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品種保護(制度実務)

2018年1月30日 (火)

品種登録出願システム(電子出願・電子納付)の説明会

久しぶりの更新となりました。

先週26日に、農林水産省の主催の品種登録出願システムの説明があり参加してきました。

普段は、特許出願等について特許庁のインターネット出願のシステムに馴染みがありますが、それとは全く別に、品種登録出願について電子出願が可能なシステムが導入されることになりました。

説明会では、システムの概要、使い方などについて、詳しい説明がありました。

下記の図は、今回の説明会のものではなく少し前に資料にあったイメージ図です。

Denshisystemim2016

出典: 資料 「国内外における品種保護をめぐる現状」(農林水産省、平成28年12月9日)


次のような点が、今回の説明会で分かった点、気になった点です。

・今回、運用が開始されるシステムは、出願手続と、登録料の納付および登録維持年金の納付を電子化するシステムである。

・これまでの紙による出願手続も、電子化システムと併存させ、今後も利用可能。

・電子出願では、願書は、web上のシステムのサイトで表示される画面で入力する一方、説明書や写真はpdf化してアップロードする。

・委任状や譲渡証もpdfでアップロードする(原本提出不要)。

・農水省側からの発送書類(出願番号通知や拒絶理由通知書など)は、これまでどおり郵送される。
 特許庁のシステムのように発送書類は電子ルートで送られては来ない。

・自主補正書等の中間処理的な提出書類も、今後、電子ルートで提出可能になる予定。


・システムは24時間稼働。したがって、日付けかわるギリギリのタイミングでもその日の出願日で出願が可能となる。
 (これまでの紙での出願や書面提出は、到達主義の上に、窓口は午後5時半には閉まってしまうため、それ以降の時間でその日の手続は不可でした)。

・登録料納付や登録維持年金の納付については、納付したい登録番号の画面を呼び出したら、納付年度だけを操作して納付処理するだけで、料金の電子納付が完了できる。 操作が簡単で、誤記や、誤納付など間違いがし難くなるので、とても有用そうである。

・システムの運用開始は、予定(2月)より少し遅れ、3月末頃の予定。


・他にもいろいろありますが(資料が86枚もあります・・)、長くなるので以下省略。。。。


システムが実際に運用開始されましたら、積極的にいじってみたいと思います。

以上

2016年11月24日 (木)

交配等の育種方法により得られる植物と、「不可能・非実際的事情」(審決例より)

今日(11/24)は、写真のように雪が降っています。11月に東京に初雪が降るのは54年ぶりということだそうです。

Hikaku2016

(写真の左が今日の写真で雪が降っています。左の写真は数日前の秋晴れの様子です)。

今回は、「交配等の育種方法により得られる植物」と、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの扱いについて、特許審決例での判断を参考に、確認していきたいと思います。


[1] 「交配等の育種方法により得られる植物」に関するクレーム

交配などの手段によって新たな植物品種について、特許化しようとすると、その植物品種自体をクレーム(特許請求の範囲)に記載したい場合、クレームの記載は、「交配等の育種方法により得られる植物」といった形式にならざるを得ない、といったことがしばしば起こるかと思います。

交配等の育種方法により得られる植物に関する発明のクレームは、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合)になります。


[2]プロダクト・バイ・プロセス・クレームと、審査におけるその取扱い

現在は、特許庁における審査においては、プロダクト・バイ・プロセス・クレームが記載されている場合、昨年2015年6月5日に言い渡された最高裁判決(平成24年(受)1204号、同2658号)の影響もあり、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確(特許法第36条第6項第2項違反)であるという拒絶理由を通知されることになっています。

ここで、「不可能・非実際的事情」とは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情をいうとされています。

したがって、プロダクト・バイ・プロセスの形式で記載された発明について、「不可能・非実際的事情」があると判断されれば、発明不明確(特許法第36条第6項第2項違反)には該当しないということになります(この点について明確に反論できれば、拒絶理由も解消することになります)。

そこで問題となるのが、「不可能・非実際的事情」があると判断されるのはどのような場合か、ということになります。

この点は、「審査ハンドブック」(特許庁)の2205項に、「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合の審査における「不可能・非実際的事情」についての判断」として、具体的に記載されています。

今回問題にしている「交配等の育種方法により得られる植物」がどう扱われるのか、について、今年9月末にその具体例として、審査ハンドブックの2205項に、今回ご紹介する審決が加えられましたので(ハンドブックには審決の詳細はありませんので)、ここで確認していきたいと思います。


[3]審決例


 (a) 事件の表示


 出願番号:  特願2009-163308号(特開2011-15648号公報)
 審判番号:  不服2014-10863号
 発明の名称: 「ダウクス属植物の育種方法、およびダウクス属植物」
 審決発行日: 2016年8月26日


 (b)特許されたクレーム(抜粋)


【請求項1】
 工程1-1 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物を、これとは異なるダウクス属植物である黒田五寸と交配させ、次世代を得る工程、
 工程1-2 該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培する工程、及び
 工程1-3 栽培後の該次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜する工程
を有し、
 さらに、工程1-3で選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって、前記特徴を固定することを特徴とする、栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物の育種方法。

【請求項2】 (省略)


【請求項3】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物とこれとは異なるダウクス属植物である黒田五寸との交配によって次世代を得、
 該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られる、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物


【請求項4】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物と、これとは異なるダウクス属植物である黒田五寸との交配によって得られる、
 栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物。

【請求項5】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物とこれとは異なるダウクス属植物である黒田五寸と交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られ、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物を、
 これとは異なるダウクス属植物と交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られる、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物。


【請求項6】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物と、これとは異なるダウクス属植物である黒田五寸との交配によって得られ、かつ栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物と、
 これとは異なるダウクス属植物との交配によって得られる、
 栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難いダウクス属植物。


【請求項7】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物。


【請求項8】
 請求項3〜7のいずれか1つに記載のダウクス属植物の一部。


【請求項9】 (省略/採種方法クレーム)

【請求項10】
 受託番号FERM P-21824で特定されるダウクス属植物とこれとは異なるダウクス属植物である黒田五寸とを交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られ、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物を、
 これとは異なるダウクス属植物と交配させて次世代を得、該次世代を、その根部の肩部分が地上に露出するように栽培し、栽培後の次世代から、前記露出部分の着色が少ない個体を選抜し、さらに、該選抜された個体から採種して得られた次世代の栽培及び選抜を繰り返すことによって得られ、
 栽培中に根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い特徴を備えるダウクス属植物を、雄性不稔のダウクス属植物と交配させて得られる、雑種第一代のダウクス属植物の種子。

【請求項11】
 請求項10に記載のダウクス属植物の種子の栽培によって得られたダウクス属植物又はその一部。



 (c)審決(抜粋)

