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周辺法・関連制度

2015年6月19日 (金)

日本-台湾間の手続相互承認の発効(特許微生物寄託)

以前本ブログで、特許微生物の寄託手続に関して、日本-台湾間の手続の簡素化のために、相互承認待ちであることをご紹介しましたが、今回やっと、日本での手続が進み、相互承認が開始されることになりました。6月18日より相互承認が発効され、日本-台湾間の特許微生物寄託の手続が簡素化されます。

● 特許庁ブレスリリース、平成27年6月18日
台湾との特許手続上の微生物寄託分野における相互承認の開始について

http://www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/tetuzuki/shutugan/biseibutu/sogo_taiwan.htm

すなわち、2015年6月18日から、日本の国際寄託当局への国際寄託によって発行された受託証をもって台湾に特許出願することで、台湾において特許出願に関する手続上、微生物の寄託の効力が認められることになります。これによって、特許微生物寄託をする必要のある台湾への出願をする場合に、日本の寄託当局で寄託しておけば、台湾において新ためて寄託手続を行う必要がなくなります。

また、特許庁長官が指定する台湾が行う機関指定に相当する指定その他の証明を受けた台湾の機関によって発行された寄託を証明する書面をもって日本に特許出願することで、日本において特許出願に関する手続上、微生物の寄託の効力が認められることになります。つまり、上記の場合と反対に、台湾から出願をする場合にも、日本であらためて微生物寄託手続をする必要はなくなります。

これは、実務上、手続き上の負担が大幅に軽減されることを意味します。

実際、これまで台湾へ微生物寄託を伴う出願をする場合、台湾へわざわざ微生物等のサンプルを送る必要があり、その場合に検疫が必要となるなど、作業負担は相当なものでした。この意味で、今回の手続の軽減は、実務的にも非常にありがたいものです。

なお、今回の相互承認は、原則として「ブダペスト条約」における国際寄託と同様に行うこととなりますが、台湾はブダペスト条約に加盟していないことから、非常にまれなケースかもしれませんが、以下の場合に、ブダペスト条約と異なる手続が必要となるので、注意が必要です。

すなわち、ブダペスト条約規則5.1の規定に基づき、日本の国際寄託当局から日本以外の国際寄託当局へ寄託された微生物が移送された場合(天災地変などによる)、当該寄託の効果はブダペスト条約締約国においては引き続き有効ですが、台湾においては有効ではなくなります。その場合、台湾における寄託の効果を維持するためには、原則としてブダペスト条約第4条(1)(e)の公表の日2から3か月以内に台湾へ再寄託を行う必要がでてきます。


(参考)
● 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)、平成27年6月18日
 特許微生物寄託制度に関する日本と台湾の間の相互承認の発効に伴う寄託・分譲制度について

 http://www.nite.go.jp/nbrc/patent/information/jp-tw-recognition2015.html


● 交流協会、2015年6月18日作成
 「公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の特許手続上の微生物の寄託の分野における相互協力に関する覚書」(略称「日台特許手続微生物寄託覚書」)について

 http://www.koryu.or.jp/ez3_contents.nsf/(04)/57D23A032F1E1EE649257E650022DA4C?OpenDocument


● 特許庁HP、微生物寄託に関するご案内
  http://www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/tetuzuki/shutugan/biseibutu/index.html


● 本ブログ過去記事、2015年2月27日
 特許微生物寄託(日本-台湾間の手続が大幅に簡素化)-でも未だ実施されず

 http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/02/index.html#entry-81906706

以上

2015年3月13日 (金)

特許法等と、不競法の改正法案が、閣議決定

「特許法等の一部を改正する法律案」と、「不正競争防止法の一部を改正する法律案」が、今日(3月13日)閣議決定されたとのことです。
それぞれの法律案は、第189回通常国会に提出されることになりました。


[A] 「特許法等の一部を改正する法律案」

(1) 職務発明制度の見直し 【特許法】
 ①契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から使用者等に帰属するものとする。
 ②従業者等は、特許を受ける権利等を取得等させた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有するものとする。
 ③経済産業大臣が、相当の金銭その他の経済上の利益の内容を決定するための手続に関する指針を定める。

(2) 特許料等の改定 【特許法、商標法、国際出願法】
 ① 特許料について特許権の設定登録以降の各年において、10%程度引き下げる。
 ② 商標の登録料を25%程度、更新登録料について20%程度引き下げる。
 ③ 特許協力条約に基づく国際出願に係る調査等について、明細書及び請求の 範囲が日本語又は外国語で作成されている場合に応じ、それぞれ手数料の上限額を定める。

(3) 特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約の実施のための規定の整備【特許法、商標法】
 両条約に加入すべく、 国内法における所要の規定の整備を行う。
 ・特許法
 外国語書面等の翻訳文を所定の期間内に提出することができなかったときは、特許庁長官が通知をするとともに、その期間が経過した後であっても、一定の期間内に限りその翻訳文を提出することを可能にする等。
 ・商標法
 出願時の特例の適用を受けるための証明書を所定の期間内に提出することができなかったときは、その期間が経過した後であっても、一定の期間内に限りその証明書を提出することを可能にする等。


[B] 「不正競争防止法の一部を改正する法律案」

(1) 営業秘密侵害行為に対する抑止力の向上
 ① 罰金額の引上げ及び犯罪収益の没収等の措置を講じる。
   我が国企業の営業秘密を海外で使用し、又はそれを目的として営業秘密を取得・漏えいする行為については、海外重課を行う。(刑事)
 ② 営業秘密侵害罪を非親告罪とする。(刑事)
 ③ 民事訴訟(賠償請求等)における原告の立証負担を軽減するため、被告による営業秘密の使用を推定する規定等を創設する。(民事)
 ④ 営業秘密侵害品の譲渡・輸出入等を禁止し、差止め等の対象とする(民事)とともに、刑事罰の対象とする。(刑事)

(2) 営業秘密侵害罪の処罰範囲の整備
 ① 不正開示が介在したことを知って営業秘密を取得し、転売等を行う者を処罰対象に追加する。
 ② 営業秘密の海外における取得行為(※)を処罰対象に追加する。
 ※例:海外サーバーに保管されている我が国企業の管理する営業秘密の取得行為等。
 ③ 営業秘密侵害の未遂行為を処罰対象に追加する。


------

●経済産業省ニュースリリース、2015年3月13日
 「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました
 http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150313001/20150313001.html

