• ninjabarier
2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト

  • ブログ感想やコメント等、大歓迎です。ご連絡は、こちらにメールをお送りください。 詳細は上記のAbout(プロフィール)をクリックいただき、プロフィールページの写真下の●の欄をご参照下さい。

免責事項・著作権

  • このサイト(ブログ)に記載される内容は、できるだけ正確を期すよう注意していますが、多分に、書き手の個人的な意見や思い込み・誤解を含む可能性がありますことをご承知おきください。また、記載内容によって生じたいかなる損害に関しても一切の責任を負いかねますのでご了承願います。
  • 当サイトでは、著作権や外部情報(個人情報含む)の取扱いには充分注意しておりますが、お気づきの点等がありましたらお知らせください。またこのサイトで公開されているコンテンツの著作権は全て当サイト管理者に帰属します(外部からそのまま引用した資料を除く)。このサイトに掲載されている画像・テキスト等の無断転載はご遠慮下さい。
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

審決・判決・事例

2017年1月22日 (日)

知財高裁大合議判決(延長された特許権の効力)~判決言渡

20日(金)に、知的財産高等裁判所の大合議判決が出されました。
大合議判決としては11件目で、主要なポイントは、存続期間が延長された特許権の効力に関するものです。


20170121ume
(早くも、梅の花が咲いているのを見つけました)


備忘として、大合議事件の判決(言渡)に関連する公開事実のみメモを残します(判決内容についてのコメントはしていません)。

判決は、20日の14時から、東京高等裁判所合同庁舎の1階の101法廷(大きな法廷です)で開かれました。

設楽裁判長を含む5人の裁判官が入廷の後、報道機関による撮影時間があり、その後の判決の言渡がありました。

裁判長から、主文が述べられた後、判決要旨について、若干時間をとって言及があり、判決概要と、ポイント的なところのコメント(下記)が述べられました。

すなわち、
 ・本件は医薬品業界の関心が非常に高い事案であることを鑑みて、今回は判決もそのような状況を考慮してできるだけ丁寧に判断を示そうとしたこと、
 ・判決文中の、医薬品の実質同一の4類型は必ずしもすべての医薬品を網羅したものではないこと、
などです (言及のあったポイントは他にもありましたが省略します。また上記表現の正確性は保証できません)。

判決内容や、関連ニュース等については下記のとおりです。


● 知的財産高等裁判所 - 大合議事件(本件)
1.平成28年(ネ)第10046号 特許権侵害差止請求控訴事件

http://www.ip.courts.go.jp/hanrei/g_panel/index.html

- 判決の要旨
http://www.ip.courts.go.jp/vcms_lf/yosi_28ne10046.pdf

- 判決の全文
http://www.ip.courts.go.jp/vcms_lf/27wa12414.pdf


● 東和薬品HP

2017年1月20日 プレスリリース
オキサリプラチン点滴静注の特許権侵害差止請求訴訟 - 知的財産高等裁判所大合議判決勝訴のお知らせ
http://www.towayakuhin.co.jp/pdf/news170120.pdf



--(参考、ニュース記事)--

● 2017/1/20 日経新聞web
薬品の延長特許、「わずかな差異」なら侵害 知財高裁

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20H9T_Q7A120C1CR8000/

(記事抜粋)
特許の保護期間延長が認められた医薬品をめぐる訴訟で、知的財産高裁の大合議(裁判長・設楽隆一所長)は20日、「成分や分量、用法などにわずかな差異や形式的な差異しかない場合、実質的に同じ医薬品」と述べ、そうした医薬品の販売は延長された特許の侵害にあたるとする判断基準を初めて示した。
・・・・・・。
これまで延長特許が保護される範囲ははっきりせず、特許を持つ製薬会社と後発医薬品会社の訴訟が相次いだ。知財高裁が一定のルールを示したことで後発薬側の訴訟リスクを避けやすくなる。
・・・・・・。
20日の判決は、特許侵害を認めなかった一審・東京地裁判決を支持し、デビオ社の控訴を棄却した。設楽裁判長は判決理由で「延長特許の効力はわずかな差異や形式的な差異の製品にも及ぶ」と指摘。その上で東和薬品の製品には添加物が含まれ、「実質的に同じ物ではない」として効力は及ばないと結論づけた。
・・・・・・。

・・・・・・・。・・・・・・

● 2017/1/20 読売新聞
抗がん剤後発薬の特許侵害、認めず…知財高裁
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170120-OYT1T50085.html

● 2017/1/20 朝日新聞
ジュネリック抗がん剤「特許侵害ない」 知財高裁が基準
http://www.asahi.com/articles/ASK1P34Z2K1PUBQU00C.html

● 2017/1/20 TBS News (ニュース映像あり)
ジェネリックの抗がん剤、特許侵害認めず
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2964771.html

● 2017年1月20日 時事通信社
後発薬の特許侵害認めず=海外メーカー二審も敗訴―知財高裁
http://sp.m.jiji.com/generalnews/article/genre/social/id/1763405

以上

2017年1月13日 (金)

EPO/「本質的に生物学的な方法によって生産された植物」の審査・異議手続の停止決定 ~拡大審判部「ブロッコリ事件II」 「トマト事件II」 その後

2017年になりました。今年もよろしくお願いいたします。

20160112plce


欧州特許庁(EPO)は、2016年12月12日付のニュースリリース(下記)で、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法(essentially biological processes)によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続を停止する決定をしたと、公表しました。
 これにより当面の間、「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続が停止されることになります。

(参考/EPOのwebページ)
EPO stays proceedings in certain biotechnology cases
http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20161212.html


[コメント]

 今回のEPOの決定は、2016年11月に欧州委員会より出されたEUバイオ指令の解釈に関する通知が出された結果、2015年3月に出されていた拡大審判部による審決「ブロッコリ事件II」(G2/13)「トマト事件II」(G2/12)による判断とで、一見すると相反するような状況が生じたため、整合や交通整理が必要となり、EPOにおいて今後の審査や異議審理において明確な指針を示す必要が生じたためと思われます。「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関するEPOとしての取扱いをきめるまで、当面の間、このような案件の審査および異議申立手続が停止されるのだと思われます。

 これまでの状況・経緯を整理しておきたいと思います。
以下の目次:
(1) 前提~EPO第53条(b)およびEU理事会指令98/44/EC(バイオ指令)
(2) 「ブロッコリ事件II」(G2/13)と「トマト事件II」(G2/12) (2015年3月25日 拡大審判部)
(3) 「ブロッコリ事件III」(T0083/05)と「トマト事件III」(T1242/06)  (2015年9月10日/12月8日 技術審判部(審決の公表は2016年9月))
(4) EUバイオ指令の解釈に関する通知 (2016年11月3日/欧州委員会)
(5) EPOによる今回の決定(2016年12月12日/EPOニュースリリース)



<これまでの経緯など>


(1) 前提~EPO第53条(b)およびEU理事会指令98/44/EC(バイオ指令)

 EPC第53条(b)では、「植物品種」と、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に関する発明については、特許しない規定されています。
 ここでいう「植物の生産の本質的に生物学的な方法」とは、交配や選別といった従来的な手法を意味しているとされていました。

 また、バイオテクノロジー発明の法的保護に関する1998年7月6日の欧州議会及び理事会指令98/44/EC(以下「バイオ指令」)では、植物又は動物の生産方法として、交配や選別といった「本質的に生物学的な方法」それ自体は特許性を認めない旨規定されています。

 しかし、「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物(「本質的に生物学的な方法」というプロセスで特定された物(プロダクト・バイ・プロセスで特定された物)(物/products))自体の特許性については明示規定がなく、法的に不安定であることが指摘されていました。