3 拒絶理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
 事案に鑑み、まず、請求項4について検討する。
 拒絶理由2に対して、請求人は、植物交配種の遺伝子を解析することは膨大な時間と労力を要するうえ、たとえ解析したとしても、「栽培中、根部の肩部分が地上に露出しても、該露出部分が着色し難い」という特性には複数種類の遺伝子が関与していることが想定され、出願時において該遺伝子を特定することは困難を極めることであったから、請求項4記載の「ダウクス属植物」をその構造又は特性により直接特定することには不可能・非実際的事情が存在する旨主張する。
 上記主張について検討するに、植物の交配育種の技術分野においては、親系統を交配して得た後代の中から選抜された特定の性質を示す個体をさらに交配し、当該性質を遺伝的に固定するのが常套手段であるところ、当該性質の基になる遺伝子を特定するには、多数の交配種それぞれの遺伝子を解析するという、膨大な時間及び労力が必要であると認められる。そのうえ、植物の特性には複数種類の遺伝子が関与していることが通常であり、本願発明のように、親系統の両方が所定の性質を有していない場合にはなおさら複数遺伝子間の複雑な相互関係が想定され、その解析には大きな困難性が予測される。よって、請求人が主張する上記事情は、出願時において物の構造を解析することが技術的に不可能であった場合に該当し、最判平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号および同2658号に判示された「不可能・非実際的事情」が存在すると認められ、請求項4に係る発明は特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえる
 また、同様の理由から、請求項3、5、6、8、10及び11に係る発明も「発明が明確であること」という要件に適合するといえる。
 したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件に適合すると認められる。」


【コメント】

・交配等による育種方法により得られた植物については、審決の判断で示されたような観点は当てはまることが多いと思われるので、同様の発明を権利化する際に、「審決の判断」はとても参考になりそう。

・特許庁から、「交配等による育種方法により得られた植物」について、プロダクト・バイ・プロセス・クレームとして扱ってくれることが(一具体例ではあっても)明確に示されたことは、今後の実務において一つの安心材料になりうる。

・ただし、出願時において植物に「不可能・非実際的事情」があったことの主張は、育種技術の場合、「再現性」、「反復可能性」の問題を含む実施可能要件(特許法第36条第4項第1号違反)の方に問題が生じかねないので、慎重に(熟考して)主張する必要がありそう。
(なお、最後の点は、この審決でも別途指摘されているところなので、機会があればブログでもとりあつかいたいと思います)。

<参考>
●特許庁HP、「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査の取扱いについて」
https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C151125.htm

●特許庁HP、審査ハンドブックの「2205」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/handbook_shinsa_h27/02.pdf#page=32

以上

2016年4月24日 (日)

【品種登録】 「職務育成品種」と、改正「職務発明」


種苗法上の「職務育成品種」と、このたび改正された特許法上の「職務発明」とについて考えてみたいと思います。

(昨年中より、この問題は相談を含め、いろいろ話が出ていたところですが、改正特許法も施行されましたので、このブログにも記録をかねて残しておきたいと思います)。

201604syurohana_2

棕櫚(シュロ)の木に花が咲いているのをみつけました。


種苗法には、「職務育成品種」についての規定があります(種苗法第8条)。すなわち、職務上、従業者としての育成者が育成した品種の帰属について定めたものです。

下記の種苗法の条文から分かりますように、従来の特許法上の職務発明制度を踏襲して、基本的な考え方として、職務育成品種については、原始的に、育成者に帰属することになっています。
 

----------------------------------------------
種苗法/(職務育成品種)

第8条

 従業者、法人の業務を執行する役員又は国若しくは地方公共団体の公務員(以下「従業者等」という。)が育成をした品種については、その育成がその性質上使用者、法人又は国若しくは地方公共団体(以下「使用者等」という。)の業務の範囲に属し、かつ、その育成をするに至った行為が従業者等の職務に属する品種(以下「職務育成品種」という。)である場合を除き、あらかじめ使用者等が品種登録出願をすること、従業者等がした品種登録出願の出願者の名義を使用者等に変更すること又は従業者等が品種登録を受けた場合には使用者等に育成者権を承継させ若しくは使用者等のため専用利用権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。 


2  従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより、職務育成品種について、使用者等が品種登録出願をしたとき、従業者等がした品種登録出願の出願者の名義を使用者等に変更したとき、又は従業者等が品種登録を受けた場合において使用者等に育成者権を承継させ若しくは使用者等のため専用利用権を設定したときは、使用者等に対し、その職務育成品種により使用者等が受けるべき利益の額及びその職務育成品種の育成がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定められる対価の支払を請求することができる。


3  使用者等又はその一般承継人は、従業者等又はその承継人が職務育成品種について品種登録を受けたときは、その育成者権について通常利用権を有する。

----------------------------------------------
 

一方で、今回の特許法の改正(平成28年4月1日施行)では、職務発明制度についても大幅な改正がなされました。一番の重要な改正は、従業者等がした職務発明について、一定の条件のもとで、特許を受ける権利を、発生時から使用者等に帰属させることが可能となった点です。

なお、この4月22日に、職務発明に関するガイドライン(新設の特許法35条6項に規定)も公表されました。
    ● 特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)
              http://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/shokumu_guideline.htm

 
このため、職務発明では、一定の条件のもと、(特許を受ける権利を)原始的に使用者に帰属させることが可能になった一方で、職務育成品種については、従来どおり、(育成者権を受ける権利は)原始的に、育成者に帰属することになります。

つまり、職務発明と職務育成品種では、取扱いが
(原始的に権利を取得する主体が)全く異なることが起こり得ます。

例えば、今回の特許法改正にあわせて職務育成規定を大幅に変更した場合に、職務育成品種についても、そのまま同じように変更してしまうと、種苗法に反する場合が生ずることになりますので、注意が必要です。

 
社内規定で、職務発明と、職務育成の両方を定めなければならない場合には、それぞれ別々の規定(社内制度)を設ける必要があるかもしれません。つまり、職務発明については、今回の改正特許法とガイドラインにそった規定を設ける(改訂する)一方、職務育成品種については、従来の職務発明等の制度にならった規定を維持する必要があるかもしれません。企業によって状況やそれへの対応はいろいろだとは思いますのが、確認は必要だと思います。


最期に参考として、これまでの職務発明規定(特許法35条)の条文改正の変遷をまとめました。

下記をみてもわかりますが、現状の種苗法8条は、特許法でいうところの昭和34年法を踏襲した状態で止まっており、特許法では職務発明訴訟の乱訴のような問題に対してその後手当された改正(例えば、平成16年改正)もされていません。従業者と使用者との関係は、発明と育種とでは、いろいろ違いはあるのかもしれませんが、現在の種苗法8条は、そのような検討もされることなく、(古い特許法に倣ったままで)単に放置されているように見えます。