●経済産業省ニュースリリース、2015年3月13日
 「不正競争防止法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました
 http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150313002/20150313002.html

●日経新聞朝刊、2015/3/16 (加筆3/16)
 「改正案のポイントは」
(記事抜粋)
 経済産業省が国会に提出した不正競争防止法改正案は罰則を大幅に強化した。現行法は秘密を盗んだり流したりした個人への罰金は最高1千万円。これに対し、改正案は・・・・など海外への流出防止に主眼を置いた。
 現行法は秘密が盗まれる場所を国内に限定しており、海外は想定していない。改正案では、海外での秘密の不正取得も刑事罰の対象とした。・・・・・。盗んだ秘密を利用して得た利益を没収する制度も新設する。
 未遂に対して、新たに刑事罰を科すことも大きなポイントだ。・・・・。法改正後は秘密を不正に取得しようとコンピューターウイルスを送ったり、不正アクセスしたりしただけでも罰則が科される可能性がある。 このほか、・・・・「非親告罪化」や、民事訴訟で原告側の立証責任を軽くするなど法改正の内容は多岐にわたる。・・・・。


以上

2015年3月 3日 (火)

機能性表示食品のガイドライン(案)公表

機能性表示食品に関するガイドライン(案)が公表されました。
報道記事(思ったよりも大きく取り上げられています)や、消費者庁のガイドライン(案)の抜粋を、備忘として残しておきます。


●報道など:
・読売新聞HP、2015年03月02日
『トクホでなくても「機能性表示」可能に…指針案』

 http://www.yomiuri.co.jp/national/20150302-OYT1T50059.html
(記事抜粋)
『消費者庁は2日、新年度新設される食品表示のしくみ、「機能性表示食品制度」のガイドライン(指針)案を公表した。
食品が健康へ及ぼす作用(機能)について、企業が科学的な根拠を届け出れば、国の審査なしに表示できる。
・・・・・。・・・。
現行では、特定保健用食品(トクホ)など一部を除き、「機能」を表示できない。機能性表示は、サプリメントや生鮮など幅広い食品が対象。
・・・・・。
・・・。夏ごろには商品の販売が開始される見込み。』

<*下線は、管理人による。以下同じ。>


・毎日新聞HP、2015年03月02日
『機能性表示食品:「体にいい」夏にも店頭に 消費者庁指針』

http://mainichi.jp/select/news/20150303k0000m040080000c.html
(記事抜粋)
『体にどのように良い食品なのかを、企業の責任で表示できる新しい「機能性表示食品」制度について、消費者庁は2日、ガイドライン(指針)を公表したが、国の審査がない届け出制のために、食品業界にとっては迅速な商品開発や市場投入につながる面もありそうだ
・・・・・。・・・。・・・・・。・・・・・・・。・・・。
消費者庁は2日、新制度について東京都内で一般向けの説明会を開いた。参加者は約1800人と関心が高く、・・・などと質問が相次いだ。
終了後、食品メーカーの関係者からは「表示するための要件が厳しく、すぐに商品を出すのは難しい」「新制度は、表示できる範囲が先行する米国よりも狭く、期待したほどではなかった」などと困惑の声も聞こえた。』


●消費者庁 食品表示基準及び新たな機能性表示制度に係る説明会について
 http://www.caa.go.jp/foods/index18.html#m01-15


機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(案) [PDF:836KB]
 
 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150219_shiryou4.pdf

  (ガイドライン中に記載の表示例の抜粋)

「本品にはA(機能性関与成分)が含まれるので、Bの機能があります(機能性)。」
  (最終製品を用いた臨床試験で科学的根拠を説明した場合)

「本品にはA(機能性関与成分)が含まれ、Bの機能がある(機能性)ことが報告されています。」
  (最終製品に関する科学的レビューで科学的根拠を説明した場合)

「本品にはA(機能性関与成分)が含まれます。AにはBの機能がある(機能性)ことが報告されています。」
  (機能性関与成分に関する科学的レビューで科学的根拠を説明した場合)

「○○(機能性関与成分)の含有量が一定の範囲内に収まるよう、栽培・出荷等の管理を実施しています。しかし、△△は生鮮食品ですので、◇◇(ばらつきの要因)などによって、○○(機能性関与成分)の含有量が表示されている量を下回る場合があります。」
 生鮮食品などでは含有量がバラツキを生じることがあるため、それを想定した含有量に関する表示)
など


●本ブログ内の過去記事リンク:
「機能性表示食品」のガイドライン案の公表と説明会開催 2015年2月23日
http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/02/index.html#entry-81878227

以上

2015年2月27日 (金)

特許微生物寄託(日本-台湾間の手続が大幅に簡素化)-でも未だ実施されず

 日本から台湾へ、及び、台湾から日本への、特許微生物寄託が必要な特許出願の手続きに際して寄託関連の手続が、大幅に簡素化されることが予定されています

 既に特許庁のHPでも公表されているように、特許微生物寄託に関連する特許法施行規則の規定が改正され*1、また審査基準(「生物関連発明」の審査基準)が改訂され*2、施行規則の施行日と改正審査基準の適用はいずれも、平成27年1月1日からとなっています。これらの改正によって、台湾から日本への出願がされた場合の特許微生物寄託の手続きの簡素化が見込まれていました(日本から台湾への出願も、相互主義の考えに基づき(後述するように覚書が最近交わされています)、同様に適用される予定でした)

 ところが、今日現在まだ、日本-台湾間の特許微生物寄託手続の簡素化は、実際には未だおこなわれておらず、表面的には動きが止まってしまっているようです

 すなわち、特許法施行規則の改正、審査基準の改訂に加えて、特許微生物寄託の寄託機関における実際の運用などを定めた「特許微生物寄託等事業実施要綱の一部を改正する告示」(案)が一旦パブリックコメントを募集して、告示の公表のため手続きが進められていましたが、意見募集の結果(2015/1/10公表)、「本件に係る告示案について内容を見直し、改めて意見公募手続をすることとし、本意見公募に基づいて告示を定めないこととしました」として、仕切り直しが表明されて以降、特許庁での動きがとまってしまっています*3


*1
 特許庁ニースリリース、平成26年8月12日
 特許法施行規則の一部を改正する省令(平成26年8月12日経済産業省令第40号)
 