(参考)
EUバイオ指令:
DIRECTIVE 98/44/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 6 July 1998 on the legal protection of biotechnological inventions
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:31998L0044

(和訳) 欧州共同体 生物工学発明に関する指令
https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/ec/dpcb/mokuji.htm

Broccolitomato_2


(2) 「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」 (2015年3月25日 拡大審判部)


 欧州特許庁拡大審判部は、いわゆる「ブロッコリ事件II」(G2/13)および「トマト事件II」(G2/12)の審決において、プロダクト・バイ・プロセスクレームにより特定された植物や、果実、植物材料、それ自体、すなわち「本質的に生物学的な方法」により生産された「物」自体は、EPC第53条(b)における「本質的に生物学的な方法」には該当しない、として、特許性を認めることとなる判断を示していました。

 このため、「本質的に生物学的な方法」自体には特許性は認められないものの、「本質的に生物学的な方法」により生産された「物」として、プロダクト・バイ・プロセスクレームに書き換えれば、特許性が認められるとも解釈できることから、クレーム記載の仕方によっては、事実上、「品種」について保護が受けられるのでは、との考えが成り立ち、植物品種保護との境界がむしろ不明確となるという状況が生じていました。

(参考/EPOのwebページ)
G 0002/13 of 25.3.2015(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/g130002ex1.html#q%22G%200002%2F13%22

G 0002/12 of 25.3.2015(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/g120002ex1.html#q%22G%200002%2F12%22


(参考/本ブログの過去記事)

2015年4月 3日 (金)
EPO拡大審判部「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」の審決 -植物や植物部分の欧州での特許の可能性広がる(審決G2/12、G2/13)

http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/04/index.html#entry-82157026




(3) 「ブロッコリ事件III」(T0083/05)と「トマト事件III」(T1242/06)  (2015年9月10日/12月8日 技術審判部(審決の公表は2016年9月))


 上記の「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」での拡大審判部より示された判断に基づき、各事件について技術審判部がそれぞれについて容認する判断を示しました。

(参考/EPOのwebページ)
T 0083/05 (Broccoli III/PLANT BIOSCIENCE) of 10.9.2015(審決)

http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/t050083eu1.html


T 1242/06 (Tomatoes III/STATE OF ISRAEL) of 8.12.2015
(審決)
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/t061242eu3.html#q




(4) EUバイオ指令の解釈に関する通知 (2016年11月3日/欧州委員会)


 このような状況から、欧州議会は、2015年12月に、「本質的に生物学的な方法」によって得られた「物」に関する特許適格性の判断について、バイオ指令の解釈を明確にするよう欧州委員会に求める決議を採択し、これをうけて、欧州委員会によるEUバイオ指令の解釈に関する通知が2016年11月3日に公表されました。

 通知によれば、

- バイオ指令が採択された際の立法者の意図に鑑み、「本質的に生物学的な方法」によって生産された「物」それ自体も特許対象外である


とする解釈が示されました。なお、この通知自体には法的拘束力はない、とされています。

(参考/EUのwebページ)
(3 November 2016)
Notice of the European Commission
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:JOC_2016_411_R_0003&from=EN


(参考/JETROのwebページ)

2016年11月10日 欧州委員会、欧州連合(EU)バイオ指令の解釈に関する通知を公表
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/europe/2016/20161110.pdf


→ [コメント]

 この結果、EUバイオ指令の解釈では、『「本質的に生物学的な方法」によって生産された「物」それ自体』は、特許対象外とされる一方、ブロッコリIIやトマトIIの拡大審判部の判断では、その『「物」それ自体』は、「本質的に生物学的な方法」には該当しないとして、特許性を認めると解される判断をしめしていたことから、一見すると相反するような立場が示されている状況となりました。ただし、EPOよりもEUの判断の方が上位のものであるため、EPOの審査においては、EPO拡大審判部の判断とEUバイオ指令の解釈とで、整合性をとった落とし所を見出してそれを新たな判断基準とするのか、といったように、EU指令の解釈を踏襲しつつ、何らかの交通整理行っていくのだと思います。
 このため、EPOとしての方針が固まるまで、審査を一時中断するとする下記の決定が今回なされたといえそうです。


 そう遠くない時期に、EPOとしての判断基準が示され、審査等が再開されるはずです。




(5) EPOによる今回の決定(2016年12月12日/EPOニュースリリース)

EPOのニュースリリースによれば、

・EPOはこれまで、EUバイオ指令を、欧州特許条約(EPC)に適用する運用を行っている、

・「本質的に生物学的な方法」によって生産された植物又は動物に関する規定は、EPCにはみられない、

・欧州委員会が公表した通知
(*管理人注:上記(4)の通知)の解釈に加盟国は従う必要があることから、EPOとしては欧州委員会の判断を導入することになるだろう

とのことです。

 このため、今回、公表された決定の通り、発明が交配や選別といった「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物」に関する案件の審査および異議申立手続を停止することとされています。

(参考/EPOのwebページ)
(12 Dec. 2016)
EPO stays proceedings in certain biotechnology cases
http://www.epo.org/news-issues/news/2016/20161212.html

(24 November 2016)
Notice from the European Patent Office dated 24 November 2016 concerning the staying of proceedings due to the Commission Notice on certain articles of Directive 98/44/EC of the European Parliament and of the Council of 6 July 1998 on the legal protection of biotechnological inventions
http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/information-epo/archive/20161212.html

以上

2016年11月24日 (木)

交配等の育種方法により得られる植物と、「不可能・非実際的事情」(審決例より)

今日(11/24)は、写真のように雪が降っています。11月に東京に初雪が降るのは54年ぶりということだそうです。

Hikaku2016

(写真の左が今日の写真で雪が降っています。左の写真は数日前の秋晴れの様子です)。

今回は、「交配等の育種方法により得られる植物」と、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの扱いについて、特許審決例での判断を参考に、確認していきたいと思います。


[1] 「交配等の育種方法により得られる植物」に関するクレーム

交配などの手段によって新たな植物品種について、特許化しようとすると、その植物品種自体をクレーム(特許請求の範囲)に記載したい場合、クレームの記載は、「交配等の育種方法により得られる植物」といった形式にならざるを得ない、といったことがしばしば起こるかと思います。

交配等の育種方法により得られる植物に関する発明のクレームは、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合)になります。


[2]プロダクト・バイ・プロセス・クレームと、審査におけるその取扱い

現在は、特許庁における審査においては、プロダクト・バイ・プロセス・クレームが記載されている場合、昨年2015年6月5日に言い渡された最高裁判決(平成24年(受)1204号、同2658号)の影響もあり、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確(特許法第36条第6項第2項違反)であるという拒絶理由を通知されることになっています。

ここで、「不可能・非実際的事情」とは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情をいうとされています。

したがって、プロダクト・バイ・プロセスの形式で記載された発明について、「不可能・非実際的事情」があると判断されれば、発明不明確(特許法第36条第6項第2項違反)には該当しないということになります(この点について明確に反論できれば、拒絶理由も解消することになります)。

そこで問題となるのが、「不可能・非実際的事情」があると判断されるのはどのような場合か、ということになります。

この点は、「審査ハンドブック」(特許庁)の2205項に、「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合の審査における「不可能・非実際的事情」についての判断」として、具体的に記載されています。

今回問題にしている「交配等の育種方法により得られる植物」がどう扱われるのか、について、今年9月末にその具体例として、審査ハンドブックの2205項に、今回ご紹介する審決が加えられましたので(ハンドブックには審決の詳細はありませんので)、ここで確認していきたいと思います。