農水省の方からは、今回の特許法改正に関連して、職務育成品種に関する制度(種苗法8条)を改正しようという動きは、(管理人の知る限り)今のところ聞こえてきません。

種苗法8条(職務育成品種の規定)についても
、特許法での改正(職務発明制度の改正)の状況や経緯からすれば、改正の検討が必要な段階にきているのではないでしょうか。

 

Shokumuhatumeihikaku


 
<参考>
下記の農水省の検討会で、平成16年特許法改正後に、職務育成品種の改正について検討がされたようですが、このときは、現状維持との判断で落ち着いているようです。

●第4回  植物新品種の保護に関する研究会議事概要
http://www.maff.go.jp/j/study/other/sinsyu_hogo/pdf/kenkyu_gaiyou04.pdf

 
以上

2015年7月29日 (水)

【品種登録】 H27 (2015).6.24言渡 知財高裁 平成27年(ネ) 10002号育成者権侵害差止等請求控訴事件

 育成者侵害事件に関する知財高裁の判決が、2015年6月24日判決言渡されましたので、ご紹介します。

【平成27年6月24日判決言渡(知財高裁 平成27年(ネ)第10002号 -育成者権侵害差止等請求控訴事件)] ~ 「なめこ」事件(控訴審事件)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/183/085183_hanrei.pdf

これは、以前*、紹介しました「なめこ」の品種登録に基づく育成者侵害事件の東京地裁の判断の控訴審の判決です。(*本記事末尾に参考資料欄あり)


【ポイント】
種苗法における「現物主義」の考え方・実務への適用に関して、非常に示唆に富む判決です。

【事案の概要】
 原審事件(東京地裁平成21年(ワ)47799,平成25年(ワ)21905)は、「なめこ」の登録品種(下記)について育成者権を有する原告(本件の控訴人)が、被告ら(被告組合A及び被告会社B)(本件の被控訴人ら)は、原告の許諾の範囲を超えて又は原告の許諾なく、本件登録品種又はこれと重要な形質に係る特性により明確に区別されない「なめこ」の種苗の生産等をすることにより、本件育成者権を侵害してきたものであるとして、種苗の生産等の差止め、種苗の廃棄、信用回復の措置としての謝罪広告、並びに不法行為(育成者権の侵害)に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案であった。
 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人がこれを不服として控訴した。
 本件は、上記原審の控訴審事件である。

   品種登録の番号    第9637号
   登録年月日      平成13年11月22日
   出願年月日      平成9年12月24日
   農林水産植物の種類  なめこ
   登録品種の名称    KX-N006号 (出願時の名称は「東北N006号」)
   品種登録データベースのリンク: http://www.hinsyu.maff.go.jp

Nameko9637_2

 (写真出典: 品種登録データベースより)



【判旨】
<主文>

 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。

<裁判所の判断>
『 当裁判所も,争点1に関し,被控訴人組合が控訴人の許諾の範囲を超えて,また,被控訴人会社が控訴人の許諾なく,本件登録品種又はこれと特性により明確に区別されないなめこの種苗の生産等をしたと認めることはできないから,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

 1 育成者権侵害の存否に関する判断基準について
  ・・・・。
 そして,法は,育成者権の及ぶ範囲について「品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種」を「業として利用する権利を専有する」と定める(法20条1項)ところ,ここに,「登録品種と特性により明確に区別されない品種」とは,登録品種と特性に差はあるものの,品種登録の要件としての区別性が認められる程度の明確な差がないものをいう。具体的には,登録品種との特性差が各形質毎に設定される階級値(特性を階級的に分類した数値)の範囲内にとどまる品種は,ここにいう「登録品種と特性により明確に区別されない品種」に該当する場合が多いと解されるし,特性差が上記の範囲内にとどまらないとしても,相違する項目やその程度,植物体の種類,性質等を総合的に考慮して,「登録品種と特性により明確に区別されない品種」への該当性を肯定することができる場合もあるというべきである。
 ところで,品種登録の際に,品種登録簿の特性記録部(特性表)に記載される品種の特性(法18条2項4号)は,登録品種の特徴を数値化して表すものと理解することができるが,品種登録制度が植物を対象とするものであることから,特性の評価方法等の研究が進展したとしても,栽培条件等により影響を受ける不安定な部分が残ることなどからすると,栽培された品種について外観等の特徴を数値化することには限界が残らざるを得ないものということができる
 このような,品種登録制度の保護対象が「品種」という植物体の集団であること,この植物の特性を数値化して評価することの方法的限界等を考慮するならば,品種登録簿の特性表に記載された品種の特性は,審査において確認された登録品種の主要な特徴を相当程度表すものということができるものの,育成者権の範囲を直接的に定めるものということはできず育成者権の効力が及ぶ品種であるか否かを判定するためには,最終的には,植物体自体を比較して,侵害が疑われる品種が,登録品種とその特性により明確に区別されないものであるかどうかを検討する(現物主義)必要があるというべきである。 
     ・・・・・・・』
  (判決文中、・・は管理人による省略を意味する)


→(コメント)
 ・「育成者権の効力の及ぶ範囲」について、裁判所の考え方が示されている。
 ・品種登録簿の特性記録部(特性表)に記載される品種の特性について、特許法のようにこれをクレームと同様に考えて、特性表が育成者権の範囲を直接定めるという立場があるが(「特性表主義」または「クレーム主義」)、裁判所は「審査において確認された登録品種の主要な特徴を相当程度表すものということができる」と一定の評価をしつつも、「育成者権の範囲を直接的に定めるものということはでき」ないとして、明確にその立場(主義)を否定している。
 ・裁判所は、「育成者権の効力が及ぶ品種であるか否かを判定するためには,最終的には,植物体自体を比較して,侵害が疑われる品種が,登録品種とその特性により明確に区別されないものであるかどうかを検討する必要があるというべき」として、「現物主義」をとる必要性を明確に認めている。