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohou_260812.htm

*2 特許庁ニースリリース、平成26年11月19日
 「生物関連発明」の審査基準の改訂について

 
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/h26_seibutsu_kaitei.htm
(改訂のポイント)
「特許法施行規則第27条の2第1項の改正に伴い、条文を引用している箇所について、改正後の条文に更新するとともに、改正により新たに規定された寄託機関である「条約の締約国に該当しない国(日本国民に対し、特許手続上の微生物の寄託に関して日本国と同一の条件による手続を認めることとしているものであつて、特許庁長官が指定するものに限る。)が行う機関指定に相当する指定その他の証明を受けた機関」を特許手続上の寄託機関として追加する。」

*3 http://www.jpo.go.jp/iken/biseibutsu_141107_kekka.htm
「特許微生物寄託等事業実施要綱(平成十四年経済産業省告示第二百九十一号)の一部を改正する告示案に対する意見公募の結果について」(2015/1/10)


また、改正施行規則や改正審査基準で新たに対象に加えたい、締約国に該当しない国の機関(「条約の締約国に該当しない国(日本国民に対し、特許手続上の微生物の寄託に関して日本国と同一の条件による手続を認めることとしているものであつて、特許庁長官が指定するものに限る。)が行う機関指定に相当する指定その他の証明を受けた機関」)についても、特許庁長官による国等の指定についても、未だに、何ら公表等されていません*4


*4 今回の改正により手続きの簡素化を図ろうと考える国・地域は、特許庁の改正の説明等には具体的には記載されておりませんが、これまでの経緯や、後述する台湾との覚書締結の進捗からみて、「台湾」を第一のターゲットにしていることは明らかです。

  なお、上記は、台湾から日本へ出願をした場合に関連する日本国内での寄託手続に関するものですが、その裏返しである、日本から台湾へ出願した際の台湾での寄託手続きについては、当然、台湾での法律に基づくものになりますが、これに関して、今回の日本国内の改正に合わせるように、日本-台湾間で「日台特許手続微生物寄託覚書」が交わされています*5


*5
 「公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の特許手続上の微生物の寄託の分野における相互協力に関する覚書」(略称「日台特許手続微生物寄託覚書」) 2014年 11月 20日作成
http://www.koryu.or.jp/taipei/ez3_contents.nsf/v04/787A326B12A80D0449257D9500303326

(抜粋)
1.11月20日、日本と台湾との特許手続上の微生物の寄託の分野における相互協力に関し、公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間で標記覚書を交わし、以下の合意がなされましたのでお知らせいたします。

2.台湾は我が国にとって緊密な経済関係を有するパートナーであり、その基礎となる知的財産分野においても、密接な関係を有しています。本覚書は、これまで日台双方において出願人が行うことが必要であった手続の負担を軽減するものであり、これにより、経済面での日台間の実務交流が一層促進されることが期待されます。

(主要合意事項)
1. 基本的性質
交流協会と亜東関係協会は、日台双方の出願人の相手方区域における特許権の取得に関する手続負担を軽減するため、覚書に規定された内容について、必要な関係当局の同意が得られるように相互に協力する。

2.  規定内容
(1)上記協力の対象は、特許手続における微生物寄託の相互承認。
(2)主な内容
 出願人が相手側の寄託機関に寄託を行う手続負担を軽減するために、日台双方がそれぞれ指定する微生物寄託機関への寄託を相互に承認すること。


 因みに従来は(結果的には今現在も)、「日本から台湾へ」の特許出願の場合も、またその逆の「台湾から日本へ」の特許出願の場合も、(ブダペスト条約の適用外なので)特許微生物寄託の手続における原則的な取扱いとなるため、実際に、相手国の寄託当局宛に寄託する微生物(生物)を送って、現地で微生物寄託をしたことの証明書(受託証)を取得し、それを特許出願に際して提出しなければなりません。

 特許微生物寄託の手続きの世界では、ブダペスト条約(『特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約』)というものがあります。

ブダペスト条約の加盟国であれば、自国の寄託機関で寄託(国際寄託)をしておくことで、自国でした寄託手続を相手国の審査の際に承認してもらえることになるため、その国で別途あらためて寄託手続をする必要はありません。

 しかし、台湾のようにブダペスト条約の枠外の国・地域については、その国へ、微生物寄託を伴う特許出願をしようとする場合、(基本的には)その国での特許出願前までに、その国に実際に微生物を送って、その国の寄託機関に提出して寄託手続を行い、その国で寄託の証明書(寄託機関の受託証)を取得する必要があります。

  例えば、従来は、たとえ日本国内の寄託機関に寄託をして受託証を取得していたとしても、日本出願を基礎として台湾で特許出願をするに場合には、日本から台湾に微生物の現物を送り、台湾の寄託当局に微生物を実際に寄託する手続をし、そこで受託証を取得して、それを台湾の特許当局に提出する必要がありました。

 ところが、今回の手続の簡素化が実際に図られると、この相手国(例えば台湾)での寄託を行う必要がなくなり、日本の寄託機関に対する手続のみで済ますことができるようになります。微生物の実物を現地に送らなければならないという問題を回避できますので、出願人にとっては大幅な負担軽減につながります。このため、簡素化は非情に期待されているといえます。

 いずれにしても、早く、手続の簡素化を実施してほしいです。


(参考)
ブダペスト条約(日本語訳)

http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/budapest/bt/mokuji.htm

ブダペスト条約(英語)
Treaties and Contracting Parties: Budapest Treaty(WIPO)

http://www.wipo.int/treaties/en/registration/budapest/index.html

特許微生物寄託センター(NPMD)
http://www.nite.go.jp/nbrc/patent/ida/npmd.html

以上

2015年2月25日 (水)

栽培地検査と輸出検疫

(植物の)輸出検疫では、相手国の検疫当局の検疫条件(植物種、国により様々)にしたがって、日本の植物防疫所において検査を行ってもらう検疫の方式をいいます。

おおよその手続の概略は下記のようになります。

相手国の条件で、栽培段階での検疫(害虫、病気などの検査)が必要となる場合には、輸出しようとする作物などの栽培段階から、植物防疫所に申請をして、栽培地に検査官に来てもらって検査を受ける必要があります。例えば、秋に収穫する作物を例にとると、初夏や真夏の時期などに栽培地で検査を受け、さらに、検疫証明書の発給の際に、収穫物を植物防疫所に持ち込んで検査を受けることになります。(下記の図の左の写真は、実際に栽培試験で検査官に検査をしてもらっている様子です(なお写真は、あまり特定できないように拡大し少し加工しています)。