[3]審決例


 (a) 事件の表示


 出願番号:  特願2009-163308号(特開2011-15648号公報)
 審判番号:  不服2014-10863号
 発明の名称: 「ダウクス属植物の育種方法、およびダウクス属植物」
 審決発行日: 2016年8月26日


 (b)特許されたクレーム(抜粋)


【請求項1】
 工程1-1 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物を、これとは異なるダウクス属植物である黒田五寸と交配させ、次世代を得る工程、
 工程1-2 該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培する工程、及び
 工程1-3 栽培後の該次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜する工程
を有し、
 さらに、工程1-3で選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって、前記特徴を固定することを特徴とする、栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物の育種方法。

【請求項2】 (省略)


【請求項3】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物とこれとは異なるダウクス属植物である黒田五寸との交配によって次世代を得、
 該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られる、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物


【請求項4】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物と、これとは異なるダウクス属植物である黒田五寸との交配によって得られる、
 栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物。

【請求項5】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物とこれとは異なるダウクス属植物である黒田五寸と交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られ、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物を、
 これとは異なるダウクス属植物と交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られる、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物。


【請求項6】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物と、これとは異なるダウクス属植物である黒田五寸との交配によって得られ、かつ栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物と、
 これとは異なるダウクス属植物との交配によって得られる、
 栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物。


【請求項7】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物。


【請求項8】
 請求項3〜7のいずれか1つに記載のダウクス属植物の一部。


【請求項9】 (省略/採種方法クレーム)

【請求項10】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物とこれとは異なるダウクス属植物である黒田五寸とを交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られ、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物を、
 これとは異なるダウクス属植物と交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られ、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物を、雄性不稔のダウクス属植物と交配させて得られる、雑種第一代のダウクス属植物の種子。

【請求項11】
 請求項10に記載のダウクス属植物の種子の栽培によって得られたダウクス属植物又はその一部。



 (c)審決(抜粋)

3 拒絶理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
 事案に鑑み、まず、請求項4について検討する。
 拒絶理由2に対して、請求人は、植物交配種の遺伝子を解析することは膨大な時間と労力を要するうえ、たとえ解析したとしても、「栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い」という特性には複数種類の遺伝子が関与していることが想定され、出願時において該遺伝子を特定することは困難を極めることであったから、請求項4記載の「ダウクス属植物」をその構造又は特性により直接特定することには不可能・非実際的事情が存在する旨主張する。
 上記主張について検討するに、植物の交配育種の技術分野においては、親系統を交配して得た後代の中から選抜された特定の性質を示す個体をさらに交配し、当該性質を遺伝的に固定するのが常套手段であるところ、当該性質の基になる遺伝子を特定するには、多数の交配種それぞれの遺伝子を解析するという、膨大な時間及び労力が必要であると認められる。そのうえ、植物の特性には複数種類の遺伝子が関与していることが通常であり、本願発明のように、親系統の両方が所定の性質を有していない場合にはなおさら複数遺伝子間の複雑な相互関係が想定され、その解析には大きな困難性が予測される。よって、請求人が主張する上記事情は、出願時において物の構造を解析することが技術的に不可能であった場合に該当し、最判平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号および同2658号に判示された「不可能・非実際的事情」が存在すると認められ、請求項4に係る発明は特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえる
 また、同様の理由から、請求項3、5、6、8、10及び11に係る発明も「発明が明確であること」という要件に適合するといえる。
 したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件に適合すると認められる。」


【コメント】

・交配等による育種方法により得られた植物については、審決の判断で示されたような観点は当てはまることが多いと思われるので、同様の発明を権利化する際に、「審決の判断」はとても参考になりそう。

・特許庁から、「交配等による育種方法により得られた植物」について、プロダクト・バイ・プロセス・クレームとして扱ってくれることが(一具体例ではあっても)明確に示されたことは、今後の実務において一つの安心材料になりうる。

・ただし、出願時において植物に「不可能・非実際的事情」があったことの主張は、育種技術の場合、「再現性」、「反復可能性」の問題を含む実施可能要件(特許法第36条第4項第1号違反)の方に問題が生じかねないので、慎重に(熟考して)主張する必要がありそう。
(なお、最後の点は、この審決でも別途指摘されているところなので、機会があればブログでもとりあつかいたいと思います)。

<参考>
●特許庁HP、「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査の取扱いについて」
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C151125.htm

●特許庁HP、審査ハンドブックの「2205」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/handbook_shinsa_h27/02.pdf#page=32

以上

2016年11月18日 (金)

知財高裁 「新しい大合議事件の指定について」

久しぶりの更新で申し訳ありません。

今回は備忘用として、情報アップのみで失礼します。


● 知財高裁HPより

  「平成28年11月17日  新しい大合議事件の指定について」

   http://www.ip.courts.go.jp/


朝日新聞HP,  2016年11月18日
  「抗がん剤の特許めぐり「大合議」で判断へ 知財高裁」

 http://www.asahi.com/articles/ASJCL2JS3JCLUBQU004.html


だいぶ更新が滞っていますが、更新を近く再開していきたいと思います。

以上

2016年7月20日 (水)

ノンアルコールビールの特許侵害訴訟(控訴審)で和解成立

ノンアルコールビールに関する特許を侵害されたとして、S社が、A社の主力商品「ドライゼロ」の製造や販売の差し止めを求めた訴訟の控訴審において、20日に和解が成立したようです。


今回の事件を簡単に整理しますと下記の通りでした。


2015年1月  東京地裁に提訴(第一審)

        S社が、自社の特許(特許第5382754号(請求項1は下記))を侵害されたとして、A社のノンアルコールビール製品「ドライゼロ」の製造や販売の差し止めを求める訴訟を提起した。

    ・特許第5382754号 「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」
      【請求項1】(
訂正後
 エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下であり、糖質の含量が0.5g/100ml以下である、前記飲料。


     ・本ブログ記事

      2015年3月10日 ノンアルコールビール風味飲料で特許侵害訴訟提訴(サントリーとアサヒ)
      http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/03/index.html#entry-81984119


2015年10月29日  第一審の判決言渡し


      結論(主文):
  原告の請求をいずれも棄却する。 
      理由の概要:  特許が進歩性欠如により無効であるとして、原告の請求を認めなかった。
         ・本件発明は、公然実施発明1(オールフリー)及び公然実施発明2(ダブルゼロ)に基づいて容易に想到することがができたから、本件発明は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。
         ・よって、原告は被告に対して本件特許権を行使することができないから(特許法104条の3第1項)、・・、原告の請求はいずれも理由がない。よって,原告の請求をいずれも棄却する・・。

        ・平成27年10月29日言渡 平成27(ワ)1025  特許権侵害差止請求事件  東京地方裁判所

         http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/436/085436_hanrei.pdf


        ・2015/10/30 日経新聞web
        「ノンアル訴訟、サントリーの特許「無効」 東京地裁判決」

         http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H7G_Z21C15A0EA2000/


        ・本ブログ記事
         2015年10月31日  久しぶりの更新になりました
         http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/10/index.html#entry-83763460



その後、控訴審へ


2016年4月  A社が、S社の特許の無効審判を特許庁に請求。



2016年7月20日  日経新聞web、

         「サントリーとアサヒ、ノンアルビール特許訴訟で和解」

             http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG20H1Y_Q6A720C1MM0000/?dg=1&nf=1