『 2 本件鑑定嘱託の結果について
 ・・・・・・
 (2)  鑑定嘱託の結果の採否について
 ア K1株と,K2株ないしG株との特性上の異同について
  ・・・・・・
 よって,本件鑑定書に記載の鑑定嘱託の結果に基づいて,K1株(種苗管理センターに寄託された本件登録品種の種菌株)と,その余の2つの供試菌株であるK2株(控訴人が本件登録品種の種菌として保有していたと主張する種菌株)ないしG株(被控訴人会社の販売するなめこから抽出した種菌株)とが「特性により明確に区別されない」と認めることはできない
 イ K2株とG株との特性上の異同について
 ・・・・・・・・・
 以上の点を総合的に考慮すると,K2株とG株とは,両者の特性差が各形質毎に設定される階級値の範囲内に概ねとどまっているということができるから,両者は,「特性により明確に区別されない」と認めることは可能であるというべきである。したがって,何らかの形でK1株とK2株の同一性を立証することができるならば,K1株(本件登録品種)とG株も「特性により明確に区別されない」と認める余地が生じることになる。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
 4 控訴人のその余の主張について
 (1) ・・・・・
 しかしながら,品種登録簿の特性表に記載された品種の特性は,登録品種の主要な特徴を相当程度表しているものの,育成者権の範囲を直接的に定めるものということはできないのは前記のとおりであるところ,本件においては,K1株に基づくなめこと,K2株に基づくなめことを,現物主義の立場から十分に比較することができない事情が存することは既に説示したとおり(前記2(2)ア)である。
 ・・・・・・・・。
 さらに,本件特性表に記載された本件登録品種の特性と,本件鑑定書に記載のK2株の栽培特性のデータとを念のため比較しても,両者は,菌糸の生長に関する温度特性のうち,生長最適温度に相違があるほか,5℃,10℃,15℃及び30℃における生長速度において,それぞれ階級値を超える相違があり,最適温度における子実体発生までの期間については,本件試験においてはこれに相当する項目の測定結果はなく,比較を行うことができない。これらの点を併せ考えると,控訴人の指摘する,成熟期の菌傘の直径と菌柄の長さの比率や菌傘の肉質等のみから,両者が,その特性において明確に区別することができないと認めることはできない
・・・・・・・・
 (2) なお,控訴人の主張には,G株が本件登録品種の従属品種に当たる旨の部分もある
 この点,従属品種とは,「登録品種の主たる特性を保持しつつ特性の一部を変化させて育成され,かつ,特性により当該登録品種と明確に区別できる品種」(法20条2項1号),すなわち,親となる登録品種に主として由来し,そのわずかな特性を変更して育成された品種をいう。しかるに,本件では,G株が本件登録品種に主として由来することを裏付けるに足りる証拠はないから,これが本件登録品種の従属品種に当たると認めることはできず,この点に関する控訴人の上記主張は,採用することができない
 ・・・・・。』


→(コメント)

 ここで登場する株を整理すると下記の通りです。

K1株: 品種登録時に、種苗管理センターに寄託され、維持されてきた株。
     少なくとも寄託された時点(品種登録時)において、登録原簿に記載された特性を維持していたと考えられるが、現時点では、鑑定の結果、当時の特性を維持していることは確認できなかった。


K2株: 控訴人(原告、育成者権者)が維持し、保持している株であって、控訴人が本件登録品種の現物であると主張する株
  (ただし、登録品種であることの立証はできていない)


G株: イ号品種の株、すなわち、被控訴人らが販売等していた株


・栽培試験では、K2株とG株との比較では、外観上、特性上の相違は認められなかった。

・登録されたK1株とK2株は、同一菌株であるはずだが、本試験結果では大きく栽培特性が異なる結果となった。

・登録簿の特性表の特性と、K2株の鑑定の際に得られた特性データとの比較に関しては、相違もあり、足りない測定項目もあり、比較ができない。

 これらの状況をまとめると下記の図のとおり。

H270624hanketumoshikizu


(本ブログ管理人作成)


・なお控訴人(育成者権者)は、G株が、本件登録品種自体についての効力範囲、すなわち、本件登録品種と「特性により明確に区別されない」ものという、上記までの主張に加えて、G株が従属品種である(種苗法20条第2項1号)との主張もしている。この主張
については、従属品種であることを裏付けるに足る証拠がない、として退けられている。

  従属品種であるとする予備的な主張をしている点は興味深いところです。また裁判所が、従属品種であるか否かの一応の判断を示した例としても、詳しく検討してみたいところです。

  ただし、従属品種であるためには、

  (i) 親となる「登録品種の主たる特性を保持」していること、
  (ii) 親となる登録品種に主として由来しているものであって、そのわずかな特性を変更して育成された品種であること、
の2つの要件が必要になるといえます(今回、裁判所も示しているところです)。
つまり、特性の有無という客観的な事実に加えて、親である登録品種に由来したものであるかという事実関係の問題の立証(つまり上記(ii)の点の前半の立証)も必要になるため、従属品種であることの立証には、別の難しい問題が出てきそうです。



【感想】

・本事案では、準公的機関である種苗管理センターに寄託されたK1株が、変異を起こしてしまっていた点で、控訴人(育成者権者)にとって不幸であった。

・仮に、寄託された株が、大きな変異を起こさず維持されていたならば、大分、展開はかわっていたかもしれない。

・その意味で、登録された際に、種苗管理センターに寄託しておくことは、重要であろうし、また寄託されている株の状態を定期的に確認するなどのケアは必要であろう。

・また、本事案では、裁判所は、K2株とG株については、「特性により明確に区別されない」と認めることは可能としてくれていることから、K2株について、登録簿の特性表と同様の試験項目・条件で再試験を行い、その結果(特性)が特性表の特性と「区別できない」とされたならば、K2株からの侵害立証もできていたかもしれない。

・再試験や、試験を伴う鑑定を、裁判に際して行う際には、登録時の特性表の測定条件などきちんと把握しておくことが重要であろう。


・今回の事案から言えることとしては、
 育成者権者としては、
   (1) 侵害事案の生ずる可能性を考慮して、(準)公的機関に、登録品種の種菌や種子、株などを寄託しておくべき。また、
寄託したものについて、定期的に状態を確認すべき。
   (2) 手元で維持している株について、侵害の摘発を行う上では、それだけ維持してたのでは、不十分であることを認識しておくべき。

   (3) 登録簿に記載の特性と、手元に維持している株とが特性において違いが出てきていないか、という視点をもっておくべき。

     などなど でしょうか。

――――――――――
(参考)

* 以前の本ブログ記事:
http://blog.patent-pvp.com/pvp/2015/02/index.html#entry-81844306

* 原審:[平成26年11月28日判決(東京地裁 平成21年(ワ)第47799号、平成25年(ワ)第21905号 -育成者権侵害差止等請求事件)] ~ 「なめこ」事件

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/686/084686_hanrei.pdf

     以上 

2015年2月25日 (水)

栽培地検査と輸出検疫

(植物の)輸出検疫では、相手国の検疫当局の検疫条件(植物種、国により様々)にしたがって、日本の植物防疫所において検査を行ってもらう検疫の方式をいいます。

おおよその手続の概略は下記のようになります。

相手国の条件で、栽培段階での検疫(害虫、病気などの検査)が必要となる場合には、輸出しようとする作物などの栽培段階から、植物防疫所に申請をして、栽培地に検査官に来てもらって検査を受ける必要があります。例えば、秋に収穫する作物を例にとると、初夏や真夏の時期などに栽培地で検査を受け、さらに、検疫証明書の発給の際に、収穫物を植物防疫所に持ち込んで検査を受けることになります。(下記の図の左の写真は、実際に栽培試験で検査官に検査をしてもらっている様子です(なお写真は、あまり特定できないように拡大し少し加工しています)。