品種登録出願の外国出願をする場合には、このような手続が必要となる場合があります。

なお出願を希望する場合は、出願手続や外国の制度はもちろん、この辺りの検疫などのことも良く知っていることが望ましいでしょう。


Kennekikensayusyutukenneki_3

   (図の出典:植物防疫所HP、 写真は実際に管理人が立ち会った検査の様子)

<参考>

・植物防疫法
 http://www.pps.go.jp/law_active/Notification/basis/2/5/html/5.html

 (輸出植物の検査)

 第十条

 輸入国がその輸入につき輸出国の検査証明を必要としている植物及びその容器包装を輸出しようとする者は、当該植物及び容器包装につき、植物防疫官から、それが当該輸入国の要求に適合していることについての検査を受け、これに合格した後でなければ、これを輸出してはならない。

2 前項の検査は、植物防疫所で行う。但し、植物防疫官が必要と認めるときは、当該植物の所在地において行うことができる。

3 輸入国がその輸入につき栽培地における検査を要求している植物その他農林水産省令で定める植物については、あらかじめその栽培地で植物防疫官の検査を受け、その検査に合格した後でなければ、第一項の検査を受けることができない。

4 植物防疫官は、輸入国の要求に応ずるため、必要があると認めるときは、第一項の検査を受けた物についてさらに検査をすることができる。



・衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)
 http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/
 WTO加盟国は、植物検疫措置を必要な限度において科学的原則に基づいてとり、恣意的又は不当な差別をしないことなどを規定


・国際植物防疫条約(IPPC)
 http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/ippc.html
 植物に関する病害虫コントロール、国際的なまん延防止に関する国際的な協力を主たる目的とする多国間条約


・植物検疫措置に関する国際基準(ISPM)
 http://www.maff.go.jp/pps/j/law/ispm/ispm.html
 SPS協定において、IPPC事務局が作成する具体的な植物検疫措置などに関する国際基準

以上

2015年2月23日 (月)

「機能性表示食品」のガイドライン案(概要)の公表と説明会開催

 食品の新しい機能性表示の制度である「機能性表示食品」の消費者庁による運用が、2015年度から開始されることになっています(6月27日までに施行するとのことです)。

 これまであったトクホ(特定保健用食品)はその承認を取得するハードルが高く、あまり使い勝手の良い制度とは言えませんでしたが、新制度である「機能性表示食品」は、基本的には届出することにより表示が認められるようになるため、使い勝って良さから、各方面からの期待が高まっています。

 新しい機能性表示を理解しておくことは、食品の用途発明(既知の食品物質・素材の新たな用途に関する発明)の出願を検討する場合にも、重要になると予想されます、
 また、機能性表示は農産物にも適用される予定であるため、「地域団体商標」や「地理的表示」(新法施行予定)との間での活用法の整理や、戦略の立案などに観点からも、この機能性表示の新制度の理解は重要になると考えています。

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(1) 機能性表示制度に関する説明会(消費者庁)の開催

 3月2日の東京での説明会から開始して全国で説明会を開催するようです。

 ・消費者庁ニュースリリース 2015/2/19
 「食品表示基準及び新たな機能性表示制度に係る説明会の開催について」
 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1417.pdf

 ただし説明会でガイドラインの公表がされるかどうかは未定のようです。


(2) 内閣府消費者委員会による「答申書」(2014年12月9日)

 機能性表示食品は、食品表示法(平成25年法律第70号)第4条第1項の規定により内閣府令で新たに定める食品表示基準に定められることになります。

 機能性表示食品の制度は、内閣府の消費者委員会でこれまで検討が進められてきました。
 昨年の12月9日には、食品表示基準において「機能性表示食品」の制度を制定することについて、消費者委員会から内閣総理大臣宛の答申書がしめされました。

 内閣府 消費者委員会
 <答申書>
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/12/10/20141209_toshin_betu.pdf

 この答申書には食品表示基準案も添付されています。以下に表示基準案の主なところの抜粋を示します。

 ・「機能性表示食品」の定義 →
 疾病に罹患していない者(未成年、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)に対し、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く。)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示をする食品(特別用途食品、栄養機能食品等を除く)であって、当該食品に関する表示の内容、食品関連事業者名及び連絡先等の食品関連事業者に関する基本情報、安全性及び機能性の根拠に関する情報、生産・製造及び品質の管理に関する情報、健康被害の情報収集体制その他必要な事項を販売日の六十日前までに消費者庁長官に届け出たものをいう。

 ・機能性表示食品である旨 → 「機能性表示食品」と表示する。

 ・科学的根拠を有する機能性関与成分及び当該成分又は当該成分を含有する食品が有する機能性
    → 消費者庁長官に届け出た内容を表示する。

 ・届出番号 → 消費者庁長官への届出により付与された届出番号を表示する。


(3) 機能性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)の概要

 内閣府の消費者委員の「健康・医療ワーキング・グループ」の検討の中で、ガイドライン案の概要が消費者庁から示されています。

 「機能性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)の概要」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150114/item2.pdf
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150114/agenda.html

 ガイドライン概要中、機能性表示食品の表示のあり方に関する箇所を以下に抜粋します。

5. 表示の在り方に係る事項
(1)適切な機能性表示の範囲
 ア 対象食品
  食品全般を対象とするが、対象外となる食品の考え方は以下のとおりとする。
 ① 特別用途食品、栄養機能食品と重複することはできない。
 ② アルコールを含有する飲料(アルコールを含有する食品を含む。)を対象外する。
 ③ 国民の栄養摂取の状況からみてその過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして健康増進法施行規則(省略)第11条第2項で定める栄養素(脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)、ナトリウム)の過剰な摂取につながる食品は対象外とする。


 イ 可能な機能性表示の範囲
  保健の目的が期待できる旨の表示の範囲は、健康の維持及び増進に役立つ、又は適する旨(疾病リスクの低減に資する旨を除く。)を表現するものであり(※1~3)、例えば、次に掲げるものであることとし、明らかに医薬品と誤認されるおそれのあるものであってはならないこととする。
 ① 容易に測定可能(※4)な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
 ② 身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
 ③ 身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調の変化の改善に役立つ旨