       記事によれば、

       ・20日に知的財産高裁で、控訴審の和解協議があり、和解が成立した。
       ・(一審で敗訴した)S社は、控訴を取り下げる。
       ・A社は、S社の特許に対する無効審判請求を取り下げる。
       ・問題となった製品「ドライゼロ」を含む両社の各ノンアルコールビール
製品の製造・販売を、両社はこれまで通り続ける。
       ・その他和解の内容(条件)は非公表。



[コメント]

 ・第一審では、S社の特許が無効とされ、特許権の行使は認められず、いわばA社の完勝の雰囲気でしたが、控訴審の和解の内容をみると、特許無効審判も取り下げられて維持されることになり、第一審で寄り切られる寸前までいったところから大分、S社の方ががんばって戻した印象があります。

 ・本件は、充足論はほぼ争う余地は無いようでしたので、特許の無効論の正否が判断の分かれ目となっていたと思われます。第一審では、特許「無効」との判断でした が、控訴審では、そのままの判断とはならず、知財高裁の判断(心証)は微妙だったのかもしれません。第一審での無効理由が、(食品分野での)公然実施に基づく進歩性という、比較的珍しい判断理由だったので、その帰趨に(個人的には)興味がありましたが、(残念ながら)その結論はでませんでした。

 ・訴訟を継続する意味合いという観点からみると、今回の訴訟が起こってから、問題となった製品は設計変更して、特許の範囲外になっている可能性が高く(そもそも2014年にした製品リニューアル以降のものが特許抵触で問題となっていたので、回避は簡単と思われます)、差し止め請求は、既にできない状況になっていた可能性が高いと思われます。

 ・また、損害賠償にしても、製品リニューアルの2014年9月から、第一審提訴の2015年1月辺りまでの製品が対象となると考えると、それほどの損害賠償額にはならない可能性があります。

 ・よって、判決という結論をもらう意義が、すでに、大分、薄らいでしまっていたのかもしれません。

 ・日経新聞の上記記事によれば、判決期日も既に定められていた上での和解協議だったようです(8月3日)。業界的なことも考えると、2社だけで争って判決まで出すことまではせず、ひとまず矛を収めて、ということかもしれません。

以上

2015年10月31日 (土)

久しぶりの更新になりました

久しぶりの更新になってしまいました。個人的なイベントもおわったので、以後は通常モードに戻して更新を続けていきたいと思います。

201510airtky
(羽田上空より川崎方面を撮影、左の奥の方に富士山が見えます、2015年10月)

ところで、ノンアルコールビール風味飲料の特許侵害事件(サントリーvsアサヒ)について、東京地裁での判断が出たようです。本ブログの3月11日の記事(下記)でもかきましたが、提訴が今年の1月だったようなので、第一審の結論はだいぶ早く出たと言えそうです。

結論は、被告アサヒの製品は、サントリー特許のクレームの要件を充足するものの、サントリー特許はそもそも、進歩性欠如したものであり、よって特許は無効であるとするもの(のよう)でした。本件特許は、いわゆるパラメータ特許ですので、どのように進歩性欠如で無効との結論になったのか、判決が入手でき次第、良く検討してみようと思います。

なお、本件特許について、地裁では無効論が議論になりましたが、J Plat-patで調べた限り、特許庁では、特許無効審判の請求は、いまのところ為されていないようです。

原告であるサントリーは控訴するようですので、次の知財高裁での控訴審でどのようになるか、今後も注目です。

---
・本ブログ記事(3月11日):
「ノンアルコールビール風味飲料で特許侵害訴訟提訴(サントリーとアサヒ)」

http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/03/index.html#entry-81984119

(参考)
・読売新聞web、2015年10月29日
「ノンアル特許、容易に考えつく…サントリー敗訴」

http://www.yomiuri.co.jp/national/20151029-OYT1T50120.html
(記事抜粋)
 アサヒビール(東京都)のノンアルコールビール「ドライゼロ」に自社の特許を侵害されたとして、サントリーホールディングス(大阪市)が製造や販売の差し止めなどを求めた訴訟で、東京地裁は29日、請求を棄却する判決を言い渡した。
 長谷川浩二裁判長は、「サントリーの特許は同業者なら容易に考えつくもので、無効にすべきだ」と述べた。・・・。
 ・・・・・。・・・・・。

・日経新聞web、2015/10/30
 「ノンアル訴訟、サントリーの特許「無効」 東京地裁判決」 
 
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H7G_Z21C15A0EA2000/


以上

2015年7月29日 (水)

【品種登録】 H27 (2015).6.24言渡 知財高裁 平成27年(ネ) 10002号育成者権侵害差止等請求控訴事件

 育成者侵害事件に関する知財高裁の判決が、2015年6月24日判決言渡されましたので、ご紹介します。

【平成27年6月24日判決言渡(知財高裁 平成27年(ネ)第10002号 -育成者権侵害差止等請求控訴事件)] ~ 「なめこ」事件(控訴審事件)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/183/085183_hanrei.pdf

これは、以前*、紹介しました「なめこ」の品種登録に基づく育成者侵害事件の東京地裁の判断の控訴審の判決です。(*本記事末尾に参考資料欄あり)


【ポイント】
種苗法における「現物主義」の考え方・実務への適用に関して、非常に示唆に富む判決です。

【事案の概要】
 原審事件(東京地裁平成21年(ワ)47799,平成25年(ワ)21905)は、「なめこ」の登録品種(下記)について育成者権を有する原告(本件の控訴人)が、被告ら(被告組合A及び被告会社B)(本件の被控訴人ら)は、原告の許諾の範囲を超えて又は原告の許諾なく、本件登録品種又はこれと重要な形質に係る特性により明確に区別されない「なめこ」の種苗の生産等をすることにより、本件育成者権を侵害してきたものであるとして、種苗の生産等の差止め、種苗の廃棄、信用回復の措置としての謝罪広告、並びに不法行為(育成者権の侵害)に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案であった。
 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人がこれを不服として控訴した。
 本件は、上記原審の控訴審事件である。

   品種登録の番号    第9637号
   登録年月日      平成13年11月22日
   出願年月日      平成9年12月24日
   農林水産植物の種類  なめこ
   登録品種の名称    KX-N006号 (出願時の名称は「東北N006号」)
   品種登録データベースのリンク: http://www.hinsyu.maff.go.jp

Nameko9637_2

 (写真出典: 品種登録データベースより)



【判旨】
<主文>

 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。

<裁判所の判断>
『 当裁判所も,争点1に関し,被控訴人組合が控訴人の許諾の範囲を超えて,また,被控訴人会社が控訴人の許諾なく,本件登録品種又はこれと特性により明確に区別されないなめこの種苗の生産等をしたと認めることはできないから,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

 1 育成者権侵害の存否に関する判断基準について
  ・・・・。
 そして,法は,育成者権の及ぶ範囲について「品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種」を「業として利用する権利を専有する」と定める(法20条1項)ところ,ここに,「登録品種と特性により明確に区別されない品種」とは,登録品種と特性に差はあるものの,品種登録の要件としての区別性が認められる程度の明確な差がないものをいう。具体的には,登録品種との特性差が各形質毎に設定される階級値(特性を階級的に分類した数値)の範囲内にとどまる品種は,ここにいう「登録品種と特性により明確に区別されない品種」に該当する場合が多いと解されるし,特性差が上記の範囲内にとどまらないとしても,相違する項目やその程度,植物体の種類,性質等を総合的に考慮して,「登録品種と特性により明確に区別されない品種」への該当性を肯定することができる場合もあるというべきである。
 ところで,品種登録の際に,品種登録簿の特性記録部(特性表)に記載される品種の特性(法18条2項4号)は,登録品種の特徴を数値化して表すものと理解することができるが,品種登録制度が植物を対象とするものであることから,特性の評価方法等の研究が進展したとしても,栽培条件等により影響を受ける不安定な部分が残ることなどからすると,栽培された品種について外観等の特徴を数値化することには限界が残らざるを得ないものということができる
 このような,品種登録制度の保護対象が「品種」という植物体の集団であること,この植物の特性を数値化して評価することの方法的限界等を考慮するならば,品種登録簿の特性表に記載された品種の特性は,審査において確認された登録品種の主要な特徴を相当程度表すものということができるものの,育成者権の範囲を直接的に定めるものということはできず育成者権の効力が及ぶ品種であるか否かを判定するためには,最終的には,植物体自体を比較して,侵害が疑われる品種が,登録品種とその特性により明確に区別されないものであるかどうかを検討する(現物主義)必要があるというべきである。 
     ・・・・・・・』
  (判決文中、・・は管理人による省略を意味する)