品種登録出願の外国出願をする場合には、このような手続が必要となる場合があります。

なお出願を希望する場合は、出願手続や外国の制度はもちろん、この辺りの検疫などのことも良く知っていることが望ましいでしょう。


Kennekikensayusyutukenneki_3

   (図の出典:植物防疫所HP、 写真は実際に管理人が立ち会った検査の様子)

<参考>

・植物防疫法
 http://www.pps.go.jp/law_active/Notification/basis/2/5/html/5.html

 (輸出植物の検査)

 第十条

 輸入国がその輸入につき輸出国の検査証明を必要としている植物及びその容器包装を輸出しようとする者は、当該植物及び容器包装につき、植物防疫官から、それが当該輸入国の要求に適合していることについての検査を受け、これに合格した後でなければ、これを輸出してはならない。

2 前項の検査は、植物防疫所で行う。但し、植物防疫官が必要と認めるときは、当該植物の所在地において行うことができる。

3 輸入国がその輸入につき栽培地における検査を要求している植物その他農林水産省令で定める植物については、あらかじめその栽培地で植物防疫官の検査を受け、その検査に合格した後でなければ、第一項の検査を受けることができない。

4 植物防疫官は、輸入国の要求に応ずるため、必要があると認めるときは、第一項の検査を受けた物についてさらに検査をすることができる。



・衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)
 http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/
 WTO加盟国は、植物検疫措置を必要な限度において科学的原則に基づいてとり、恣意的又は不当な差別をしないことなどを規定


・国際植物防疫条約(IPPC)
 http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/ippc.html
 植物に関する病害虫コントロール、国際的なまん延防止に関する国際的な協力を主たる目的とする多国間条約


・植物検疫措置に関する国際基準(ISPM)
 http://www.maff.go.jp/pps/j/law/ispm/ispm.html
 SPS協定において、IPPC事務局が作成する具体的な植物検疫措置などに関する国際基準

以上

2015年2月24日 (火)

輸出植物検疫~外国品種登録出願の審査(栽培)用種子の送付のため

外国での品種登録出願をすると、日本における出願の審査と同様に、現地で栽培試験を行う必要がでてきます。出願をした国(外国)で、実際に栽培試験を実施してもらうためには、出願人が保持している出願品種の種子を所定量(さらに対照品種の種子送付が必要な場合が多い)、現地の栽培試験を実施する当局に送付する必要があります。

植物の種類によっては、種子ではなく、苗や球根等を送る必要がでてくる場合もあります。

ここで、一番問題となるのは、「検疫」に関する手続です。このような場合、種子を相手の外国に送るため、種子の輸出ということになり、検疫も「輸出検疫」の手続を経る必要があります。

輸出検疫」は、簡単にいうと、相手国が求めている検疫条件で、日本の検疫当局(植物防疫所)で検査を予め受け、問題なければ、植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)を発給してもらい、これを、送付する種子の梱包物に、他の書類(通関書類など)とともに添付して送ることになります。

検査は、植物防疫所に申請書共に持ち込んで、そこで専門官による検査をうけることになります。当日終わることもあれば、数日かかることもあります。さらに、相手国の検疫条件によっては、栽培段階で検査を受ける必要がある場合があり(栽培試験)、検疫だけで、一年がかりの作業となることもあります。

先日、クライアントの要望もあり、輸出検疫の手続に立ち会ってきました。今回は、上記にあるように、相手国の条件から栽培試験(圃場での検査)もあり、植物検疫証明書をほぼ一年がかりで取得することになりました。訪問したのは、横浜植物防疫所の東京支所(お台場)です。

2015_tokyopps1b_2
 (お台場の合同庁舎の入り口)

2015tokyopps
 (植物防疫所の入り口)

2015_tokyopps2_2
 (合同庁舎からみたお台場の風景)

Phytosanitary_certificate_parts_sam
 (植物検疫証明書(一部)はこんな感じです)

以上

2015年2月20日 (金)

【品種登録】 種苗法(育成者権関連)の判例のリスト

 前回の記事で、種苗法(特に育成者権関連)の判例が、非常に少ないと書きましたが、裁判所のHP(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search7)で現在見ることが出来る、種苗法(商標法との関連のものを除く)の関連の判例をまとめてみました。

                                                                                                                                             
   

裁判所

判決言渡日

(事件番号)    

   

事件の概要

   
   

関係する登録品種

   
   

判決主文

   
   

ポイントなど

   
   

リンク

   
 

8 

 
 

東京地裁 
平成261128日判決
(平成21()47799等)

 
 

原告による「なめこ」の登録品種に係る育成者権に基づいて、被告によるなめこの製造販売等の差止、損害賠償請求を、原告が求めていた事案  

 
 

品種登録番号

  第9637号
登録年月日

  平成13年11月22日
農林水産植物の種類

  なめこ
登録品種の名称

 KX-N006号 

 
 

原告の請求をいずれも棄却する

 
 

現物主義と特性表主義

 ・権利濫用の抗弁

 ・後発的取消事由

 
 

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本ブログでの解説★

 
 

7 

 
 

東京地裁 
平成21227日判決
(平成20()23647

 
 

原告による「まいたけ」の品種登録に係る育成者権に基づいて、被告によるまいたけの購入、自家増殖等の行為の差止、損害賠償請求を、原告が求めた事案  

 
 

品種登録の番号

  第11229号
登録年月日

  平成15年3月17日
農林水産植物の種類

  まいたけ
登録品種の名称

  BO-101

 
 

原告の請求認容、

被告らは,「重要な形質欄」記載の形質について「重要な形質に係る特性欄」記載の特性を有するまいたけ種の種苗を生産し,調整し,譲渡の申出をし,譲渡し,又はこれらの行為をする目的をもって保管してはならない  

 
・自家増殖の特例(種苗法21条2項)の主体的要件  

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6 

 
 

東京地裁 
平成20829日判決
(平成18()19802

 
 

原告による「しいたけ」の品種登録に係る育成者権に基づいて、被告によるしいたけの製造販売等の差止、損害賠償請求を、原告が求めた事案  

 
 

(A) 品種登録番号

  第7219号
登録年月日

  平成11年4月15日
農林水産植物の種類

  しいたけ
登録品種の名称

  JMS5K-16
(B) 品種登録番号

  第7166号
登録品種の名称

 MM-2号(他、省略)

 
 

原告の請求認容、

被告は,種苗を生産し,調整し,譲渡の申出をし,譲渡し,又はこれらの行為をする目的をもって保管してはならない

 
・種苗法上の過失推定規定(35条)の適用  

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5 

 
 