 ※1「診断」「予防」「治療」「回復」「緩和」「処置」等の医学的な表現は使用できない。
 ※2身体の特定の部位に言及した表現は可能である。
 ※3特定保健用食品で認められている範囲内の表現は可能である(疾病リスク低減表示を除く)。
 ※4医学的及び栄養学的な観点から十分に評価され、広く受け入れられている評価指標を用いる。なお、主観的な指標によってのみ評価可能な機能性の表示についても対象となり得るが、その指標は日本人において妥当性が得られ、かつ、学術的に広くコンセンサスが得られたものとする。


  認められない表現例としては、以下のものが考えられる。
 ① 疾病の治療効果又は予防効果を暗示する表現
 (例)糖尿病の人に、高血圧の人に等
 ② 健康の維持及び増進の範囲を超えた、意図的な健康の増強を標ぼうするものと認められる表現
 (例)肉体改造、増毛、美白等
 ③ 科学的根拠に基づき実証されていない機能性に関する表現
 (例)限られた免疫指標のデータを用いて身体全体の免疫に関する機能があると誤解を招く表現、in vitro 試験や動物を用いたin vivo 試験で実証された根拠のみに基づいた表現、抗体や補体、免疫系の細胞などが増加するといったin vitro 試験やin vivo 試験で科学的に実証されているが、生体に作用する機能が不明確な表現等


(2)容器包装への表示以外の情報開示
消費者庁のウェブサイト及び企業等のウェブサイトで情報開示する。』

以上

2015年1月24日 (土)

「地理的表示法」の手続きで気になる点

 地理的表示法の申請手続と登録までの審査手続き等の中で以前から気になっている点があります。

登録申請の際に提出する「申請書」には添付書類を添付しますが、その添付書類の中に明細書があり、産品の生産方法、特性等を記載する必要があることになています。一方で、申請をすると、その内容が公表(公示)され、第三者の意見書の提出期間が設けられます。また登録後においても内容は公表

(公示)されることになっています。このため、産品の生産方法や特性など、産品のノウハウ的なところが、公表されてしまうのではないか、という懸念があるように思います。

この点は、別記事で紹介しました講演会の中で、農水省の法令担当官の方も、質問に答えるという形で指摘され、また回答をされていました。


 すなわち、手続きは以下の通りとなっています(農林水産省による地理的表示法の説明会資料より抜粋)。


Brief_gi_law_25_2



 また、地理的表示法における審査手続きの流れは下記の通りになっています (農林水産省による地理的表示法の説明会資料より抜粋)。

Brief_gi_law_26


 このため、申請書に添付する書類の一つである「明細書」には、申請にあたって「産品の生産方法」等を記載する必要があり、申請後の「公示」によって、本来は公表したくない明細書に記載の「産品の生産方法」が公表されてしまう懸念があります。


(気になる点に関する農水省再度のコメントから)
 農水省の法令担当官の方のこれらの問題に対する回答としては以下の通りでした。

(1) 申請書の添付書類の一つである「明細書」は、申請書と共に「公示」される。すなわち、明細書の内容の一つである「産品の生産方法」等も「公示」によって、第三者が見ることが出来る状況になる(言い換えると、公示の際に「明細書」やその内容の一部を非開示にすることはしない)。

(2) 一方で、「明細書」に記載する「産品の生産方法」等は、「生産地」と「産品の特性」の結びつきを明確にするためのものであり、そのために必要な内容を記載すれば足り、産品の生産に関する重要なノウハウを「明細書」に中に記載することを要求しているのではない。
 (言い換えると、「明細書」を記載するにあたっては、「結びつき」を証明できる程度の記載をすれば足り、ノウハウ開示になるような記載はしないように工夫すべきである)。

(3) 近くパブリックコメントのために公表予定の審査基準(のようなもの)にも、記載が必要な内容等について説明される予定である。
                                       以上

2014年7月17日 (木)

CBD「名古屋議定書」発効へ


1. CBD「名古屋議定書」の発効が決定


いわゆる「名古屋議定書」、すなわち、生物多様性条約(CBD, Convention on Biological Diversity)における遺伝資源へのアクセスとその利益配分に関する名古屋議定書(NAGOYA Protocol on Access and Benefit-sharing (ABS))の批准国が、7月14日に所定の50ヵ国を超えたため、「名古屋議定書」が発効されることになりました。*1
   [(*1)名古屋議定書は50カ国が批准した日から90日後に発効するとされていました]

発効は、90日後の今年の10月12日となります。生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)(韓国で開催)の開催期間10月6~17日になんとか間に合わせた形です。

(名古屋議定書発効に関する情報ソース)
・生物多様性条約事務局(CBD)7/14のプレスリリース(英文):
http://www.cbd.int/doc/press/2014/pr-2014-07-14-Nagoya-Protocol-en.pdf

 ・日経新聞7/14の報道:
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG15012_V10C14A7CR0000/?n_cid=TPRN0005

(批准した50カ国+EU)
アルバニア、ベラルーシ、ベナン、ブータン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、コモロ、コートジボワール、デンマーク、エジプト、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、グアテマラ、ギニアビサウ、ガイアナ、ホンジュラス、ハンガリー、インド、インドネシア、 ヨルダン、ケニア、ラオス、マダガスカル、モーリシャス、メキシコ、ミクロネシア、モンゴル、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ニジェール、ノルウェー、パナマ、ペルー、ルワンダ、サモア、セイシェル、南アフリカ、スペイン、スーダン、スイス、シリア、タジキスタン、ウガンダ、ウルグアイ、バヌアツ、ベトナム、欧州連合(EU)*2
  [(*2)上記のCBDプレスリリース中の記載より抜粋和訳]


ここでおわかりのように、(名古屋議定書の提案国でありながら)日本はまだ批准していません。現在環境省などで、批准のための国内措置の整備について準備中であり、批准は、年内はおそらく難しく、来年以降になるのではないかと思われます。なお、国内での検討状況は下記の報告書が参考になります。

・名古屋議定書に係る国内措置のあり方検討会報告書(2014/3)
http://www.env.go.jp/nature/biodic/abs/conf/conf01-rep20140320.html

遺伝資源の利用国になりそうな先進国では、EUの対応が先行しています。前述の通り日本は未批准ですし、米国に至っては、名古屋議定書の前提となる「生物多様性条約」自体について未だに、批准すらしていません。


2. 名古屋議定書とは(これまでの経緯)


生物多様性条約(CBD)は、(1)生物の多様性の保全、(2)その構成要素の持続可能な利用、及び(3)遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的とするものです。