→(コメント)
 ・「育成者権の効力の及ぶ範囲」について、裁判所の考え方が示されている。
 ・品種登録簿の特性記録部(特性表)に記載される品種の特性について、特許法のようにこれをクレームと同様に考えて、特性表が育成者権の範囲を直接定めるという立場があるが(「特性表主義」または「クレーム主義」)、裁判所は「審査において確認された登録品種の主要な特徴を相当程度表すものということができる」と一定の評価をしつつも、「育成者権の範囲を直接的に定めるものということはでき」ないとして、明確にその立場(主義)を否定している。
 ・裁判所は、「育成者権の効力が及ぶ品種であるか否かを判定するためには,最終的には,植物体自体を比較して,侵害が疑われる品種が,登録品種とその特性により明確に区別されないものであるかどうかを検討する必要があるというべき」として、「現物主義」をとる必要性を明確に認めている。



『 2 本件鑑定嘱託の結果について
 ・・・・・・
 (2)  鑑定嘱託の結果の採否について
 ア K1株と,K2株ないしG株との特性上の異同について
  ・・・・・・
 よって,本件鑑定書に記載の鑑定嘱託の結果に基づいて,K1株(種苗管理センターに寄託された本件登録品種の種菌株)と,その余の2つの供試菌株であるK2株(控訴人が本件登録品種の種菌として保有していたと主張する種菌株)ないしG株(被控訴人会社の販売するなめこから抽出した種菌株)とが「特性により明確に区別されない」と認めることはできない
 イ K2株とG株との特性上の異同について
 ・・・・・・・・・
 以上の点を総合的に考慮すると,K2株とG株とは,両者の特性差が各形質毎に設定される階級値の範囲内に概ねとどまっているということができるから,両者は,「特性により明確に区別されない」と認めることは可能であるというべきである。したがって,何らかの形でK1株とK2株の同一性を立証することができるならば,K1株(本件登録品種)とG株も「特性により明確に区別されない」と認める余地が生じることになる。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
 4 控訴人のその余の主張について
 (1) ・・・・・
 しかしながら,品種登録簿の特性表に記載された品種の特性は,登録品種の主要な特徴を相当程度表しているものの,育成者権の範囲を直接的に定めるものということはできないのは前記のとおりであるところ,本件においては,K1株に基づくなめこと,K2株に基づくなめことを,現物主義の立場から十分に比較することができない事情が存することは既に説示したとおり(前記2(2)ア)である。
 ・・・・・・・・。
 さらに,本件特性表に記載された本件登録品種の特性と,本件鑑定書に記載のK2株の栽培特性のデータとを念のため比較しても,両者は,菌糸の生長に関する温度特性のうち,生長最適温度に相違があるほか,5℃,10℃,15℃及び30℃における生長速度において,それぞれ階級値を超える相違があり,最適温度における子実体発生までの期間については,本件試験においてはこれに相当する項目の測定結果はなく,比較を行うことができない。これらの点を併せ考えると,控訴人の指摘する,成熟期の菌傘の直径と菌柄の長さの比率や菌傘の肉質等のみから,両者が,その特性において明確に区別することができないと認めることはできない
・・・・・・・・
 (2) なお,控訴人の主張には,G株が本件登録品種の従属品種に当たる旨の部分もある
 この点,従属品種とは,「登録品種の主たる特性を保持しつつ特性の一部を変化させて育成され,かつ,特性により当該登録品種と明確に区別できる品種」(法20条2項1号),すなわち,親となる登録品種に主として由来し,そのわずかな特性を変更して育成された品種をいう。しかるに,本件では,G株が本件登録品種に主として由来することを裏付けるに足りる証拠はないから,これが本件登録品種の従属品種に当たると認めることはできず,この点に関する控訴人の上記主張は,採用することができない
 ・・・・・。』


→(コメント)

 ここで登場する株を整理すると下記の通りです。

K1株: 品種登録時に、種苗管理センターに寄託され、維持されてきた株。
     少なくとも寄託された時点(品種登録時)において、登録原簿に記載された特性を維持していたと考えられるが、現時点では、鑑定の結果、当時の特性を維持していることは確認できなかった。


K2株: 控訴人(原告、育成者権者)が維持し、保持している株であって、控訴人が本件登録品種の現物であると主張する株
  (ただし、登録品種であることの立証はできていない)


G株: イ号品種の株、すなわち、被控訴人らが販売等していた株


・栽培試験では、K2株とG株との比較では、外観上、特性上の相違は認められなかった。

・登録されたK1株とK2株は、同一菌株であるはずだが、本試験結果では大きく栽培特性が異なる結果となった。

・登録簿の特性表の特性と、K2株の鑑定の際に得られた特性データとの比較に関しては、相違もあり、足りない測定項目もあり、比較ができない。

 これらの状況をまとめると下記の図のとおり。

H270624hanketumoshikizu


(本ブログ管理人作成)


・なお控訴人(育成者権者)は、G株が、本件登録品種自体についての効力範囲、すなわち、本件登録品種と「特性により明確に区別されない」ものという、上記までの主張に加えて、G株が従属品種である(種苗法20条第2項1号)との主張もしている。この主張
については、従属品種であることを裏付けるに足る証拠がない、として退けられている。

  従属品種であるとする予備的な主張をしている点は興味深いところです。また裁判所が、従属品種であるか否かの一応の判断を示した例としても、詳しく検討してみたいところです。

  ただし、従属品種であるためには、

  (i) 親となる「登録品種の主たる特性を保持」していること、
  (ii) 親となる登録品種に主として由来しているものであって、そのわずかな特性を変更して育成された品種であること、
の2つの要件が必要になるといえます(今回、裁判所も示しているところです)。
つまり、特性の有無という客観的な事実に加えて、親である登録品種に由来したものであるかという事実関係の問題の立証(つまり上記(ii)の点の前半の立証)も必要になるため、従属品種であることの立証には、別の難しい問題が出てきそうです。



【感想】

・本事案では、準公的機関である種苗管理センターに寄託されたK1株が、変異を起こしてしまっていた点で、控訴人(育成者権者)にとって不幸であった。

・仮に、寄託された株が、大きな変異を起こさず維持されていたならば、大分、展開はかわっていたかもしれない。

・その意味で、登録された際に、種苗管理センターに寄託しておくことは、重要であろうし、また寄託されている株の状態を定期的に確認するなどのケアは必要であろう。

・また、本事案では、裁判所は、K2株とG株については、「特性により明確に区別されない」と認めることは可能としてくれていることから、K2株について、登録簿の特性表と同様の試験項目・条件で再試験を行い、その結果(特性)が特性表の特性と「区別できない」とされたならば、K2株からの侵害立証もできていたかもしれない。