知財高裁 
平成181225日判決
(平成17(行コ)10001

 
 

・3の事件の控訴審、


・予備的請求として、本件処分の取消請求を追加

 
 

品種登録の番号

  第11308号
登録年月日

  平成15年3月26日
農林水産植物の種類

  りんどう
登録品種の名称

  芸北の晩秋

 
 

控訴棄却

追加した予備的請求に係る訴えを却下

 
 

・現物主義、特性表の考え方

 ・種苗法3条1項1号にいう「公然知られた他の品種」の解釈  

 

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4 

 
 

知財高裁 
平成181221日判決
(平成18()10059

 
 

・原審(長野地裁 平成14年(ワ)第358号)の事件の控訴審、


・原審では、原告(控訴人)の品種登録に係る育成者権に基づいて、被告(被控訴人)によるきのこの製造販売等の差止、損害賠償請求を、原告が求めていたところ、請求は棄却されていた  

 
 

品種登録番号

  第10615号
登録年月日

  平成21年9月4日
農林水産植物の種類

  エリンギ
登録品種名称

  ホクト2号

(データベースでは現在、ホクトPLE-2号)

 
 

控訴棄却

 

 ・種苗法3条1項1号にいう「他の品種」、「公然知られた他の品種」の解釈
・未譲渡要件と区別性

権利濫用の抗弁

 

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3 

 
 

東京地裁 
平成1775日判決
(平成16(行ウ)278

 
 

被告による「りんどう」の品種登録「「芸北の晩秋」には重大かつ明白な瑕疵が存在すると主張して,りんどうの品種改良,生産,販売等を行っている原告らが,処分の無効確認を求めた事案  

 
 

品種登録の番号

  第11308号
登録年月日

  平成15年3月26日
農林水産植物の種類

  りんどう
登録品種の名称

  芸北の晩秋

 
 

原告らの請求を棄却

 

・無効確認における原告適格
・当然無効
・権利範囲と特性表
・出願段階の特性表との記載の齟齬は、3条1項の充足性に影響しない

 

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2 

 
 

東京高裁 
平成9227日判決
(平成8()873

 
 

1の事件の控訴審

 
 

品種登録番号

  第1789号
登録年月日

  昭和63年11月5日
農林水産植物の種類

  えのきたけ
登録品種の名称

  ホクトM-50

 
 

控訴棄却

 
 

 
 

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1 

 
 

長野地裁 
平成8125日判決
(平成3()185

 
 

「えのきたけ」の品種登録をうけている原告が、被告の種菌の生産等の行為は、種苗法(旧)の規定に批判するとして差止請求、損害賠償請求等を求めた事案  

 
 

品種登録番号

  第1789号
登録年月日

  昭和63年11月5日
農林水産植物の種類

  えのきたけ
登録品種の名称

  ホクトM-50

 
 

原告の請求を棄却

 (登録品種と被疑品種との同一性を認めず、侵害でない)

 
 

・区別性の判断では、農水省告示で定めた「種苗法の規定に基づく重要な形質」に列記された要素について比較検討されるべき、

 ・現物主義の考え方に基づき、同一性を判断している  
 

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 以上

2015年2月19日 (木)

【品種登録】 育成者権侵害に関する判例(東京地裁 平成26年11月28日判決)

 種苗法(特に育成者権侵害に関するもの)判決は、非常にめずらしく、久しぶりに出されたものです。今回の判決はいろいろ、これまでにない内容があり、非常に興味深いのでここで取り上げ、まとめておきたいと思います。


――――――
【平成26年11月28日判決(東京地裁 平成21年(ワ)第47799号、平成25年(ワ)第21905号 -育成者権侵害差止等請求事件)】 ~ 「なめこ」事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/686/084686_hanrei.pdf


【ポイント】

(1) 育成者権侵害の判断をする上での従来からの重大な論点である「現物主義」*1を採用する上での問題点が、明確になったという意味で、非常に興味深い判決である。

(2) 育成者権の権利範囲*2を理解する上でも実務的に非常に参考になる見解が示されている。

(3) 権利濫用の抗弁を認め*3、取消事由を有する品種登録に基づく権利行使を認めなかった。

(4) 後発的に取消事由が生じ*4、それに基づき権利濫用の抗弁を認めた。


*1 現物主義」とは、育成者権侵害の判断については、原則として、登録品種と侵害が疑われる品種が同一品種であるか否かを判断するには、常に植物自体を比較する必要があるという立場をいう(農林水産省がとっている立場(農水省説ともいう))。
 なお、これに対立する立場として、「特性表主義」(品種登録簿の特性表に記載された特性をもって、特許権における特許請求の範囲のごとく考える立場)がある。


*2 種苗法には、特許法70条のように権利範囲を解釈するにあたって参照される規定は存在しない。このため、育成者権の権利範囲を画するものについて、上記のような「現物主義」、「特性表主義」といった学説的考え方はあるが、見解が分かれており、確立されていない。
 なお、「育成者権の効力」について、種苗法20条1項では、
 『育成者権者は、品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種を業として利用する権利を専有する。』とされている。


*3 
いわゆる、特許法におけるキルビー特許の最高裁判決事件(最判H12.4.11判決)示されたものと同じ立場である。(キルビー事件当時の特許法と同様に)現状の「種苗法」には、特許法104条の3に相当する規定は未だに、設けられていない。

*4 判決文の記載によれば、「なめこ」の栽培は難しく、「脱二核化」現象が発生することがあり、これにより特性が変質して、当初の栽培特性を維持できなくなることが起こり易いようである(本事案では、維持されてきた種菌が、品種登録簿の特性表に記載された特性を維持できなくなっていたらしい)。


【事案の概要】

 「なめこ」の登録品種(下記)について育成者権を有する原告が、被告組合A及び被告会社B(以下両者を併せて単に「被告ら」という)は、原告の許諾の範囲を超えて又は原告の許諾なく、本件登録品種又はこれと重要な形質に係る特性により明確に区別されない「なめこ」の種苗の生産等をすることにより、本件育成者権を侵害してきたものであり、今後もそのおそれがある旨主張して、種苗の生産等の差止め、種苗の廃棄、信用回復の措置としての謝罪広告、並びに不法行為(育成者権の侵害)に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案。

   品種登録の番号    第9637号
   登録年月日      平成13年11月22日
   出願年月日      平成9年12月24日
   農林水産植物の種類  なめこ
   登録品種の名称    KX-N006号 (出願時の名称は「東北N006号」)
   品種登録データベースのリンク: http://www.hinsyu.maff.go.jp/vips/CMM/apCMM110.aspx?MOSS=1
      (このページで、登録番号の欄に、上記番号を入れ検索すると、登録情報を見ることができます)。


Nameko9637

 (写真出典: 品種登録データベースより)