Cbd_nagoya_protocol_3

特にCBDの第15条には、遺伝資源の取得機会について規定されており、具体的には、

  ・各国は、自国の天然資源に対して主権的な権利を有すること

  ・遺伝資源の取得の機会については、その資源が存する国の政府に権限があり、その国の国内法令に従うこと。

  ・遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、利用者は、遺伝資源の提供国による、事前の情報に基づく同意(PIC、Prior Informed Consent)を要すること。

  ・遺伝資源の研究、開発、商業的利用等での利用から生ずる利益は、遺伝資源の提供国と、公平かつ衡平に配分する。またその配分は、相互に合意する条件(MAT、Mutually Agreed Terms)(契約)で行うこと。


などが明記されています。
これは、遺伝資源の提供国(遺伝資源を持つ原産国及び供給源から入手した遺伝資源を提供する国)と、遺伝資源の利用国の利害を調整するためのものです。

ただし、ここで問題となるのが、遺伝資源の提供国は、多くの場合、途上国であり、それを利用するような技術も資本もないことが多い一方で、遺伝資源の利用国は、多くの場合、先進国であり、もっと以前には、先進国が、途上国の遺伝資源を一方的に持ち出して、利用し、特許まで取得してしまうといった状況が生じていました*3

  [*3) 例えば、インフルエンザ治療薬「タミフル」は、中国原産の植物の実、八角(トウシキミの実)の抽出物質で作られますが、(遺伝資源提供国である)中国はタミフル販売による利益を享受できていないという立場である]

要するに、このような遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)の問題は、遺伝資源の提供国(多くの場合、途上国)と、利用国(多くの場合、先進国)との対立の図式であり、南北問題的な対立の要素が色濃くあるものです。

遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)への対応については、遺伝資源提供国の国内法を遵守することが原則ですが、国内法等がない場合については、2002年のCOP6で採択された「ボン・ガイドライン」に従うことが推奨されていました。ボン・ガイドラインでは、CBD15条(前述)の手続きをより明確にした指針がしめされておりましたが、これはあくまでも任意のガイドラインであるため、法的な拘束力はなく、遺伝資源へのアクセス手続きも明確な形にすることは求められていませんでした。

この状況は、遺伝資源の提供国(多くの場合、途上国)と、利用国(多くの場合、先進国)の双方にとっても、不満が残る状況でした。

そこで、2010年の第10回の締約国会議(COP10)において、ABSの問題が議論されましたが、双方の隔たりは大きく、合意は難しい状況になりましたが、最終段階で議長国である日本の提案が採用されることになり、これが「名古屋議定書」として採択されました。

つまり、「名古屋議定書」は、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)について、各国に国内措置を義務づけし、手続きについても明確化を図るためのものです。ポイントは下記の通りです。

  ・遺伝資源提供国には、アクセスに関する透明性のある手続きの明確化

  ・利用国については、遵守措置の設置の義務づけ

  ・情報交換の仕組み(クリアリングハウス)の設置



日本は、議定書の提案国であったにもかかわらず、結局、国内措置などの体制の整備が遅れ、批准するための準備が整わず、名古屋議定書の発効のための最初の50か国には入れませんでした。


3. 知財実務への影響

・特許出願における「遺伝資源の出所開示」
生物多様性条約の第15条の関係では「ボン・ガイドライン」において、特許出願の際に遺伝資源の出所開示が奨励されていたことから、特許出願時の明細書に「遺伝資源の出所開示」の義務付ける国が、すでに多く存在していました。主なところでは、インド(インド特許法10条)や中国(専利法26条)などでは、そのような出所開示を出願明細書においてすることが実際に求められています。

・ABSについての国内措置(国内法)との関係
また、ABSについて独自の国内法を設けていて、違反の場合に、行政処分や、出願の拒絶や特許の無効などを規定している国もあります。すなわち、遺伝資源の適法に入手されていることの証明や、その国で事前承認を受けていない場合には、その国での特許出願自体ができなくなる場合もあります(例えば、インドの生物多様性法第6条)。*4

したがって、出願に係る発明や明細書中で使用しているもの(実施例や比較例においても)について、遺伝資源に関するものがあるときは、それがどのような起源(出所)のものであり、また適法に入手されたものであるかについて、確認しておく必要があります。

  [*4) 例えば、ペルーは以前、自国の遺伝資源や伝統的知識を無断で利用していると考える特許出願や特許(日本を含む主要国の特許)について、名指しでリスト(出願番号、出願人を含むもの)を公表し、国際社会に向かって非難をしたことがありました。これに対して、多くの企業・団体が(真偽の立証をすることなく、風評を気にして)出願や特許を取り下げるということがありました。このときは、日本の企業(化粧品会社)も日本の特許出願を取り下げたものもありました]。


・品種登録に関して
品種登録に関しても、遺伝資源に基づく知的財産権の取得という観点からは、特許と同様の問題が生じ得ます。例えば、品種登録出願の出願書類中に、出願品種に関して遺伝資源の出所開示の記載を求める法制をとっている国も既にあるようです(例えば、タイ)。また、自分で出願するに際しても、自身の育成した品種について、その起源(親品種やさらにそれ以前)を含めて、遺伝資源の出所や、それが適法に入手したものであるかについて、確認しておく必要があります。

・今後の影響は
名古屋議定書が発効されること自体に関しては、それが、この「遺伝資源の出所開示」の問題などにすぐに直接的な影響を及ぼすことはなさそうです。

ただし、名古屋議定書締約国においては、ABSに関する国内措置が義務づけられることになりますので、特許出願時の明細書に「遺伝資源の出所開示」の義務付けようとする国や、特許出願の拒絶や特許の無効も視野にいれたABSの独自の国内法を設ける国が増えてくる可能性が多分にあります。

既に批准した国ももちろん、これから批准する国について、知財の観点でどのような制度があるか(新たに制定されているか)について、今後、充分に注意しておく必要がありそうです。



*************************************

参考資料:

生物多様性条約(外務省サイト):

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html



名古屋議定書(和文(仮訳)、英文)(外務省サイト):
[名古屋議定書: 遺伝資源の取得の機会の提供及び提供された遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分するための国際ルールを定める議定書]

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_72.html


カルタヘナ議定書(和文、説明書など)(外務省サイト):

[カルタヘナ議定書: 遺伝子組み換え生物による生物多様性の保全及び持続可能な利用への悪影響を防止するための輸出入の手続等について定める議定書]

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty156_6.html


「世界の特許出願時の遺伝資源の出所開示に関する法律についての運用の調査報告書」、パテント、2011年、Vol.64, No.12, pp30-

http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201109/jpaapatent201109_030-038.pdf


                                                     以上 

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2014年6月17日 (火)

行政不服審査法の抜本改正と、品種登録出願の拒絶への不服申立(2/2)

 

   [Summary]

   <記事の小項目>

   (前回記事)
   1.はじめに
   2.知財業務における行政不服審査法
   3.品種登録出願業務における行政不服審査法

   (今回)
   4.行政不服審査法の抜本改正のポイント
   5.拒絶処分に対する不服申立手続への影響
.
        