・再試験や、試験を伴う鑑定を、裁判に際して行う際には、登録時の特性表の測定条件などきちんと把握しておくことが重要であろう。


・今回の事案から言えることとしては、
 育成者権者としては、
   (1) 侵害事案の生ずる可能性を考慮して、(準)公的機関に、登録品種の種菌や種子、株などを寄託しておくべき。また、
寄託したものについて、定期的に状態を確認すべき。
   (2) 手元で維持している株について、侵害の摘発を行う上では、それだけ維持してたのでは、不十分であることを認識しておくべき。

   (3) 登録簿に記載の特性と、手元に維持している株とが特性において違いが出てきていないか、という視点をもっておくべき。

     などなど でしょうか。

――――――――――
(参考)

* 以前の本ブログ記事:
http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/02/index.html#entry-81844306

* 原審:[平成26年11月28日判決(東京地裁 平成21年(ワ)第47799号、平成25年(ワ)第21905号 -育成者権侵害差止等請求事件)] ~ 「なめこ」事件

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/686/084686_hanrei.pdf

     以上 

2015年6月 5日 (金)

PBP(プロダクト・バイ・プロセス)クレームと最高裁判所

PBP(プロダクト・バイ・プロセス)クレームの解釈についての知財高裁の大合議判決(平成22年(ネ)第10043号)についての上告審で、最高裁による判断が示されました。

Saikousai

(最高裁判所-2015/6/5撮影)


●平成24(受)1204 特許権侵害差止請求事件
平成27年6月5日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 知的財産高等裁判所 
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/145/085145_hanrei.pdf

(判決抜粋)

主文
 原判決を破棄する。本件を知的財産高等裁判所に差し戻す
。」

 理由
・・・・・
・・・・・・
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。」

・・・・・

「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。」

・・・

物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その特許発明の技術的範囲は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して確定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の技術的範囲を確定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。」

なお、判決文には、二人の判事の「補足意見」が付されています。


(コメント)
 (簡単に目を通した範囲での)、私見です。
 従来の知財高裁の大合議判決では、原則として、プロダクト・バイ・プロセスクレームの技術的範囲の解釈について、そのクレームに記載された製造方法により製造された物に限定されるとしていました。その上で、「物の構造又は特性により特定することが不可能又は困難である」といった事情がある場合には、(例外的に、)製造方法に限定されず、物全般に及ぶとしていました。*

*因みに大合議判決では、前者を「真正のプロダクト・バイ・プロセスクレーム」、後者を「不真正のプロダクト・バイ・プロセスクレーム」と言っていました。

今回の最高裁の判断では、その「原則」と「例外」の関係を逆にしたいようです

つまり、原則として、プロダクト・バイ・プロセスクレームの技術的範囲は、クレームに記載された製造方法に限らず、その物として同一か否かで判断すべきであるとしています。

そして、そもそも、プロダクト・バイ・プロセスクレームは、特許法36条6項2号の明確性要件を満たすものでなければならず、その要件に適合するためには、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる」と解するとしています。

これはつまり、従来の判決にあったような「不真正」のプロダクト・バイ・プロセスクレームはそもそも、記載不備とされるべきものということのようです。プロダクト・バイ・プロセスクレームとは、いわゆる「真正」のものしかあり得ないということになります。

今回の最高裁の判断は、あくまでも知財高裁への差し戻しですので、知財高裁で具体的にどのように判断されるか待ちたいと思います。

これで、プロダクト・バイ・プロセスクレームに関して、「真正」だの「不真正」だのといった言い方は、無くなるんでしょうね。

---------------------------------------------------------------------
追記(2015/6/6)
●(参考)日経新聞Web、2015/6/6
同じ成分の薬なら…別の製法でも特許侵害 最高裁判決 出願・審査、実務に影響も

http://www.nikkei.com/article/DGKKASDG05HDM_V00C15A6CR8000/

---------------------------------------------------------------------
追記2 (2015/6/11)
● 特許庁HP 平成27年6月10日
「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査基準及び審査・審判の取扱いについて」

http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C.htm

 (記事内容写し)
『 平成27年6月5日に、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(物の発明に係るクレームにその物の製造方法が記載されている場合)に関する最高裁判決(平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)がありました。

これを受けて、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査基準及び審査・審判の取扱いは、以下のようにします。

1 審査基準について

「特許・実用新案審査基準 第I部 第1章 明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の改訂について検討を開始します。

2 プロダクト・バイ・プロセス・クレームの審査・審判の取扱いについて

プロダクト・バイ・プロセス・クレームについては、現在、本件最高裁判決を受けた取扱いの検討を行っていることから、7月上旬頃までの当面の間、審査・審判において、本件最高裁判決の判示内容に関する判断を行わないこととします。

7月上旬頃を目途に、審査・審判における取扱いの検討結果をお知らせする予定です。 』

(*上記記事内容の写し中、下線は管理人による)
-----------------------

以上

2015年4月 3日 (金)

EPO拡大審判部「ブロッコリ事件II」と「トマト事件II」の審決 -植物や植物部分の欧州での特許の可能性広がる(審決G2/12、G2/13)

欧州特許庁(EPO)の拡大審判部が、いわゆる「ブロッコリ事件II」(G2/12)と、「トマト事件II」(G2/13)の審決を出し(先週3月25日)、この中で、プロダクト・バイ・プロセスクレームにより特定された植物や、果実、植物材料については、EPC第53条(b)における「植物の生産の本質的に生物学的な方法」には該当しない、として、特許性を認めることとなる判断を示しました。

 (参考) G2/12及びG2/13の審決(EPOのサイト):
  
http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/eba/number.html
  (上記URLにアクセス後、該当の審決番号をクリックすることで参照可能)

-----(4/10追記)-----
    EPO, Website updates, 7. April. 2015
    Decisions G 2/12 and G 2/13 of the Enlarged Board of Appeal
   
http://www.epo.org/service-support/updates/2015/20150407.html
--------------------

これにより、交配や選別といった従来的な手法によって得られた植物(植物品種以外)や、果実、植物の部分といったものについては、プロダクト・バイ・プロセス形式でクレームを記載するっことによって、欧州特許を取得できることが確認されました。

従来は、交配や選別といった従来的な手法によって得られた植物(植物品種以外)や、果実、植物の部分といったものについては、EPC第53条(b)には明文的な記載はなく、はっきりしていませんでしたが、植物品種や、交配や選別といった方法自体が、不特許とされていたことから、交配や選別といった手法によって得られた植物等についても、どちらかというと否定的に考えられていたと思います。

今回の審決で、上記のように確認できたことは、植物や植物部分についての物の発明について、欧州で特許される可能性が広がったと言えそうです。実務的にも影響がありそうですし、EPOの審査ガイドラインについても、今後、今回の審決を受けて、部分的な改訂がされるかもしれません。

Broccolitomato_2
<背景など>
欧州特許条約(EPC)では、植物に関連する発明について、特許できる主題について「特許性の例外」(つまり日本でいうところの「不特許事由」)として、下記のように規定しています。

・EPC第53条 特許性の例外
 欧州特許は,次のものについては,付与されない。
 (a) 略
 (b) 植物及び動物の品種又は植物又は動物の生産の本質的に生物学的な方法。ただし,この規定は,微生物学的方法又は微生物学的方法による生産物については,適用しない。
 (c) 略

 つまり、EPC第53条(b)では、「植物品種」と、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に関する発明については、特許しない旨、規定しています。
 ここでいう「植物の生産の本質的に生物学的な方法」とは、交配や選別といった従来的な手法を意味しているとされていました。