Tourokuhinshu_database_registration

 (登録品種の植物体の特性の概要等/出典: 品種登録データベースより)



【判旨】

<主文>

 原告の請求をいずれも棄却する。

<裁判所の判断>
1. 争点1(本件育成者権侵害の有無)について
(1) 育成者権侵害の有無に関する判断基準について

『・・・・。
 ところで,種苗法においては,育成者権の及ぶ範囲について,「品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種」を「業として利用する権利を専有する。」と定める(同法20条1項本文)のみで,育成者権の権利範囲の解釈について特許法70条のような規定は置かれていない

 しかし,・・・・,これらの種苗法に掲げられた諸規定を総合して解釈すれば,新たな品種として登録を認められた植物体とは,特性(重要な形質に係る特性)において,他の品種と明確に区別され,特性(重要な形質に係る特性)において均一であり,特性(重要な形質に係る特性)において変化しないことという要件を満たした植物体であって,その特性(重要な形質に係る特性)は品種登録簿により公示されることになっているのであるから,品種登録簿の特性表に掲げられた重要な形質に係る特性は,当該植物体において他の品種との異同を識別するための指標であり,これらの点において他の品種と明確に区別され,安定性を有するものでなければならないものというべきである

 そして,上記の点は,・・・現物主義(・・。)の下でも,妥当するといわなければならない。すなわち,育成者権の侵害を認めるためには,少なくとも,登録品種と侵害が疑われる品種の現物を比較した結果に基づいて,後者が,前者と,前者の特性(特性表記載の重要な形質に係る特性)により明確に区別されない品種と認められることが必要であるというべきである(なお,「明確に区別される」かどうかについては,特性表に記載された数値又は区分において,その一部でも異なれば直ちに肯定されるものではなく,相違している項目,相違の程度,植物体の種類,性質等をも勘案し,総合して判断すべきである。仮に,品種登録簿の特性表に記載された特性をもって,特許権における特許請求の範囲のごとく考える立場〔以下「特性表主義」という。〕によるとすれば,侵害が疑われる品種について,(登録品種の現物ではなく)登録品種の品種登録簿の特性表記載の特性と比較して,登録品種と明確に区別されない品種と認められるか否かを検討すれば足りることになるが,その場合においても,「明確に区別される」かどうかを総合的に判断すべきことは同様である。)。』
  (判決文中、・・は管理人による省略を意味する)

 →(コメント)
 すなわち、育成者権の侵害を認めるためには,少なくとも,登録品種と侵害が疑われる品種の現物を比較した結果に基づいて、登録品種と、侵害が疑われる品種が、登録品種の「品種登録簿の特性表に掲げられた重要な形質に係る特性」により、明確に区別されない品種と認められることが必要であるとした。
 つまり、
育成者権侵害の判断に際しては、「現物主義」か、「特性表主義」かのいずれか一方の立場をとるのではなく、現物主義による現物の比較の必要性を認めつつも、そこで比較する際には、「品種登録簿の特性表に掲げられた重要な形質に係る特性」に立脚した観点で判断するべきと考えているようである。言い換えると、権利範囲の予見性や公示性の観点からの「特性表主義」と、保護対象が品種という変動しやすい生き物であることに配慮した「現物主義」とを上手く組み合わせて、判断すべきとの考えのようである。

 → 管理人の個人的な感想としては、「現物主義」の利点と問題点、「特性表主義」の利点と問題点を考慮して、双方の良いところを組み合わせて侵害判定をすべきという理念のようなものは理解できるが、結局のところ、それらを上手く折り合いをつけるのが実務的、現実的には難しいのであって、そこのところの肝心の具体的手法についてまでは、まだ明確にはなっていないので、少々、物足りなく感じます。

 
 

(2) 鑑定嘱託の結果について

『・・・・・。
 鑑定嘱託の結果に基づいて,G株(被告会社の販売に係る被告製品から抽出した種菌の栽培株)に係る品種がK1株(本件登録品種の種菌として種苗センターに寄託されたものの栽培株)に係る品種と「特性により明確に区別されない」と認めることはできないし,G株に係る品種がK2株(原告が本件登録品種の種菌として保有していたと主張するものの栽培株)に係る品種と「特性により明確に区別されない」と認めることもできない。
なお,鑑定嘱託の結果に基づいて,K2株に係る品種が本件登録品種であると認めることができないことは,いうまでもない。
 ・・・・。
 このように,本件鑑定書に記載されたG株の特性と,本件登録品種の特性表記載の特性には,異なっているように見受けられる項目が複数存在していることから,仮に特性表主義の立場に立った場合であっても,G株の特性が本件登録品種の特性表記載の特性と「特性により明確に区別されない」ことが立証されているとはいえない
 ・・・・。
 以上によれば,被告らが本件登録品種又はこれと重要な形質に係る特性により明確に区別されないなめこの種苗の生産等を行ったとか,その収穫物を販売したと認めることは,困難であるというべきであり,ほかに被告らが本件育成者権を侵害する行為をした,あるいは,していると認めるに足りる証拠はない。』

  → (コメント)
原告は、育成者権侵害の立証のために、
  K1株(本件登録品種の種菌として種苗センターに寄託されていたもの)、
  K2株(原告保有のものであって、原告が本件登録品種の種菌と主張するもの)、
  G株(イ号製品、すなわち、被告の製品から抽出したもの)
との比較栽培による鑑定を、第三者機関に依頼して行っている。

 結果は、原告の望んだ形でなく、不明確で侵害を立証するには足らないものであった。

 ここに「現物主義」の立場をとるときに一番の問題点が現れているように思われる。
 すなわち、侵害判定するいために、イ号製品と登録品種とを実際に比較栽培する場合、品種登録簿の特性表の特性をもつ本件登録品種の種苗(特性表主義でいうところの想定される権利範囲(特性)をもつもの)と、原告が試験用に提出した「登録品種の現物」と主張する種苗との関係がきちんと立証できるのか、また、実際、そもそも原告は、品種登録簿の特性表の特性を有する現実の品種(種苗)を、侵害の判断の段階で用意できるのか、ということである。


 
 本事案では、原告は、出願審査の際の栽培試験も担当している「種苗管理センター」に寄託してあったK1株と、自分自身が保持する登録品種の主張と考えるもの(K2株)とを提供して試験を行っており、その意味では、原告は最大限の努力をしているように思える(実際、育成者権侵害の原告サイドに立った場合の立証法としては参考になる)。
 しかし、結果的には、K1株と、登録原簿の特性表との関係を立証はできておらず、またそもそも両株とも、「特性」を保持していないとの事実上の結果になってしまっている。

 育成者権侵害の立証の難しい部分(一部だが)について、鮮明となったとも言えると思う。

 