 
 




    
4.行政不服審査法の抜本改正のポイント

主な改正のポイントは下記の通りです。

(1) 審理において、職員のうち(不服申立の対象の)処分に関与しない者(審理員)が、不服申立人(審査請求人)と処分庁の両者の主張を公正に審理する。
  (現行法では、審理を行う者について法律に規定がなかったため、処分を行った関係者が審理に関与することも可能)

(2) 裁決について、有識者からなる第三者機関が事前に点検を行い、第三者視点での審査庁の判断の妥当性をチェックする。
   (現行法にはそのような手続きも第三者機関についても規定はない。改正により裁決の公正性が向上されることが期待される)。

(3) 不服申立をすることができる期間が「60日」から「3ヶ月」に延長される。

(4) 不服申立の手続きが「審査請求」に一元化される。
   (現行法にある「異議申立」がなくなり、「審査請求」に一元化される)

(5) 審理手続きにおいて、不服申立人の権利が拡充される、など。
   (現行法では処分に係わる行政庁内の証拠書類等の閲覧のみが可能であったが、改正法により謄写もできるようになる等)。



Photo


2


(図の出典:「行政不服審査法関連三法案の概要」
(総務省、
http://www.soumu.go.jp/main_content/000279329.pdf)より)


(6) 行政不服審査法の改正に伴う関係法の改正 (→特許法や種苗法の一部改正)

 行政不服審査法の今回の改正に関連して、関係法の改正に関する「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」も同様に成立しています。(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18605071.htm
 特許法(実用新案法、意匠法、商標法も同様にありますが省略します)と、種苗法について、同法律の該当部分を以下に抜粋します(備忘のため)。

(特許法の一部改正)
第二百二十七条 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)の一部を次のように改正する。
  第九十一条の二中「行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による異議申立て」を「行政不服審査法(平成二十六年法律第▼▼▼号)の規定による審査請求」に改める。
  第百三十一条の二第四項、第百四十三条第三項及び第百四十九条第五項中「決定」の下に「又はその不作為」を加える。
  第百八十四条の二を次のように改める。
  第百八十四条の二 削除
  第百九十五条の四の見出し中「による不服申立て」を「の規定による審査請求」に改め、同条中「又は審決」を「若しくは審決」に、「請求書又は」を「請求書若しくは」に改め、「処分」の下に「又はこれらの不作為」を加え、「による不服申立て」を「の規定による審査請求」に改める。

 (種苗法の一部改正)
第二百九条 種苗法(平成十年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
  第十四条第四項中「行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)に基づく異議申立て」を「審査請求」に、「決定」を「裁決」に改める。
  第五十一条の見出し中「異議申立て」を「審査請求」に改め、同条第一項を次のように改める。
   品種登録についての審査請求については、行政不服審査法(平成二十六年法律第▼▼▼号)第十八条の規定は、適用しない。
  第五十一条第二項中「行政不服審査法に基づく異議申立て」を「審査請求」に改め、同条第三項中「農林水産大臣」を「行政不服審査法第十一条第二項に規定する審理員」に、「異議申立て」を「審査請求」に改める。

  
.

5. 拒絶の処分に対する不服申立手続への影響 (管理人によるコメント)

(1) (品種登録出願の)拒絶の処分に対して、行政不服審査法に基づく不服申立の手続が「異議申立」から「審査請求」に変わる。

   → 法上は、従来の異議申立は、処分庁からの説明を受ける機会が与えられていないなど「審査請求」とは手続が異なっていたという点がありましたがこの点が解消すると言えます。ただし、(拒絶の処分に関する)実務上は、ほとんど利用しないところと思いますので、実際問題としては、これまでとほとんど違いがない、という状況に近いと思います。 (不服申立の名称が「審査請求」となりますので、この点で拒絶の処分の書類など記載ぶりが若干かわる、といった程度の影響だと思います)。
.

(2) 拒絶の処分に対して、行政不服審査法に基づく不服申立(審査請求)をする場合、期限が、拒絶の処分があったことを知った日から60日以内ではなく、「3ヵ月」以内に延長される。

   → 特許法における手続と違い、品種登録出願の手続や行政不服審査法による手続は、発信主義ではなく、到達主義での対応となりますので、現行の「60日」というのは、実際に対応してみると、かなり短く感じます。期間が実質的に1ヵ月ほど延びることは、実務上は、手続を取ろうとする側にとっては、かなり有り難いと思います。
.

(3) 不服申立に関する農水省内での審理手続が、より公正化・透明化される。

  → 現行法では、異議申立をした場合、その審理を行う者は規定がありませんでした。特に異議申立の場合、処分庁と審査庁が同一であることから、拒絶の処分を行った審査官が、異議申立の審理にも関わることは特に、禁止されていません。

実際、拒絶の処分に対する異議申立をするに際して、この点を農水省(種苗審査室)側に質問したことがありますが、少なくとも私の場合、処分を行った者を、異議申立に関与させないようにしているとの話は特段ありませんでした。(法律がそうなっていないのですから当然といえば当然かもしれません)。

ところが、特許法などでは、拒絶査定を行った審査官は、拒絶査定不服審判において審判官として関与することはできません(特許法第139条1項6号で審判官の除斥理由となっています)。

不服を申し立てる側からすれば、申立の対象となる処分に関与した者が、不服申立の審理に関与するとすれば(そのような可能性がある場合でも同様)、審理の公正さや客観性に疑いを持ちたくなります。少なくとも、不服申立が却下された場合、納得感はなく、依然として不満が残った形になる可能性が高いと思います。

個人的には、不服申立の性格上、前審(処分)に関与した者が不服申立の審理に関与できないとすることを明確にすること、および、審理する主体を明確にすることは、最低限必要なのではないかと、感じていました。

今回の改正により、この点が大幅に改善される見通しです。すなわち、処分に関与していない者(審理員)が審理することが法上、明確にされ、また裁決前に、第三者機関のチェックを受けることも可能となります。今回の改正では、この点は、実務上とても歓迎すべきことと考えています。

.