今回の審決には、同じ特許についてそれに先立つ審決として、いわゆる「ブロッコリ事件I」(G2/07)と「トマト事件I」(G1/08)があり(2010年12月拡大審判部)、ここでは、交配と選別による植物の生産方法に、植物の全体の遺伝子の交配や、それに続く植物の選別の段階の実施を可能にしたり補助したりするのに役立つ技術的な段階をさらに加えた場合には、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」には当たらないのでは無いか、として争われていました。

この「ブロッコリ事件I」(G2/07)と「トマト事件I」(G1/08)の結論としては、そのような付加的な肯定や段階を加えたとしても、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に当たるとして、特許の対象から除外されるとされていました。

これに対して特許権者は、クレームを、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」により得られた物(植物、果実など)として、プロダクト・バイ・プロセス形式のクレームとして、さらに争っていました。

今回の審決は、その判断に当たって、技術審判部からの質問付託に対する回答として、拡大審判部が判断したものです。

審決自体は、2つあり、いずれも80頁近くあって長いのですが、結論部分のみ抜粋すると下記の通りです。(まだ詳細な検討はしていませんので、ざっと読んだ範囲で書いています)。


・審決の結論部:

1. The exclusion of essentially biological processes for the production of plants in Article 53(b) EPC does not have a negative effect on the allowability of a product claim directed to plants or plant material such as plant parts.

2. (a) The fact that the process features of a product-by-process claim directed to plants or plant material other than a plant variety define an essential biological process for the production of plants does not render the claim unallowable.

(b) The fact that the only method available at the filing date for generating the claimed subject-matter is an essentially biological process for the production of plants disclosed in the patent application does not render a claim directed to plants or plant material other than a plant variety unallowable.

3. In the circumstances, it is of no relevance that the protection conferred by the product claim encompasses the generation of the claimed product by means of an essentially biological process for the production of plants excluded as such under Article 53(b) EPC.

(管理人による仮訳)

1. EPC第53条(b)において、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を除外していることは、植物又は植物の部分のような植物材料に向けられた、物のクレームの特許性に対して、否定的な影響を及ぼさない。

2.(a) 植物品種以外の植物又は植物材料に向けられた、プロダクト・バイ・プロセスクレームの方法の特徴が、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を定義するという事実によっては、そのクレームは不許可にはならない。

 (b) クレームされた主題を作り出すために出願日当時に入手可能だった唯一の方法が、特許出願中に開示された「植物の生産の本質的に生物学的な方法」であるという事実によっては、植物品種以外の植物又は植物材料に向けられたクレームは不許可にはならない。

3. 以上のような(上記1と2の結論による)状況において、物のクレームによって与えられる保護が、EPC第53条(b)のもとでそれ自体除外される「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を用いてクレームされた物の生産を包含することは、関連性がない。

→なんだか分かり難い内容ですが、要するに、以下の通りのことを言っているようです(結局分かり難いかもしれませんが・・・)。

 1) EPC第53条(b)において、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」が不特許事由(特許性の例外)となっているからといって、このこと自体は、植物や植物材料のような物のクレームの特許性を否定するものではない。

 2a) 植物(植物品種以外)や植物材料のような物のクレームが、プロダクト・バイ・プロセスクレームの様式で記載されている場合に、その方法(プロセス)部分の内容が、不特許事由に当たる「植物の生産の本質的に生物学的な方法」であったとしても、それを理由に、物のクレームは不許可にはならない。

 2a) クレームされた主題である植物等を作り出すために、出願日当時に入手可能な方法としては、不特許事由である「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に当たる方法以外の(特許可能であるような)方法は他には存在せず、「植物の生産の本質的に生物学的な方法」に当たる方法のみであったとしても、その方法によって得られた、植物や植物材料のクレームは、それを理由には、不許可にはならない。

 3) 上記のようなプロダクト・バイ・プロセスによる物のクレームの保護と、そのような物の「生産」行為とは、物が、不特許事由に当たる「植物の生産の本質的に生物学的な方法」を含むプロダクト・バイ・プロセス様式で書かれていたとしても、関連性は無い。


 (対象の特許について)
●「ブロッコリ事件II」(G2/12)
 ・欧州特許: EP 1069819B
 ・対応日本特許 特許第4448615号
   出願日:1999.4.8 (優先日:1998.4.9)
   登録日:2010.1.29

  【発明の名称】ブラシカ種において抗発癌性グルコシノラートを選択的に増加させる方法
  【特許請求の範囲】
   【請求項1】
  (a)ブラシカヴィローサおよびブラシカドレパネンシスからなる群から選択される野生型ブラシカ属とブラシカ・オレラセア育種系統とを交雑するステップと、
  (b)4-メチルスルフィニルブチルグルコシノラートもしくは3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノラートまたはそれらの両方の量が、ブラシカ・オレラセア育種系統において最初に見いだされる量よりも多い雑種を選択するステップと
を含むことを特徴とする、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノラートもしくは3-メチルスルフィニルプロピルグルコシノラートまたはそれらの両方の量が増加したブラシカ・オレラセアを生産する方法。
・・・
  【請求項7】  請求項1~4のいずれかに記載の方法によって生産される食用ブラシカ植物。
  【請求項8】  請求項1~4のいずれかに記載の方法によって生産されるブロッコリーの食用部分。
  【請求項9】  請求項1~4のいずれかに記載の方法によって生産されるブロッコリー植物の種子。
・・・
【請求項14】まであります。
 (*以上は日本の対応特許ですので、欧州の審決でどのような表現のクレームが争われたかは、これからは分かりません)。


●「トマト事件II」(G2/13)
 ・欧州特許: EP 1211926B
 ・対応日本特許出願(拒絶査定確定) 特表2003-507044号公報
   出願日:2000.7.4 (優先日:1999.8.19)

  【発明の名称】水分の減少したトマトを育てるための方法及びその方法の生産物
  【特許請求の範囲】
<2011年6月30日の補正書(おそらく最後に提出)のクレーム>
  【請求項1】  少なくとも一つのリコペルシコン・エスカレンタム植物をリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種と交配させハイブリッド種を産生する段階と、
  ハイブリッド種の第一世代を回収する段階と、
  そのハイブリッド種の第一世代から植物を生長させる段階と、
  最新ハイブリッド世代の植物を授粉させる段階と、
  その最新ハイブリッド世代により産生された種を回収する段階と、
  最新ハイブリッド世代の種から植物を生長させる段階と、
  通常の成熟時期を過ぎても、植物をつるに残したままにする段階と、
  熟した果実の延長された保存期間と果実表皮のしわにより示される、果実中水分の減少したハイブリッド植物を選別する段階と
からなり、更に
 その後代が果実中水分量の減少を示すハイブリッド種由来の植物を、リコペルシコン植物と交配させる段階と、
 その交配した植物を生長させる段階と、
 非交配リコペルシコンからの果実と比較して乾燥重量%が増加したトマト果実を有する植物を選択する段階とからなる
果実中水分の減少したトマトを産生するトマト植物を育てる方法。
 ・・・・
  【請求項13】  野生のリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種植物からの遺伝子移入を伴うリコペルシコン・エスクレンツムの遺伝子を有し、トマト植物に付いたまま自然乾燥する能力を特徴とし、概して細菌性腐敗を伴わないその自然乾燥が、通常の熟した状態での収穫段階の後に植物に付いた状態のままにされたトマト果実表皮のしわにより定められるトマト果実。
  【請求項14】  略
  【請求項15】  トマト植物に付いたまま自然乾燥する能力を特徴とし、概して細菌性腐敗を伴わないその自然乾燥が、通常の熟した状態での収穫段階の後に植物に付いた状態のままにされたトマト果実表皮のしわにより定められる請求項1から12のいずれか記載の果実中水分の減少したトマトを産生するトマト植物を育てる方法により育つトマト果実。
  【請求項16】  請求項15記載のトマト植物の種。
 (*以上は日本の対応特許ですので、欧州の審決でどのような表現のクレームが争われたかは、これからは分かりません)。