2. 争点2(本件各請求は信義則違反又は権利濫用として許されないか)について
 『・・・・・・。
 種苗法において特許法104条の3が準用されていないのは,特許法のように独自の無効審判制度を設けていないことによるものと考えられ,種苗法においても,品種登録が上記・・・の規定に違反してされたものであり,農林水産大臣により取り消されるべきものであることが明らかな場合(・・・・)にまで,そのような品種登録による育成者権に基づく差止め又は損害賠償等の請求が許されるとすることが相当でないことは,特許法等の場合と実質的に異なるところはないというべきである。・・・・。したがって,品種登録が取り消される前であっても,当該品種登録が上記・・・の規定に違反してされたものであって,取り消されるべきものであることが明らかな場合には,その育成者権に基づく差止め又は損害賠償等の権利行使は,権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である(最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決・・・)。

 ところで,品種登録がされた後において,登録品種が種苗法3条1項2号又は3号に掲げる要件を備えなくなったことが判明したときも,品種登録の取消しの効果自体は遡及しない(同法49条4項柱書本文)ものの,農林水産大臣が品種登録を取り消さなければならず(同条1項2号),その点に裁量の余地はないことは,同様であると解される。そうすると,このような後発的取消事由が発生したことが明らかな品種登録について,その事由の発生後,未だ農林水産大臣によって品種登録が取り消されていないという一事をもって,その育成者権に基づいて,当該品種の利用行為を差し止め,又は損害賠償等を請求することを容認することは,実質的に見て,育成者権者に不当な利益を与え,当該品種を利用する者に不当な不利益を与えるものであって,衡平の理念に反するとともに,訴訟経済にも反するというべきである。したがって,品種登録が取り消される前であっても,当該登録品種が同法3条1項2号又は3号に掲げる要件を備えなくなったことが明らかな場合には,そのことが明らかとなった後は,その育成者権に基づく差止め又は損害賠償請求等の権利行使は,権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 したがって,原告が,取消事由が存在することが明らかな本件品種登録に係る本件育成者権に基づき,被告らに対し,差止請求及び廃棄請求をすることは,権利濫用に当たり,許されないというべきである。また,原告の被告らに対する損害賠償請求のうち,取消事由が発生したことが明らかとなった時点以降の被告らの行為を理由とする部分についても,権利濫用に当たり,許されないというべきである。
 ・・・・。』

  →(コメント)
  後発的取消事由に基づく場合であっても、権利濫用の抗弁を認めている。
  ここで、育成者権の別の問題点の一つが現れてきている。すなわち、長い存続期間の間、登録品種として実際に維持をつづけてきたものが、ずっと、登録時における特性を本当に維持しつづけることができるのか、変質して特性が変わる場合もあるのでは、という点である。
 本事案では、登録時の特性を保持した、本来の登録品種は既に存在しなくなってしまっている。(結局これは、後発的取消事由に結びつくに至っている)。

以上

2014年10月15日 (水)

【品種登録】 品種登録制度

品種登録制度とは、新しい植物の品種を新たに育成した場合、一定の登録要件を満たすものについて、種苗法上の登録品種として登録を認め、育成をした者(または出願者)にその品種について独占排他的な権利を認める制度です。

新品種の育成には、専門的な知識や技術に加え、長期にわたる労力と多額の費用がかかっている一方で、一旦育成された品種については、第三者が容易に増殖等してしまえることが多いことから、新品種を育成した者の権利を適切に保護するために設けられた制度であると言えます。

法律的には、種苗法、種苗法施行令、種苗法施行規則などに具体的且つ詳細にその制度と内容が、記載されています。

(種苗法)
http://www.hinsyu.maff.go.jp/act/houritu/00-syubyouhou20090624.pdf

新品種の種苗法における登録(品種登録)が認められると、その品種ついての育成者権が発生します。この育成者権が存続できる期間は、登録から25年(永年牲植物の品種の場合は30年)となります。

制度の概要を示すと下記の通りです。

Seidozenpan_2

  [出典:農水省資料]

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品種登録出願の出願、登録件数の推移は次のようになっています(2014年4月統計)。


Shutugantoukei

[出典:農水省の品種登録制度に関するパンフレット]

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出願されている植物の種類の最近の統計は次の通りです。

Syokubutubetutoukei_3




以上

2014年10月 7日 (火)

【品種登録】 商標の追い越し問題

 商標登録の審査期間は、通常、品種登録の審査期間よりも短いため、品種登録がされる前に、後から出願した商標登録出願が先に登録されてしまうといった事態が起こり得ます。

 * 品種登録の審査期間は、栽培試験等の関係から約2.4年と長期間であるのに対し、商標出願の審査期間は約5ヶ月程度です。

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これが、品種登録出願における「商標の追い越し問題」です。

このような事態が起こった場合、品種登録出願の審査において、出願者が名称変更を余儀なくされるということになってしまいます。

(農水省の資料(下記出典と同じ)によれば、品種登録出願後の商標登録により、名称変更命令を受けた事例数は、H22(6件)、H23(0件)、H24(2件)だそうです)。

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つまり、ある品種名称で品種登録出願をした人とは別の第三者が、品種登録出願の公表情報に基づいて後から同じ名称について商標登録出願を行った場合、この第三者の方が(先に)商標登録を受けてしまう一方で、品種名称を本来、先に品種登録出願として出願していた人が、品種登録出願の審査手続きで、名称変更命令により名称変更を余儀なくされてしまうといった事態が生ずるということが起こりうるのです。

因みに、品種登録出願における名称変更の際には、商標の場合のような要旨変更不可的な概念はそもそも存在しません。このため、品種の名称を、出願時とは全く別の名称に変更することが可能ですので、名称変更命令を受け取っても、別の品種名称に変更すれば、品種登録は受けられます。


名称にこだわらなければ、新品種の保護自体を確保できる可能性は十分あります。

「商標の追い越し問題」の具体例を図に示すと次のようになります。

Shohyo_oikoshimondai

[出典:農林水産省資料「品種登録制度に関するその他の重要な論点について」
http://www.maff.go.jp/j/study/shokbutu_hogo/02/)]

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このような事態を回避するため、品種登録の出願者が、品種登録出願と同時に、出願品種の名称と同一の名称で商標登録出願し、商標登録を受けた上で、品種登録を受ける直前に、商標権を放棄するというような方策をとることが考えられます。

また、ある品種について、登録品種の名称とは異なる名称についても商標を取得し、育成者権の活用とともに、商標によって登録品種のブランド化(差別化)を図るという方策もありえます。

(例えば、品種名称「福岡S6号」で品種登録されたイチゴ品種は、商標登録された「あまおう」をブランド化して、全国展開に成功しています)。

いずれにしても、商標法と種苗法とが交錯する状況で起こりうる問題であり、これらの法律には、この商標追い越し問題について調整を図る規定などは設けられていません。

以上

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