  
  <さらに深く知るための資料>

  総務省webページ、行政不服審査法:
  http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/fufuku/

                                           以上

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2014年6月16日 (月)

行政不服審査法の抜本改正と、品種登録出願の拒絶への不服申立(1/2)

 

 [Summary]

   <記事の小項目>
   1.はじめに
   2.知財業務における行政不服審査法
   3.品種登録出願業務における行政不服審査法
    (次回記事)
   4.行政不服審査法の抜本改正のポイント
   5.拒絶処分に対する不服申立手続への影響)




1.はじめに

行政不服審査法の改正法案が、6月6日に残っていた参議院で承認され成立しました(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DB82BA.htm)。1962年の法制定以来、初めての抜本的な大改正となります。施行は2年以内とのことです。

改正法:
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g18605070.htm

特許、実用新案、意匠、商標に関する制度に比べると、品種登録出願や登録品種に関する手続には、行政不服審査法に基づく不服申立手続を利用する可能性が高いといえる面がありますので、今回は、行政不服審査法の改正のポイント、品種登録出願における関連、改正に伴う影響などについて、少しまとめておこうと思います。

2回にわけて上記の[Summary]にあるような内容の順で整理しようと思います。


2. 知財業務における行政不服審査法

弁理士業務(特に、特実意商の4法の権利化業務)をしていて、行政不服審査法が業務に関わってくることは、正直なところ、かなり希なケースだと思います。私自身、特許に関する業務をメインにしていますが、これまで行政不服審査法のお世話になったことは未だありません。特許実務をしていて行政不服審査法のお世話になりそうなものとして思いつくのは(実際の裁判例などでみかけるものは)、国内書面(特許法184条の5の書面)や翻訳文の提出が期限に間に合わなかったと認定されてしまったり、特許の維持年金の納付期限を徒過したと認定されたりした場合に、それを覆そうとするようなケースなどです。こういった裁判例などでよく見かけるもの以外にも、他にいろいろケースはあるかもしれませんが、いずれにしても、知財業務の関連では、普段はあまり行政不服審査法のお世話になることは少ないと思います。

ただ一般的には、税務関連などの認定や、各自治体での行政判断などに対して、行政不服審査法に基づく不服の申立がたくさんなされてようです。

(総務省の統計によれば、平成23年度の不服申立件数、
     国:   約30,000件 (認容率:10.6%、9割が1年以内に処理)、
     地方自治体件:   約18,000万件 (認容率:2.8%)
     行政事件訴訟第一審(H24年):   約2000件)*。

      (*)総務省、行政不服審査法等の施行状況に関する調査結果、
           http://www.soumu.go.jp/main_content/000246555.pdf
           http://www.soumu.go.jp/main_content/000246557.pdf      )


3. 品種登録出願業務における行政不服審査法

このブログのテーマ関連(品種登録関連)ですと、実は、行政不服審査法にお世話になるかもしれない場面が、通常の業務の権利化手続の流れの中で起こり得ます。すなわち、出願の拒絶の処分を受けた場合に、拒絶処分に対して不服申立をする場面です。

品種登録出願を出願すると、登録要件(区別性、安定性、均一性など)を満たすか否かが審査されますが、登録要件をみたしていないと判断されますと、特許出願の審査と同様に、拒絶理由通知が発行されます。この拒絶理由通知に対しては、出願者は、意見書(必要でれば補正書も)を提出して反論することができますが、意見書による反論が拒絶理由を覆すに足るとは認められないと、「拒絶」の処分がなされます(種苗法第17条)(特許法等でいうところの「拒絶査定」に相当します)。

種苗法には、特許法における拒絶査定不服審判のような、審査の上級審という観点での審判制度がそもそもありません。このため、品種登録出願において拒絶の処分を受けると、原則に従い、一般の行政処分の不服申立手続に従って、拒絶処分という行政処分を争うことになります。

ここで不服申立の手続として、2つ選択できます。

 (1) 行政不服審査法に基づき農林水産大臣に対して異議申立する

    (処分があったことを知った日(実務上は、農林水産省(農林水産大臣)から配達証明付き郵便にて拒絶の処分に関する書面を受けとった日)の翌日から起算して60日以内)

 (2) 行政事件訴訟法に基づき、国を被告として、処分の取消の訴えを提起する

    (処分があったことを知った日から6月以内)

実務的には、(1)の方を選択する場合が多いのではないかと思います。すなわち、いきなり裁判所手続に行く方(つまり(2))は出願者的には心理的ハードル(コストも?)が高い面があり、また、異議申立が棄却された場合にもさらに、それを行政事件訴訟よる取消訴訟で争う余地のあることから、まずは(1)の方を選択しやすいのではないかと考えるからです。

つまり、品種登録出願の手続きにおいては、特許出願手続きでいうところの拒絶査定不服審判と同じ段階で、行政不服審査法に基づく異議申立(**)を行うことが必要になる場面が起こりうるということになります(***)。

**)行政不服審査法(現行法)による不服申立としては、「審査請求」と「異議申立」とがあります。「審査請求」は、処分を行った処分庁の上級行政庁に処分の適否の審査を求める手続きである一方、「異議申立」は、処分庁に上級行政庁がない場合に、処分庁に対して処分の取消を求める手続きです。品種登録出願の拒絶の処分の処分庁は、「農林水産大臣」となりますが、「農林水産大臣」には上級行政庁が存在ないことから、拒絶の処分に対して不服を申し立てる場合には、「異議申立」のみとなります。

***)なお、他に、品種登録関連の手続きで行政不服審査法が関連してくる場合としては、登録されている品種登録について、登録されたという行政処分自体を不服として申し立てる(異議申立)することができます(種苗法51条1項等)。

今回、行政不服審査法が大改正されることとなったことから、この拒絶の処分に対する不服申立を行う際にも手続上、さまざまな影響でることになりました。

    <<行政不服審査法の抜本改正のポイントについては次回(2/2)記事で扱います>>

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          (拒絶の処分のサンプル)

                                                以上

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