(参考資料)
●ジェトロHP、2015年4月1日
 「欧州特許庁拡大審判部,ブロッコリ事件及びトマト事件について」
 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20150401.pdf

●ジェトロHP、2010年12月11日
 「EPO拡大審判部,交配を含む植物の生産方法に対して特許性を認めない審決」
 http://www.jetro.go.jp/world/europe/ip/pdf/20101211.pdf

  以上

2015年3月10日 (火)

ノンアルコールビール風味飲料で特許侵害訴訟提訴(サントリーとアサヒ)

日経新聞web版によれば、下記の通りとのことです。

・日経新聞web、2015/3/10
 
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10H36_Q5A310C1MM0000/?dg=1
(記事抜粋)
サントリー、アサヒを提訴 「ドライゼロが特許侵害」
 アルコール度数ゼロのビール風味飲料を巡り、自社の特許を侵害されたとして、サントリーホールディングス(HD)がアサヒビールに対し、アサヒの主力商品「ドライゼロ」の製造や販売の差し止めを求める訴訟を起こしたことが10日、分かった。
 同日午後に東京地裁で第1回弁論が開かれる予定で、アサヒ側は「特許権は無効だ」として全面的に争う方針だ。
 サントリーは、糖質やエキス分を一定の範囲内にしたビール風味飲料として2013年10月に取得した特許権を、アサヒのドライゼロが侵害していると主張し、今年1月に提訴した。
 ・・・・・・・・。』

 A社の「ドライゼロ」は、「アルコールゼロ」に加え「カロリーゼロ」「糖質ゼロ」をうたっている、いわゆる健康志向のノンアルコールタイプのビール風味飲料です。

 本ブログ的にも興味深いのでの、簡単に特許など調べてみました。

 報道の情報から推測すると、おそらく下記の特許(1)に基づき、特許権侵害の提訴に踏み切ったと思われます。(親出願の特許(2)は関係しているかは分かりません)。(他にも、提訴に関連する特許が存在するか不明です。下記は、あくまでも上記記事の記載の範囲で調べたものにすぎませんので、下記の特許であることの裏付けも現在のところとれていない、確証の無い情報になります。この点ご留意ください3月10日付けのA社のニュースリリース(下記)に、問題となっている特許が下記(1)の特許第5382754号「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」であることが明記されています(3/12追記)。


(1) 特許第5382754号 「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」
    登録日: 2013年10月11日  (公報発行日: 2014年1月8日)
   原出願日: 2012年11月19日
    出願日: 2013年5月27日
    (この特許は、下記(2)の分割出願に基づくものです)

  権利化後の訂正審判: 訂正2014-390090
   訂正審決確定: 2014年8月7日 (審決公報発行: 2014年10月31日)
   訂正内容: 「ビールテイスト飲料」を「ノンアルコールのビールテイスト飲料」に』訂正、他。

  その他:
  請求の範囲について: 請求項は1~63(削除クレームあり)、
     請求項の主題:ビールテイスト飲料、
               ビールテイスト飲料の製造方法、
               ビールテイスト飲料への飲み応え及び適度な酸味の付与方法
       審査経過: 早期審査を行い、出願から特許査定まで4ヵ月程度

 <訂正後の請求項1>
  『【請求項1】
 エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下であり、糖質の含量が0.5g/100ml以下である、前記飲料。』


    →(コメント) エキス分と糖質含量(糖質が実質的にゼロ)が規定されたノンアルコール型のビールテイスト飲料の発明となっています。


(2) 特許第5314220号 「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」
    登録日: 2013年7月12日 (公報発行日:2013年10月16日)
    出願日: 2012年11月19日 (*(1)の分割の親出願に相当) 

  権利化後の訂正審判: 訂正2014-390088
   訂正審決確定: 2014年8月7日 (審決公報発行: 2014年10月31日)
   訂正内容: 「ビールテイスト飲料」を「ノンアルコールのビールテイスト飲料」に』訂正、請求項1の数値を「2.0重量%」から「0.3重量%」に訂正、他。

  その他:
  請求の範囲について: 請求項は1~57(削除クレームあり)、
     請求項の主題: ビールテイスト飲料、
               ビールテイスト飲料の製造方法、
              ビールテイスト飲料への飲み応え及び適度な酸味の付与方法

 <訂正後の請求項1>
  『【請求項1】
 エキス分の総量が0.3重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下である、前記飲料。』


    →(コメント) こちらの特許は、上記特許(1)に比べると、エキス分の量が上記(1)より少なく、糖質含量が規定されていません。


(3) 第2の分割出願の存在
 上記(2)の特許には、さらに(2つめ)分割出願(特願2013-162069(特開2013-255504号)、継続中)が存在するようです。 (現在のところ、審査請求未請求、審査請求期限は2015年11月)。


(コメント)

・A社(訴えられた側)の製品サイトを見ると、
「栄養表示基準に基づき、エネルギー5kcal(100ml当たり)未満をカロリーゼロ、糖質0.5g(100ml当たり)未満を糖質0(ゼロ)としています」
とある。ただし、サイトを簡単に見た限りでは、製品中の「エキス分」の量は、製品紹介等からは、特定できない。 (糖質ゼロであることは、製品広告で自認)。 

・特許のクレームは、エキス分などを数値範囲で特定しているので、侵害の立証の際(充足論)は、実験などが必要となると思われ、論点のひとつになりそう。

・特許(1)は、「飲み応えのある低エキス分のビールテイスト飲料」であり、「適度な酸味」を持つことを特徴とするもののようである。明細書の実施例において、発明の効果の立証データとして、「飲み応え感」、「酸味」をヒト(パネリスト)による官能評価によっている。

・特許発明の効果については、官能試験による結果に基づくものであるため、このあたりのところは、特許の有効性の議論(無効論)で、進歩性における発明の効果、記載要件などにおいて、論点になりそう。
  (*官能評価試験は、あいまいな面が多く、パネリストの選定、評価基準・手法、絶対評価/相対評価など、突っ込みどころ満載なことが多いが、攻める側も同様のタイプの出願をたくさんしている可能性が高く、攻めすぎれば、「天につばする」行為になりかねない)。

・今のところ、特許無効審判の提起は確認できない。

・A社の製品の発売は2012年1月(http://www.asahibeer.co.jp/news/2012/0110.html)。原出願日の方が後のように、一見すると見える。 (但し具体的な製品タイプが違うかもしれない
)。→ 一部報道によれば、昨年2014年9月に製品のリニューアルをしており、それが特許権に抵触しているとの主張のようです(2015/3/11追記)。

・S社の方は、提訴前に訂正審判をして十分準備をしてから提訴しているように見える。

・まだ別の分割出願が生きているので、裁判の進行次第では、それを利用して(クレームも工夫して)、さらに、二の手、三の手を用意できる余地がある。

-----------------------
(以下、3/12追記)

●サントリーホールディングス株式会社 ニュースリリース、2015年03月10日
 「アサヒビール株式会社に対する訴訟の提起について」
 
http://www.suntory.co.jp/note/d/20150310_01.html

●アサヒグループホールディングス株式会社 ニュースリリース、2015年3月10日
 「サントリーホールディングス(株)の当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ」
 
http://www.asahigroup-holdings.com/news/2015/0310.html


以上