必要があるようです。



(2) 欧州共同体植物品種権(CPVR)への影響


欧州共同体品種庁(Community Plant Variety Office (CPVO))のWebサイトを見る限り、今日までの段階で何ら、公式は発表はありません。

http://www.cpvo.europa.eu/main/en/home



[コメント]

共同体植物品種権の法的根拠は、EU規則です。このため、英国のEU離脱後は、CPVO経由しての(英国でも有効な)EU品種権の取得ができなくなる可能性が十分にあると思われます(この場合、英国については、英国に出願して英国での育成者権を個別に取得する必要がでてくるかもしれません)。ただしこちらも、EUと英国がこの問題にどのように今後、対応していくかの問題ですので、今後の対応に注目する必要があるようです。


いずれにしても、英国のEU離脱問題は、知財の世界にも少なからず影響を及ぼしそうです。

以上

より以前の記事一覧